定期借家最終_07102015

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「定期借家契約」を結んだ経験はあるだろうか? その存在は知っていても、どのように活用できるものなのか、果たしてメリットのある活用法があるのかがわからず、これまでは特に考えることがなかったオーナーも多いかもしれない。

賃貸借契約の形態としてはごく少数派ではあるものの、この制度を利用して入居者募集を行っている物件も実際にある。どのような背景、シーンで活用されているのだろうか?

都内の不動産仲介会社に勤める渡辺聡さん(仮名)は、これまでに定期借家契約を活用して入居者募集の提案をしたことがあり、不人気で空室続きだった物件を満室にした実績もあるという。定期借家契約を行った成功体験、失敗体験をそれぞれ教えてもらった。

「出ていってもらうことが前提」の契約形態

一般的な普通借家契約と比べて、定期借家契約では「契約期間を大家側が自由に定めることができ、期間が満了したら退去してもらう」ことが原則だ。普通借家の場合は契約期間を2年間とすることが多いが、これは2年後の更新を前提としており、特段の理由がなければ大家側で更新を拒絶することができない。

「つまり、普通借家は“一度入居すると出ていってもらうことが難しい”契約形態と言えます。対して定期借家はそもそも入居期間が決まっているので、“出ていってもらうことが前提”ということです」(渡辺さん)

一見すると大家側の自由度が高い契約形態であるようにも思える。実際にどのようなシーンで利用されているのだろうか。

入居者を試す期間としても利用できる?

定期借家契約の中にも大きく分けると二つの形があります。たとえば契約期間を1年に定めると仮定して、一つは“1年後に必ず退去してもらう パターン”。もう一つは“1年後に更新できる可能性を残しておくパターン”です」

一定期間を経て必ず退去してもらうパターンでは、将来的に物件の取り壊しが決まっているケースなどが多いという。入居者にとっては、契約終了後は再度引越しをしなければならないため通常はデメリットになる。そのため、取り壊しまでの期間のロスをできるだけ軽減するため、「相場賃料の70パーセント程度で募集するケースが多い」という。

もう一つのパターンは、会社における試用期間のようなもの。あらかじめ入居期間を定めておき、賃料の支払いが滞ったり近隣とトラブルを起こしたりしないかを試したいという理由で使われることがあるという。1年の契約期間中にもし問題が発生していれば、大家は契約を更新せずに予定通り退去してもらうことができる。問題のない入居者であれば、契約を更新することも可能だ。

「ただし後者においては入居者側のデメリットばかりが膨らむため、募集手段としてはほとんど用いられません。賃料を下げるならば可能性がありますが、そこまでして入居者を見極める必要があるかというと微妙なところですよね」

確かに部屋探しをする際に「この部屋は1年しか住めません」と言われれば、即検討対象から外す人が多いだろう

「定期借家契約で募集する場合はその条件を明示しなければならないと決められているため、物件情報サイトでも一目瞭然です。サイトによっては“定期借家は除く”という検索メニューが用意されているところもあるので、物件情報を見つけてもらえる可能性はぐっと減ります」

成功例:ゴキブリに悩まされる部屋で定期借家を活用

こうした事情から、「特に必要性のない状況で定期借家契約にするのはおすすめできません」と話す渡辺さん。しかし過去には、あえてこの方式を大家に提案したこともある。

「その物件は1階にラーメン店が入居している、木造3階建て、2DKのファミリー向けアパートでした。1階で出るゴミの影響で、ゴキブリがやたらと出るんです。立地がさして良いわけでもありません。どうしても不人気物件となってしまい、8部屋のうち4部屋が空室という状況でした」

賃料は8万円。このままでは毎月32万円の損失が出てしまう。そこで渡辺さんが提案したのは、「1年間の定期借家契約にしてその間は賃料を半分にし、入居者にお試しで住んでもらう期間を作る」というプランだった。

仮に4部屋とも向こう6カ月空室のままであれば、192万円の賃料収入が飛んでしまう。賃料を半額の4万円にして早期に入居を決めることができれば、1年間の賃料収入でこの192万円をカバーできるのだ。

「エリアの2DKアパートの賃料相場は8万円~10万円といったところでした。立地が良くないとはいえ4万円というのは破格で、募集し始めて1週間で15件ほど問い合わせがありましたね。1カ月半で4部屋とも埋めることができました

入居者には「1年間賃料半額」の理由を正直に説明し、基本的には1年後に通常の賃料で更新したいと思っていることも伝えた。分かりやすく、丁寧な対応も成功のポイントだったようだ。実際に1年後は、4人の入居者とも通常の賃料での普通借家契約に応じてくれた

失敗例:閑散期対策で定期借家を導入してみたものの……

一方で渡辺さんには失敗体験もある。閑散期となる6月に入居者募集をするために考えたプランだった。物件は駅から15分ほど離れた1Kアパートで、賃料は6万5000円。2部屋の空室をできるだけ早く埋めたいという大家の希望だった。

提案したのは、最初の3カ月を定期借家契約とし、賃料を30パーセントオフの4万5500円にするという内容。4カ月目以降は普通借家契約を結び直し、通常の賃料にする。6月から7月の申し込みを対象にキャンペーン化し、早期契約を狙った

「このケースでは、問い合わせの反響はものすごく良かったんです。1週間で、年度末の繁忙期を超える数の問い合わせがありました。ただ、申し込みには至らず、結局そのままキャンペーン期間は終了してしまいました」

最初の賃料を見ると非常にお得に感じるのだが、「3カ月だけ30パーセントオフ」という条件が中途半端で、実際のメリットとしては薄いと判断されてしまったようだ。

「すべての提案が成功に結び付くわけではないのですが、大家と入居者双方にメリットがあれば、空室対策に有効だと思っています」と渡辺さんは結んだ。

メリットが見えづらい定期借家契約にも、さまざまな活用法がある。空室続きで頭を悩ませている方は、こうした事例も参考にしてみてはいかがだろうか。

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