事故物件最終_07092015

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自殺や死亡事故、孤独死などによって心理的瑕疵が発生し、賃借人への告知義務が生じる「事故物件」。実際に保有する物件がこうした状況になってしまったオーナーは、その後の運用にも売却にも非常に苦労することとなる。

心理的瑕疵によって売却価格も賃料も下げざるを得ない事故物件の特性を逆に活用し、投資を行うという戦略はありなのだろうか? そうした事例は実際にあるのか、匿名を条件に内情に詳しい不動産業者2社に話を聞いた。話を聞いた結果、2社の見解は見事に正反対だった。

「人は感情で動く生き物」 否定派のAさん

都内の不動産管理会社に勤めるAさんは、ここ3カ月で2件の事故物件に遭遇した。一つは入居者の自殺。もう一つは高齢入居者の孤独死だったという。

「亡くなられた方のご家族はもちろんですが、物件を保有するオーナーの落胆ぶりも見ていられませんでしたね。どちらも一棟所有のオーナーさんで、一つ目の例では該当の部屋が空室のままであることに加えて、隣の入居者の方も退去してしまいました」

Aさんに、事故物件で投資を検討した方の例があるかを聞いた。

「相談を受けたことは何度かありますよ。一般的に物件価格は2~3割下落しますので、買ってしまえば何とかなるのではないかと。そういった場合私は、断固おすすめしないようにしています」

前述の例の通り、事故物件は該当の部屋への入居募集が難しくなるのに加えて、周辺の部屋も空いてしまう可能性がある。また告知義務が過ぎた後でも、「大島てる」などの事故物件検索サイトに情報が残されていることもままある。長期的に見て、リスクばかりが目立ち投資価値は薄いというのがAさんの考えだ。

「心理的に敬遠したいという理由だけで販売価格が安くなっているのなら、賃貸物件として運用していける可能性はあるんじゃないか、という理屈は分かるんです。ただ、人間は感情で動く生き物ですからね。入居者を募集するにも既存の入居者をフォローするにも、通常の倍以上の配慮が必要になります。そこまでして手を付ける価値があるのかというと疑問ですね」

確かに、安く物件を購入した分だけ手間が増えるだけなのであれば、事故物件への投資に意義を見いだすのは難しいのかもしれない。

「『訳あり』にもいろいろある」 肯定派のBさん

Bさんが勤める都内の不動産仲介会社は、なんと「事故物件専門」。売却先に困っているオーナーから相談を受け、物件を仕入れている。自宅用に事故物件の購入を考えている人のほか、投資用として検討するために相談に訪れるオーナーも増えているという。

「『事故物件』という言葉もよく使われるようになり、検索サイトも出てきて、そうした格安物件の存在がある意味ではメジャーになってきているのだと思います。安く買えるというメリットをしっかり踏まえて、過去のことは気にしないという方が増えていますよ

自宅用での購入を考える人は、戸建てやファミリータイプのマンションを検討するケースが多いという。実際にBさんの会社では、2014年3月期から2015年3月期にかけて取り扱い物件数が約1.3倍、成約件数は約1.5倍に伸びたそうだ。

投資用として実際に購入し、運用しているケースもあるという。事例を紹介してもらった。

○都内の1Kアパート 区分所有 もともとの賃料6万8000円

「このアパートには高齢の女性が一人で暮らしていたのですが、心臓発作で倒れ亡くなってしまったのです。翌日に家族が訪れる約束をしていたことで、早期に発見されたことは不幸中の幸いでした」

その後、売りに出された価格は、もともとの価格から3割下げた770万円。購入したオーナーは、賃料を2割下げた5万4400円で入居者を募集し、購入から1カ月半後には申し込みが入ったという。

「病死であったこと、死亡の翌日に発見されたということから、購入後の室内リフォームにかかる費用が、基本的なクリーニングやクロス張り替えなどの通常の原状回復程度で収まったことが購入のポイントでした。事故物件の場合、室内の大幅なフルリフォームが必要になることもありますが、このケースではそうした必要はありませんでした」

Bさんは、「事故物件、訳あり物件にもいろいろなパターンがある」と話す。夏場に入居者が自殺し、発見が遅れてしまった物件などは再び賃貸できる状況にするまでに多額のコストが必要となるが、上記のような例も多いのだそうだ。

「事故物件への入居を希望する人は、単身者もファミリーも同じくらいの割合でいます。特にファミリーの場合は、数年先の戸建て住宅の購入を前提に、それまでの期間少しでも安いところに賃貸で入りたいという希望が増えています。過去に何があろうと、気にしない人は気にしないんですね。当社のような事故物件専門業者が成り立っているのも、あえて事故物件を探す人たちのニーズが絶えないからです」

物件の程度によっては、事故物件への投資には十分にメリットがあるという。心理的瑕疵の具体的な内容にも注目していけば、意外な価値を見い出せる物件が見つかるのかもしれない。