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税理士 工藤あゆみ「家賃収入と税金 パワーアップ講座」

最終回 所得分散効果を狙おう!

公開日 2010/3/12

1人で物件投資数を増やしてゆくと、気が付けば所得税の適用税率があがってしまうので、所得分散を考える方が多いと思います。そこでコラムの最終回は、『所得分散効果を狙おう!』です。

所得分散の方法

@ 夫婦(兄弟・親子)共有持分とする。
A 法人を絡ませて所得分散する。
このいずれかだと思います。

@ は単純に、取得時に登記を共有持分にする、ということです。
A の絡ませ方は、何パターンかありますね。
・管理会社として利用
・法人が投資物件を購入
・法人が個人所有の投資土地の上に貸家を建てて賃貸する
ポピュラーなものは、この3つです。

各手法の特徴・注意点

【@ の場合】
過去のコラムでもお話しましたが、融資で投資物件を購入する際に、融資負担割合と登記持分が異なる場合は注意が必要です。例えば、AB夫妻が、融資額5,000万円(Aが全額の債務者)であるのに、登記持分は夫婦共有にしているケースがよくあります。この場合、Bに預貯金等の資金力・給与収入等の収入源があるのならば、特に問題は生じません。Bに資金力等が無い状態であれば、その投資物件の取得は、AからBへの贈与とみなされる可能性もあるので、気を付けて下さい。

ただし、これは『融資=登記 は名義を合わせなさい』というわけではありません。事情により債務負担者以外の者が所有者となった場合には、贈与とみなされないように、取引を調えれば良いのです。
その調え方ですが、金銭消費貸借契約を締結し、適宜取得資金を弁済してゆけば良いのです。

とは言いましても、親族間であれば仰々しく契約書を作成する必要はありません(印紙代ももったいないですしね)。上記例で言えば、Bは、Aから取得資金を借りたと考えますので、月々得られる賃貸料をAに少しずつ返済してゆくとこになります(※1)。そのように取引を調えれば大丈夫です。

【A の場合】
(管理会社として利用)

これは、節税効果はそれほど高くありませんが、取得のための法人融資が付かない場合は、個人所有物件の管理会社として利用し、所得分散効果を狙うのも良いかもしれません。

(法人が投資物件を購入)
法人の賃貸料収入から、利益圧縮するために代表者等へ給与を支払うなど、幅のある節税対策を行なえます。

(法人が個人所有の投資土地の上に貸家を建てて賃貸する)
コラム6回の法人化マニュアルで示した例が正にこれに該当します。当初は個人所有であった物件のうち、建物のみ法人へ譲渡する。譲渡後は、法人が個人へ地代(低額設定できるように調える(※2))を支払い、法人が貸家の賃貸料を収受する(その後、様々な経費計上をおこない法人利益を圧縮する)。

現実の所得分散の問題点

@ の場合には、夫婦(親族)共有持分で投資を増やし続けてゆくと、各人の所得税の確定申告が徐々に複雑化してゆく欠点があります。管理・手続的には、法人に物件を所有させ、賃貸料であがった法人利益から親族へ給与を支給するのが一番簡素かと思います。

(法人で所有する場合は、『土地負債利子の損益通算不適用が無い』(※3)という利点もあります)
土地負債利子の損益通算の不適用は、結構悩ましい規定ですよね。毎年、投資初年度の方が、被害(?)を受けている制度です。法人で所有したら、青色欠損金として繰り越せるのに、個人ではダメというのは、何か不合理を感じる制度だと思います。

相続対策後の相続対策

両親が所有する投資物件を子供が承継した場合に、分散承継はできたものの、その後永年にわたり共有持分のまま、保有し続けるのが良いのか、という疑問が生じるようです。
答えは簡単です。その承継物件を譲渡可能であるならば、法人(親族経営法人)へ譲渡し、その後法人利益圧縮するために、物件承継者のお子さんなどに給与を支給するというのが、現実的かと思います。
そうすれば、法人株価の圧縮ができ、かつ、資金面は物件承継者の子に引き継がれますので、再承継相続を回避することができます。
これはあくまでも一例ですが、節税効果は高いと思います。

経営計画と所得分散

所得分散効果は大事ですが税金面のみの話で考えるのではなく、まずは『投資計画』ありきかと思います。最終的には、投資規模をどのように上げてゆき、誰に承継させたいのか等、ある程度思い描いた上での節税案を模索してゆくことが大事になると思います。

9回にわたり執筆させていただき、反響が非常に大きかったテーマは想像どおりでした。ちなみに反響が大きかったテーマは、取得時の注意点(コラム2回)・法人化(コラム6回)・消費税還付(コラム7回)の3つでした。普段疑問に思っていること、興味のある部分は、皆さん概ね同じなのですね。
今後も、将来の投資目標を目指して優良経営を進めていって下さい。
コラムをご覧いただきありがとうございました。

(終)

用語解説

※1 返済の調え方
例えば融資全額を受けたのがAさんで取得物件の登記はA・Bの共有持分とした上記例のケースで説明します。
賃貸料をAさんの口座に全額入金されるようにしておけば、実態としてBがAに取得資金の返済をしていることになるかと思います。
(本来は持分ごとに賃貸料収入を得るので、Aは賃貸料収入の半分をBに渡し、Bはその受取賃料をベースにAへ取得時借入金を返済するという処理になります。ただし、ここまでの厳密処理をしている方はそんなにいません)。
この場合には、問題視されることもないのですが、特に何も考えずに融資と持分のずれが生じている物件が多い方は、一度総ざらいをしてみた方が良いと思います。

※2 低額設定できるように調える
借主:法人と貸主:個人の間で連名により『無償返還に関する届出書』を管轄税務署へ提出することにより、ほぼその物件の固定資産税ぐらいの金額で年間の土地賃借料を個人へ支払うだけで済みます。この手法は、非常にポピュラーで、所得税の所得分散効果が高いと言えます。

※3 法人の場合の土地負債利子に関する規定
法人税でもバブル期は、土地負債利子に係る不利規定は存在していました。
(『新規取得土地等に係る負債利子の損金不算入』という制度であり、融資で取得した土地の借入金利子を4年間経費に入れることを認めないものです。H10から廃止となっています)
前半  後半
工藤 あゆみ
工藤 あゆみ ■プロフィール
平成4年
KPMG国際業務部門にて外資金融機関の税務に携る。
IT関連企業における株式上場業務に、 関連会社の税務マネージャーとして参加。
平成11年
くどう会計事務所設立。
税理士業務の他に、税理士受験校の相続税講師、新聞のコラム執筆、税務セミナー講演などで活躍中。

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■お宝税理士「税務塾」
不動産投資の楽待 (特許第4562205号)

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