加藤さん最終_06162015

前回の賃料増額訴訟に続き、訴訟シリーズ第二弾として、今回は家賃に関して保証委託契約を締結していたにもかかわらず、家賃保証会社が入居者の滞納家賃の支払に応じないため、訴訟を提起した事例を共有したいと思います。

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家賃の保証委託契約ってどんな契約?

本題に入る前に、まずは家賃の保証委託契約の概要をご説明しようと思います。昔は住宅を借りるに当たっては、借主の家賃支払能力を補完するため、連帯保証人を立てることがごく一般的でしたが、近年は家賃保証会社と借主が保証委託契約を締結することにより、借主が滞納をした場合、保証会社が借主に代わって物件オーナーに家賃を支払う家賃保証形態が一般的になってきました。

これは、物件オーナーにとっては、負担ゼロで保証会社から家賃保証を受けられる一方で、借主にとっても連帯保証人を探す手間を、保証料(賃料の1カ月分程度が一般的)を保証会社に支払うことで回避できる非常に有用な仕組みです。

私も賃貸物件については、原則として連帯保証人を立てるのではなく、家賃保証会社と保証契約を締結することを借主に要請しています。

訴訟の対象物件の契約概要

東京都新宿区の物件

今回のお話の対象となる物件は、高田馬場駅から徒歩圏内にある1999年築の1LDK(50㎡)で、月額賃料14万5000円(共益費込)で募集していた物件です。

高田馬場駅近辺は早稲田大学を中心とした学生街であるため、1Kで8万円程度の物件に対する需要は強いのですが、対象物件のようなDinks向けのやや賃貸面積が大きく、賃料総額が嵩む物件は、客付けに苦労する傾向があります。

本件では募集開始が5月の閑散期となってしまったことや当初の賃料設定がやや高かったこともあり、空室期間が半年もの長期に及んでしまいました。

約半年間の空室後、ようやく申し込みが入った借主の職業は「ホスト」でした。風俗嬢やホストといった水商売系の申込者は、一概には言えないとは思いますが、とにかく物件の使い方が荒いので、他の物件では断ってきました。

しかし、既に半年空室となっており、高田馬場で月額14万5000円程度を払える入居者は、意外と少ない状況も痛感していたので、さすがに検討せざるを得ないと方針を変更しました。

申込書に記載されていたホストとしての年収は800万円と記載があります。まだ、24歳の若者にもかかわらずです。賃貸業者からのヒアリングでも、「案内時の態度は誠実で、婚約者と一緒での入居を希望しているので、それほど汚く放置されるリスクも相応に低いのでは?」とのことでしたので、入居者に家賃の保証委託契約を締結することを条件として、入居を許可しました。

保証会社については、借主が以前から使っている会社を使いたいとのことでしたので、保証会社の規模や信用力等については、特に調べることもなく、了承しました。

入居から滞納、そして訴訟へ

入居後、3カ月間程度は、問題なく賃料が入金されてきましたが、それ以降、徐々に入金の遅れが目立つようになり始めました。賃貸業者及び家賃保証会社に入金遅延をしないよう借主であるホストへ度々電話をしてもらうことにより、何とか遅れながらも滞納は1カ月間程度にとどまっていました。

しかし、入居後、1年を経過した辺りから滞納期間が2カ月に及ぶようになりました。理由を聞くと、ホストとして客が取りにくくなってきたため、収入が落ち込んできているとのことでした。

本件では保証委託契約を締結しており、家賃保証会社に家賃の代位弁済を求めることが可能ですので、請求していましたが、滞納期間が2カ月を超えた頃から、保証会社は家賃の代行支払いを渋るようになってきました。保証委託契約に基づき代位弁済を求めているにもかかわらずです。

この時にようやく保証会社の規模等をチェックしたところ、社員わずか数人の零細業者であることがわかりました。このままでは保証を受けられずに損失を被りかねないと思い、まずは根本的な原因である借主を追い出すこととしました

まず、借主追い出しにあたっては、滞納履歴及び退去勧告を度々送付することに加え、保証会社の協力を得て、保証会社の担当者に訪問督促を何度もしてもらった上で、最終的にはキーロックまでして、半ば強制的に退去させました。

ただ、退去させられたのはよかったのですが、滞納賃料及び原状回復費用の借主負担分について、借主の次の住所が不明であり、結局負担を求められない事態となってしまいました。滞納家賃と含めると50万円もの金額です。

保証委託契約書には、滞納家賃のほか、原状回復費用をも保証をする旨が明記してあったので、再度、代位弁済を求めましたが、全く取り合わないので、これを解決するためには保証会社を被告として、訴訟を提起せざるを得ませんでした。

訴訟までのステップ

まず、訴訟を行うには、裁判所へ訴状の提出が必要となります。今回は請求金額が約50万円であったため、少額訴訟(60万円以下の事案に提起可能)を行うこととしました。少額訴訟は、通常の訴訟と異なり、1回の期日で審理を終えて判決を得られることを原則としていることから、非常に迅速に解決できる可能性があるという点です。下記に実際に提出した訴状の一部を参考までに添付します。

訴状

請求の趣旨

 記載事項はシンプルであり、主な事項は下記の通りです。
・事件名(何に対する訴訟か)
・当事者の表示
・請求の趣旨
・紛争の争点
・証拠書類(本件では、賃貸借契約書・保証委託契約書・原状回復費用の見積書など)

以上を記載し、裁判所へ持ち込み、受理してもらえば、後日呼出し状が裁判所から送られてきます。そこで、呼出し状に記載されている日時に裁判所へ出向き、裁判官等を交えて主張を言い合うのみです。今回の事案では、保証委託契約書に明記されている保証会社が負担すべき費用負担について、請求を行っていたので、当方の主張が認められる形で判決が下されました。

全体的な期間でいうと、訴訟提起が2012年10月、口頭弁論が2012年12月、そして判決が2013年1月でしたので、わずか3カ月で判決がおりました。

訴訟というと、とっつきにくいイメージを持たれている方も多いかもしれませんが、わざわざ弁護士に頼まずとも自分でできますし、平日に裁判所に何回か出向く必要があるのは難点ですが、紛争解決の手段としては非常に有用です。かかった費用も5000円程度です。

この結果、35万円の費用を取り戻すことができました。50万円の請求でしたが、その内の一部、クロスの経年劣化についてはオーナー負担と見なされました。

結果、訴訟を起こさなければ戻ってこなかったはずの35万円を分割で受け取ることができましたので、同じ境遇になった方がいらっしゃいましたら、躊躇せずに訴訟を起こすことをオススメします。

ただ、保証会社が保証内容通り、代位弁済を行えばそもそも訴訟を提起する必要はなかったので、保証会社の選定にあたっては、保証会社の規模、信用力等を十分に事前確認を行うことをお薦めします。

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