法定耐用年数最終_07152015 (1)今回のコラムより「特集コラム」も担当させていただくことになりました、アパマンの匠こと「戸田 匠」と申します。新築と中古の賃貸物件を計2棟17戸、経営をしています。

本職は建築業で現場管理業務に携わっており、一級建築士という立場から日々建築施工に密着しております。そういった建築のプロとしての知識を生かし、コラムの読者の皆様に建築物にまつわる情報を、できるだけわかり易く提供していければと思います。どうぞよろしくお願い致します。

第1回目の今回は、「耐用年数」についてのお話です。

そもそも、耐用年数って何?

事業を行うにあたって、所有する資産には(法定)耐用年数というものが存在することはご存知かと思います。税務上、基本的には10万円以上で、使用可能期間が1年以上の資産においては、その費用をその年度ですべて計上できないようになっています。

そういった資産は法的に決められた年数で分割して計上するルールがあります。「耐用年数」とは、前記した減価償却年数の元になる回数(年数)を決めたものです。

要は耐用年数に基づいて、毎年減価償却をしていくといったものです。その償却年数は適用資産の種類によって異なり、当然、建築物にもこの耐用年数というものが存在するのです。特に建築物については構造によってもその年数は異なります。また、建築物は用途によっても年数は異なるのですが、ここでは賃貸物件、アパートおよびマンションについて主に書かせていただきます。

アパート・マンション経営において、構造で耐用年数が異なることは非常に重要になってきます。物件の耐用年数の残存年数によっては、金融機関の融資が可能か不可能かの審査対象になります。

また、耐用年数を過ぎてしまった物件では利益を相殺できなくなるため、損金が減ってしまい、結果税金額が大きくなってしまうといった問題も発生します。特に木造建築物や軽量鉄骨造建築物で築20年以上のものは注意が必要でしょう。

しかしながら建物にとって築20年は寿命半ばです。このような、まだまだ十分使える建築物を、耐用年数が過ぎたから「価値なし」とするのはいかがなものでしょうか? 建築物の専門家である私から見ても、非常に疑問を感じます。

耐用年数は物件の構造によって異なる

では、構造による耐用年数の違いはなぜ起こるのでしょうか?また耐用年数という数字の根拠はどこから来ているのでしょう? まずは現状の大まかな耐用年数を確認してみましょう。

軽量鉄骨造      19年
木造         22年
鉄骨造        34年
鉄筋コンクリート造  47年

以上のようになっています。

ちなみに軽量鉄骨造というのは鉄骨造の一種ですが、骨格材の肉薄鉄骨で厚みが3mm以下の建築物を軽量鉄骨造と言います。鉄骨が薄いので安価に建築できますが、高層の建物は不可です。

ここでいう耐用年数という言葉は、「建物の寿命」のような印象を持ってしまいがちですが、実は全く関係ありません。あくまでも耐用年数とは、税務上で定められた減価償却用の数字に過ぎないのです。

そうは言うものの、耐用年数は全く根拠のない数字というわけではありません。実際の寿命とは違うと言え、構造そのものの耐久性を元に、何らかの根拠に基づいて決められた数字ではないかとか推定します。「推定」と書かせていただいたのは確実な根拠がわからないのです。本コラムの執筆にあたり、私も色々と調べてみました。

どういった経緯で耐用年数は決まる?

現在、税務上用いられる減価償却資産の耐用年数は、「減価償却資産の耐用年数等に関する省令」に記載されているものが適用されます。「耐用年数省令」は昭和40年に公表されたようです。

ただ、もとは昭和26年の「固定資産の耐用年数等に関する省令」を改訂したようです。昭和26年の省令には「固定資産の耐用年数の算定方式」というものが存在していました。そこには、耐用年数算定の元となるものが書かれています。

建物は、防水・床・外装・窓・構造体の5要素で組成されているとします。

例えば、

当時の鉄筋コンクリート造りの建物(事務所・店舗用)の一般的耐用年数は75年でした。これは建物の組成部分ごとの加重平均で求められています。耐用年数全体を1万円とした場合、年要償却額(定額)に換算し、それを1万円から割る計算をします。(下記参照)

 

耐用年数

全体を1万円とした場合

年要償却額

防水

20年

135万円

6.7万円

30年

720万円

24.0万円

外装

50年

720万円

14.4万円

30年

1260万円

42.0万円

構造体

150年

7165万円

47.7万円

全体

 

10000万円

134.8万円

ゆえに10,000円÷134.8≒74.18→75年となるようです。建物は上表の5要素から成り立っているとして算出した数字が耐用年数の元となり、昭和26年当時、鉄筋コンクリート造りの建物は耐用年数を75年としていました。

その後、鉄筋コンクリート造りの建物は昭和41年に65年、平成10年には50年(住居系は47年)と2/3に短縮されて現在に至っています。この75年が50年に短くされてしまった根拠は不明です。確実な答えは見つかりませんでしたが、耐用年数が短縮された理由は税収確保等の要請からのようです。

昭和26年当時の耐用年数の計算は理に適っているものと思います。全体的な構造から考えてもRC建築物が耐用年数75年というのはしっくりときます。それを明確な根拠も無しに65年→50年としてしまうのは納得できませんね。税収確保の必要性はあったのかもしれませんが、実状に合っていない方向への法改正は行って欲しくないものです。

現在の耐用年数の根拠はないとはいえ、参考になる数値を出している論文があります。2003年に早稲田大学から日本建築学会に発表された、「竣工記録に基づいた事務所建物の寿命調査」です。

この論文によると、50%残存率(建物の半分が取り壊される年数)は、RC造で39.68年、鉄骨造で34.41年になっております。現状の耐用年数とはまだ差がありますが、まぁ、近い数値ではないでしょうか。

実際には寿命を迎える前でも取り壊す建物も多く、RC建築物に至っては50年以上使用できるとしても、早めに解体してしまうことも多いようです。まだ使える建物を壊してしまうのは非常に勿体ないようにも思えますが、そこはやはり費用対効果がかかわってきてしまうのでしょう。

やはり建築物は築年数が経過すると共に修繕費用が大きくなります。また、建築材料や設備機器や工法も技術革新が著しく、どうしても新築される建築物と比較すると居住性に劣ってしまうのです。

特に日本人は賃貸用不動産物件において新しいものを選ぶ傾向が高いので、築年数の経過した物件は需要が減ってきます。アパート・マンションの賃借人にも言えることでしょう。そのため、寿命どころか残存耐用年数が残っている物件でも解体されることもあり、論文のような数値が耐用年数の根拠とされているのかもしれません。