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不動産投資をする上で、エリアごとの「空室率」は戦略的に重要な指標となる。近年は「神奈川県のアパート空室率が35%を超え―」など、供給過剰のマーケットに警鐘を鳴らす報道が目立っているが、投資家からは「数字が実態とかけ離れているように感じる」という声も。一口に「空室率」といっても、発表元によってデータの算出方法は異なり、数字だけを鵜呑みにすると実際の動向を見誤る恐れもある。市場の実態を把握して投資戦略に生かすためには、どのようにデータを活用すればいいのか。「空室率」という数字が意味するものを探った。

融資過熱で増え続ける空室

「首都圏アパートの空室率35%超えの衝撃」「空室率が約4割の地区も」―。

相続税増税に伴う節税需要やマイナス金利による融資拡大などを背景に、賃貸住宅の建設増が続いている。国交省の調査によると、昨年の国内着工戸数は前年比10.5%増の41万9000戸で、5年連続の増加。供給過多で需給バランスが歪む中、空室率に関するショッキングな数字が見出しに躍るようになった。

このような報道で引用されることの多い指標が、不動産調査会社タス(東京・中央区)が発表している「空室率TVI(タス空室インデックス)」。首都圏や関西圏などの賃貸住宅について、アパート系(木造・軽量鉄骨造)、マンション系(鉄骨造、RC造、SRC造)に分けて数字を算出している。最新の今年1月期のデータでは、神奈川県のアパートは38.3ポイントで、東京23区と千葉県も34ポイントを超えている。2015年半ばごろまでは高くても31ポイント台で推移しており、ここ1、2年での上昇が激しいことが分かる。

空室率TVIは同社が独自に開発した指標。民間住宅情報会社に公開された情報を基に、「入居者を募集している戸数」を「入居者を募集している建物の戸数」で割って算出している。つまり、満室稼働の建物の戸数は含まれず、空室が発生している建物のみが計算の対象になる。そのため、「実際の賃貸住宅市場より高い数字になるのでは」と指摘されることがある。

一方、長期的な市場動向の分析に用いられるのが、5年ごとに総務省が実施している「住宅・土地統計調査」。無作為抽出の約350万住戸を対象とした統計で、公表データのうち「居住世帯のある借家」と「賃貸住宅の空き家」の数字から賃貸住宅の空室率を求めることができる。最新の2013年10月1日現在のデータによると、全国の借家総数2269万9800戸のうち429万1800戸が空き家で、空室率は18.9%。神奈川県は17.3%となっている。

このほかに、管理会社やサブリース会社も独自に空室率を公表しているが、多くは5~10%前後で、住宅・土地統計調査の数字より低い。この差は、空室率の算出に用いているデータの違いに起因している。