お笑い界のスターを目指しながら、爪に火を灯すような下積み時代を過ごす若手芸人は多い。不可思議な物語を持ち前の演技力と発想で笑いに変える、バッドナイス常田さんもそのひとりである。
現在27歳。高校卒業後すぐに芸の道で生きる決意をし、富山県から上京。家賃5万5000円、東高円寺のワンルームマンションで暮らすことにした。しかし、芸に打ち込むためアルバイトを減らした結果、食事もままならなくなった。4年前、そんな常田さんを見かねた先輩芸人が、紹介してくれたのが現在の住まいである。
京王線の某駅から徒歩10分ほどにある住宅を改装したアパート。1階は大家さんが住み、2階の6部屋が貸し出されている。常田さんの家賃は水道代込みで2万円と、都心では破格の安さ。他に3万円の部屋もあり、合計4人が住んでいるため、大家さんには10万円程度の家賃収入があると計算できる。年間にすれば約120万円。年金収入と合わせれば、老後の慎ましやかな生活には支障はないと言えそうだ。
お部屋の第一印象はバッド!?
常田さんの部屋はキッチン、収納付きの和室6.5畳。トイレは共同、風呂はなし。
共同の下駄箱は、郵便受けとしての役割も果たしている。
「入居前、はじめてこの部屋に訪れた時には愕然としたっすね。そこには上京する際に、こんな部屋には絶対に住みたくないと想像していた “貧乏芸人の自宅”そのものがあったんです。畳の上には軽く干からびたゴキブリの死骸が転がっていました。マジで最悪だとは思いましたが、飯を食べるためには背に腹は変えられない。泣く泣くここで暮らすことに決めたんすよ」
住めば都!? ボロ部屋のナイスな魅力
「引っ越した当初は惨めな気持ちにもなりましたが、慣れてしまえば住み心地は悪くないっすね。例えば、ちょうど腕が入るサイズの扉の穴。手を伸ばせば外からロックが解除できるので、鍵を持ち歩く必要がないんすよ(笑)」
そう言って常田さんは、部屋の扉に貼られたチラシをめくってみせてくれた。すると、そこには大きな穴が……。セキュリティ的には大丈夫なのか!? 金目の物はなさそうなので、空き巣に入る泥棒はいそうにないが、それでも心配になってしまう。
「泥棒どころか、今ではゴキブリ一匹出てきやしませんよ。部屋中にブラックキャップを仕掛けてますから(笑)周りは静かな住宅地なので、何からも邪魔されることなく健やかにくつろぐことができます。居心地が良すぎて集中できないことも多いので、ネタを考える時は近所の図書館に出かけてますね。スーパーやコンビニなどもすぐ側。やはり都会の生活は最高に便利っす!」
殺虫剤で泥棒が退治できるとは思えないが、とりあえずは快適な環境の様子。
「なにより家賃が激安なので、まともなメシが食えるようになったのが一番っすね。ここで暮らす前は、干からびた大地みたいな顔をしてましたが、今はその大地に水分が入ってきてフラミンゴが住みつきはじめたって感じっすね。生命の神秘を肌で感じてますわ!」
つまり土気色だった顔色に、ほんのりと赤みが差してきたようだ。
「窓を開ければ隣の家の立派な庭があり、この地球が緑であふれていることを実感させてくれるんですよ。窓が南向きのため日当たりも良好。太陽からのエネルギーにより、洗濯物がよく乾きます。ただし、夏場は気温が上がりすぎることもあり、引っ越した当初はかなり苦しめられました……。地球温暖化をストップさせるのが一番なのですが、そこはエアコンを買うことにしました」
ハングリー精神が鍛えられたからなのか、それとも健康面が改善されたからなのか、常田さんは期待の新人として注目を集めるようになり、少しずつ仕事も増えていったという。
最もナイスなのは、大家さんとの絆!
そんな常田さんの活動を影から支えているのが、この部屋の大家さん。入居当初から度々コーヒーをごちそうになっているほか、親密になった現在はご飯や洗濯、アイロンがけまでお世話になり、風呂場も頻繁に借りているそうだ。
「自分にとって大家さんは東京のマザーテレサ的な存在っすね。度々、部屋に訪れては、勉強のためにチェックしたいお笑い番組も録画させてもらっています。お返しに、といってはなんですが、大家さんの好きなEXILEの番組も、ついでに録画予約してるっす(笑)」
手持ちのお金がないときは家賃滞納の相談にのってもらうなど、大家さんには頭が上がらないという常田さん。申し訳無さそうな彼の言葉に「儲けなんて考えてないですよ」と、大家さんは笑いながら話していた。
「いつかお笑いで成功してお金に余裕ができたら、このアパートを買い取って、貧困に喘ぐ後輩たちの居場所として貸出せたら嬉しいっすね。今は貧乏ですが、いつか家賃の500倍ぐらいポンっと出して、一括で買い取れるような男になりたい! でも、考えてみれば大家さんにはそのままでいて欲しいので、一度買い取ったアパートを、そのまま大家さんにプレゼントしなくちゃ……。家賃の500倍というと1000万円。いざ現ナマを目の前にしたら、やっぱり、ちょっと難しいかもしんないっすね(笑)」
ブレイクすれば、一気に大金を手に入れることができる芸の道。それを元手に、不動産投資で安定した収入を得ている先輩芸人も多く、常田さんも憧れを感じているという。バッドだった部屋を、ナイスな環境に変えたポジティブさとハングリー精神があれば、そんな夢が現実になる日も、そう遠くないのかもしれない。
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