民泊やライドシェアといった「シェアリングエコノミー」の市場が急拡大を見せる昨今。中でも、このところ熱い視線を浴びているのが「会議室」のシェアリングサービスだ。一般的な不動産投資に比べて初期費用が安く、民泊より管理の手間もかからないことから、参入する個人が急増している。テレワークの推進や副業解禁など「柔軟な働き方」が提唱される中で、「好きな時間に、好きな場所で」というニーズは高まりつつあり、新たな投資の一形態として注目される。

伸び続ける利用者数

社内や取引先で会議や打ち合わせをしたいのに、会議室に空きがない。そんなときに選ばれるのは、民間の貸会議室や喫茶店だった。しかし一般的に、大手事業者が運営する貸会議室の利用料はやや割高な場合が多い。喫茶店では参加者全員がゆったり座れる空席を探すのは大変だし、込み入った話であれば周囲の雑音も気になる。そういった問題に着目して急成長しているのが「貸会議室投資」だ。

株式会社スペイシーが運営する貸会議室のマッチングサイト「スペイシー」は2013年のサービス開始以来、提供する貸会議室数が2500室を超え、累計利用者数は60万人を突破した。アクセス良好な立地にある貸会議室を、利用人数を問わず1時間1000〜1500円程度で借りられると話題になり、ビジネスマンを中心に利用が伸びている。

登録されている貸会議室は区分店舗や区分オフィスが多いが、居住用のワンルームもある。個人が参入する場合は通常、会議室として利用できるワンルームを借り、オーナーに貸会議室としての許可を得ることが出発点。机や椅子、ホワイトボードなど会議に必要な備品などを設置することができれば、他に特別な要件はない。スペイシーのサイトに掲載した部屋を時間貸しし、賃料とスペイシーへの手数料を除いた額が収入になる。

オーナーとの交渉代行も

参入のハードルの一つが、不動産のオーナーから時間貸しの許可を得ること。賃貸物件を扱う不動産会社を通じてオーナーに連絡を取るのが通常の流れだが、当然断られる場合も多い。そこでスペイシーは今年4月から、オーナーとの交渉や運営などの代行サービス「だれでも会議室」を始めた。オーナーから貸会議室としての運営許可を得るところからスペイシーで担い、許可を得られた物件を運営希望者に流していく仕組みだ。

スペイシーによると、提供者の6割が貸会議室・レンタルスペースなど場所貸しを生業とする事業者。3割は企業やカラオケ店、飲食店などが空いた部屋・スペースを空いている時間のみ提供したり、現在空室または取り壊し決定の物件を期間限定で提供したりする形という。

残りがオーナーの許可を得て賃貸物件を時間貸ししている個人だ。オーナー自身が所有物件を貸し出すケースもあるが、会議室向きの立地に物件を購入して新規参入するのは初期投資などの面でハードルが高く、提供者の中では少数派。逆に言えば、すでに好立地の物件を所有しているオーナーであれば有力な選択肢になりうる。

4カ月で初期投資を回収

「以前はAirbnbのホストをしていましたが、より管理しやすい点に注目して貸会議室投資を始めました」

八重洲と新宿・歌舞伎町、五反田、高田馬場に計4室の貸会議室を展開するKIZUNA FACTORY社の稲垣紀人さんも、所有者から貸会議室としての運営許可を得た区分オフィスを借りて投資している。東京駅八重洲口から徒歩2分の好立地にある貸会議室は、20平米で最大24人収容可能。会議テーブル8台にイス24脚、ホワイトボード、マーカーペンと、貸会議室に十分な設備を備える。プロジェクターやWi-Fi環境などは必須ではないという。

八重洲の貸会議室

賃料は約14万円で、敷金・礼金と設備や什器など機材代約13万円を合わせた初期投資額は約80万円。終日オープンして月の売上は平均30万円前後で、多いときは40万円近くになることもあり、スペイシーに掲載される約2500室の中でもトップクラスを誇る。売上のうち25%がスペイシーの手数料、75%がオーナーに入る仕組みで、2016年12月の開設から4カ月目には初期投資額の回収に成功。賃料を除いた月の手残りを8万円とすると、単純計算で利回りは120%に上る。

八重洲は東京23区内でも貸会議室の激戦区とされている。だが駅に近いことに加え、ほとんど使われない早朝や深夜は1時間100円~、日中は1時間1000〜1500円と、大手貸会議室事業者と比べてリーズナブルな金額感で貸し出していることから人気が高く、安定した売上を維持している。

ビジネス以外での需要があることも売上に貢献しているようだ。「八重洲を選んだのは、会社数の多さというよりも、とにかく人が集まりやすい立地だから。休日の予約も多く入っています」と稲垣さん。「例えば神奈川や千葉など関東全域に住む人を集めてセミナーや勉強会を開こうとすると、やはり皆がアクセスしやすい東京駅周辺が開催場所になることが多いです」。セミナー以外でも結婚式や余興の打ち合わせに使われたり、地方から東京出張に来た人が数日、執務や会議のスペースとして借りることもあるという。

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