暴力団最終_09142015

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こんにちは。銀座第一法律事務所、弁護士の鷲尾です。前回は、「契約違反をしている入居者の対処法」についてお伝えしました。
https://www.rakumachi.jp/news/column/107625

今回は、すでに入居者がいる物件を購入したところ、その入居者はサラリーマンだと聞いていたのに実際は暴力団関係者だったというケースです。

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購入した物件の入居者は、サラリーマンだと聞いていたのに暴力団関係者でした。売買を白紙に戻す、売主にきちんと追い出してもらうなどの対応はできませんでしょうか?

※本お悩みは、投資家さんから寄せられた話をもとにした架空の事例です。

参考となる裁判例

入居者がサラリーマンだという前提で物件を購入したのに、実際には暴力団関係者が入居していたというのですから、笑いごとではすまされません。このような場合、買主はどのような手段をとることができるでしょうか。まず、参考となりそうな裁判例をいくつかご紹介します。

① 東京地裁平成7年10月11日判決(判タ915号158頁)

昭和59年、オーナーがビルの1室を物産会社の事務所として賃貸したが、借主はこれを無断で暴力団事務所として使用した。平成6年11月に銃弾3発が撃ち込まれる事件が発生したため、オーナーは、賃貸借契約の解除と建物明渡しを求めて提訴した。裁判所は、賃借人の行為は賃貸人との信頼関係を破壊するものとして請求を認めた。

② 東京地裁平成9年7月7日判決(判時1605号71頁)

中古マンションの1室を購入したところ、同じマンションの他の室に暴力団幹部が居住していたことが判明し、組員が多数出入りし、夏には深夜にわたり大騒ぎするなどの迷惑行為に及んでいた。そこで、買主は、売主に対し、売買契約の解除などを求め、予備的に損害賠償を請求した。

裁判所は、暴力団組員が居住しており、組員による迷惑行為が一時的なものではないことから通常人にとって明らかに住み心地の良さを欠く状態に至っているとして、「隠れた瑕疵」の存在を認めた。しかし、その瑕疵は居住目的を達成できない程度には至っていないとして契約の解除は認めず、損害賠償として売買代金の10%相当額を認めた

③ 東京地方裁判所平成9年10月20日判決(判タ973号184頁)

賃借人が暴力団員であることを知らずにマンションの1室を購入した買主が、売主と仲介業者に対し、売買契約は錯誤により無効であるとして売買代金の返還等を請求した。

裁判所は、入居者が暴力団員であっても、表札は名前だけで組員の出入りや近隣とのトラブルは発生してはいないなどの事情から、入居者が暴力団員というだけでは要素の錯誤にはあたらないとして請求を棄却した。

④ 東京地方裁判所平成14年8月27日(ウエストロー)

ビル貸室業者がビル1棟を購入したところ、その1室に暴力団関係者が賃借人として住んでいたため、買主が売主及び仲介業者を相手に、債務不履行、瑕疵担保などを理由に損害賠償を求めて提訴した。

裁判所は、ビルが予想利回り9.7パーセントとして売り出された投資物件であったことなどから、暴力団関係者がビル内に居住することは売買価格に影響を及ぼすため「隠れた瑕疵」に当たるとした。ただし、損害の額の証明がない等として損害賠償請求を認めなかった。

⑤ 最高裁判所平成27年3月27日(裁判所時報1625号106頁)

西宮市市営住宅条例は「暴力団員であることが判明したとき」は、市営住宅の明渡しを請求することができると定めていた。市は、入居者が暴力団員であることを知り、この条例に基づいて明渡を求め、1審、2審とも市が勝訴した。賃借人は、条例規定が暴力団を合理的理由なく不利に扱うもので憲法14条1項に違反する等として最高裁に上告したが、最高裁は上告を棄却した。

①は、賃貸していた物件が暴力団組長が経営する会社や暴力団事務所として使用されており、そこに銃弾が撃ち込まれるという事件が発生したという事案です。この事案では、賃貸借契約の解除が認められており、これは当然でしょう。

②は購入したマンションの別室に暴力団員が居住していたケース、③は購入したマンションの1室の賃借人が暴力団員だったケース、④は購入したビルの1室に暴力団員が入居していたケースです。いずれも売買契約の解除、無効などは認められていません。

⑤は市が条例に基づいて市営住宅からの明渡しを求めたという特殊なケースですが、明渡しが認められています。