軍用地最終_09162015

基地問題で揺れる沖縄。その一方で沖縄ならではの投資として「軍用地投資」がある。「軍用地」とは米軍基地のことを指し、その基地のほとんどは、民間(個人・法人)から、国が借り上げて借地料を支払っている。その借地料は沖縄県全体で年間約900億円に及ぶという。本土ではほとんど知られていない、沖縄「軍用地投資」の実態について、時価にして約4億円の軍用地を購入して所有する三浦弘人氏に伺った。

沖縄の「軍用地」は誰でも売買できる

戦後、米軍の占領地となった土地は、所有者の名義のまま強制的に米軍に差し出す形になっていたが、その後返還されて、現在では国が所有者から借り上げ、米軍もしくは自衛隊が使用している。あまり知られてはいないが、軍用地は誰にでも売買できる「軍用地投資」として、不動産投資のひとつの選択肢となっている。

「沖縄の新聞を定期購読していると、週に一度副読紙が付いており、これに軍用地の広告が載っています。軍用地というと特別な土地のように思われますが、このように普通に物件情報を目にすることができます。沖縄の人たちからすれば、なじみ深い投資なのです」

というのは、三浦弘人さん。沖縄で新築アパートを中心とした不動産投資を行っており、時価にして約4億円の軍用地も所有する沖縄在住の不動産投資家だ。

軍用地情報は沖縄の新聞に、一般の不動産情報と並んで日常的に掲載されている

軍用地は所有権として売買取引されている。普通の土地と同様に契約書もあり、重要事項説明も行われる。ただし、その土地を見ることも立ち入ることもできない

「公図もきちんとありますが現地を確認することはありません。通常の取引では航空写真で確認します。国(防衛省)と借地契約を結び1年に1度、1年分をまとめて借地料の支払いが行われます。


ここでポイントとなるのが、借地料の値上がりです。地主会(地主の代表)が毎年必ず、国(防衛省)と値上げ交渉をします。その値上げされた分の調整額の支払いも年に1度あるため、通常の借地料に加えて調整額の合計で2度の支払いがあるのです」

軍用地主会発行の「賃貸料要求額」及び「確定額推移表」
値上がりする幅は毎年変わる

借地料は平米あたりで決まっており、毎年7月末に借地料の支払い、毎年3月末には値上がり差額の支払いがある。遡ると毎年わずかではあるが、必ず借地料が上昇している

「地主に配布される資料の『賃貸料要求額及び確定額推移表』を見れば、一目瞭然ですが、地主会からの要求額に対してアップ率は最高で10%、直近では1%程度となっています。安倍政権になってからは上昇傾向にあります」

軍用地最大のメリットは、いつでも換金が可能だということ。都内における中古区分マンションのように、すでにマーケットが確立されているため、売買がしやすい環境にある。

相場で売却するなら1週間以内で売却できるが、相場より高く売りたい場合では時間がかかる。その時々で相場は変わっていき、株式投資のように大儲けがない代わりに、大損することもない。まさに手堅い投資といえるだろう。

軍用地の取引基準は、利回りでなく「倍率」

独特なのは、その販売価格。軍用地の値付けは独特で、年間の借地料に倍率を掛けたものとなる。そのため「価格倍率○○倍」と表記される。坪単価は関係ない。

年間借地料×倍率=軍用地の売買価格

「買いたいという需要の多い土地は倍率が高く、買い手が少ない土地の倍率が低くなります。この差はどこから出てくるのかといえば、軍用地投資のリスクでもある『返還』に関係します」

倍率の高い場所
返還の見込みがない場所。例としては、嘉手納飛行場。

倍率の低い場所
返還の見込みがある場所。例としては、普天間飛行場(ただし、普天間飛行場は返還時の特別措置が決まっている)。

つまり、一般的な投資指標である利回り(賃料収入÷購入価格)に換算すると、倍率が低いほど利回りが高く、倍率が高いほど利回りが低くなる。

「収益率が高い場所ほど、返還される可能性が高く、低い場所ほど返還されるリスクが低い。つまり利回りは低いけれど、安定的に借地料が見込めるということなのです」

軍用地情報には必ず倍率が表記されている。嘉手納飛行場は倍率が高いことがわかる。(※クリックで拡大)

通常、基地が返還されるということは沖縄県にとって良いことであるが、投資観点からいえば、大きなリスクと捉えられている。三浦さんにこの「返還リスク」について解説していただく。

「たとえば昭和62年5月に全面返還された那覇北部の新都心は、米軍基地のベットタウンでした。現在は駅もできて商業施設が立ち並び、地価も大きく上昇していますが、返還されてから都市開発に20年以上かかっています。

考えてみれば都市計画を一から行うのですから当然のことです。その間、地主は何の収入もない中で固定資産税だけ支払い続けていたそうです。それもあって普天間飛行場が返還されるときには、法律を改正して、都市計画を進める間も借地料を支払う措置がとられます。

ただし、それは普天間が街として有用な立地だからであり、これが人の住まないような山奥であれば、どうなるかわかりません。そうなると、お金も生まない、売るに売れない土地になってしまいます」

そのような背景もあり軍用地を購入するときは、返還について考慮しなくてはいけない。返還される可能性が低い土地を選択することは当然として、さらに先を進んだ軍用地投資家は、返還後の土地としての使い勝手も確認するそうだ。

「詳しい人からは航空写真で確認して、『崖だからやめた』という話を聞きます。返還された後は、普通の街になるわけですから、地形も大切ということです」

なお、米軍基地の返還計画は防衛省のホームページを掲載されているため、事前確認は可能だ。


軍用地ローンを使ってレバレッジをかける

三浦さんが軍用地投資をはじめたのは7年前(平成20年)、新築アパートの建築を行いながら、軍用地を購入した。

「たまたま500万円の余剰金があり、不動産業者にすすめられて現金で購入しました。場所は嘉手納飛行場の横、嘉手納弾薬庫です。平成20年2月に500万円で購入した軍用地の1年間の借地料は当時、22万円でした。これが4年後の23年1月に売却を検討したところ、借地料は22万8400円に値上がりしていました。そのため630万円で売却することができました。つまり130万円の売却益がでたのです」

なぜ値上がりしたのかといえば、不動産市場で軍用地の価値が上がり倍率も上がったため。購入時23倍の倍率が、売却時には27倍になっていたから。なお、現在の相場では37倍だという。

「嘉手納飛行場は返還されないだろうと思われていることと、嘉手納飛行場にはミサイル基地が必要とされている背景もあり倍率が上がっているのです。私は買ったときよりも高く売れるのであれば、借入をして大きな軍用地を買ってもいいのではないかと思いました。当時、アパート建築をはじめていましたからまとまった現金はありません。借入をしても利益が出るのか、その方法を研究しました」

現金で購入しても小さな利益しか生まないが、何度も計算した結果、銀行融資で億単位の大きさの軍用地を購入する方が確実な利益を生むという独自の投資方法を見つけることができた。銀行に相談したところ、担保価値が高く不良債権になりにくい軍用地に対してのローンは積極的だったという。

「これまで、銀行にアパート購入の相談にいくと、最低でも2週間は返答に時間がかかりました。ところが、軍用地は午前中に相談に行けば午後には返事がもらえました。銀行員いわく、軍用地は沖縄でもっとも不良債権になりにくい不動産なので本部決裁が下りやすいそうです」

こうして平成24年から、改めて嘉手納飛行場に絞り購入を加速させた。売りが出たら買うことを繰り返し、約1年かけてコツコツ増やして、その金額は、なんと合計で3億円ほぼフルローンだ。

「平均して34倍で購入していますが、今の相場は44倍~45倍に上昇しています。仮に売却するとして、借地料を44倍で計算すれば、売値は4億円以上となります。これは約3年で1億円の含み益を持ったことになります。

もともと毎年の借地料の値上げがありますから、たとえ倍率が同じだとしても、価格は下がりません。なお、金利条件は信用や取引の実績で変わっていきます。私のケースでいうと、これまで2回の金利交渉に成功して、条件は徐々に良くなっています」

○購入時
平成24年の年間借地料 880万円×34倍=約2億9900万円の時価。

○現在
平成27年の年間借地料 923万円×45倍=約4億1500万円の時価。(約1億1600万円の値上がり)

確実にインカムを得ることができて、所有しているだけで借地料は毎年値上がっていく。しかも、倍率が上がったところで売れば、キャピタルゲインが見込める。たしかに、こんな投資は他にはなかなか見つからない。こうして三浦さんは、軍用地投資を順調に進めているそうだ。


軍用地投資での節税対策が密かなブームに……

誰でも売買できるとはいえ、実際に軍用地投資をメインで行っているのは沖縄の投資家。一体、どんな人が購入しているのだろうか。

「手堅い運用と考えられており、国債やちょっと利回りの良い定期預金という感覚で購入する人が多いです。業者も小さく分筆して求めやすい売買価格に設定した売り方をしていますね。

県民の平均所得は、国内最下位という沖縄ですが、所得の差が激しく、資産を持っている人もたくさんいます。また、共働きが当たり前という沖縄の場合、世帯収入で見れば余裕があると思います。そんな中で、手軽な投資先として軍用地が位置づけられています。固定資産税も安く、管理コストもかかりませんから、他の不動産投資とはかなり違いますね。高額所得者であれば、所得税対策として、あえてローンを組んで買うケースもあります」

また今年からの相続税控除額の法改正で、相続税対策としての軍用地投資も盛んになっている現状がある。

「相続税対策で、1億円の軍用地を買ったとします。相続税評価額は場所にもよりますが、2500万円から3500万円程度ですから、買った時点で評価が3分の1から4分の1になります。これは、相続税対策で東京のタワーマンションを買う理屈と同じですね。軍用地はタワーマンションのように管理費・修繕積立費はかかりませんし空室リスクもないので、より相続税対策向きです」

軍用地は無限にあるものではなく、既存の中での取引となる。相続税対策で軍用地を購入したい需要は増えているが、売り物は増えないため、倍率が上がっていくのだ。

「最近聞いた話では、高くてもいいから大至急10億円分の軍用地が欲しいという顧客がいました。不動産業者に依頼したのは税理士で、早く相続税対策をしないといけない事情があったようです。沖縄ではアパートの売り物件も少なく、これから新築していたら間に合わないのでしょう」

その一方で、退職金でまとまった軍用地を購入し、借地料を生活費の足しにするというケースも多くあるそうだ。200万円程度からスタートできる軍用地投資は、その人その人で様々な買い方をできるのが最大の特徴だ。

投資目線で考えると利点も多い軍用地だが、一方で「基地問題」という深刻な問題が存在しているのも事実だ。そのような背景についてもきちんと知っておく必要があるだろう。

沖縄県に在住していなくても購入可能で、「沖縄 軍用地」といった検索ワードで情報を探すことができる。ただし、融資を取り扱うのは沖縄の地銀となるため、居住者でなければ借入することができない。あくまでキャッシュでの購入となる。

三浦弘人さんプロフィール

092015_0845_4.jpg1966年、東京都江戸川区生まれ。新卒で都内の大手カツラメーカーに営業として就職。29歳で沖縄県那覇市へ転勤になり、翌年沖縄で出会った地元女性と結婚。34歳で大手ハウスメーカーの沖縄支店に転職して、仕事を通じて空室を出さない賃貸経営術を学ぶ。

37歳で1棟目のRCマンションを新築。その後も土地から買う手法で物件を増やして45歳でセミリタイア。現在、沖縄に6棟60戸のRCマンションと軍用地を所有、約6500万円の賃料収入を得ている。

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