バブル最終_09162015

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1980年代後半から1990年代初頭にかけて、日本中が大好況に沸いたバブル景気。株価や地価が高騰し、潤沢な資金を手に入れた日本企業がこぞって海外の企業や不動産を買い漁った。

だがバブルは、所詮バブル。泡の如くはじけ飛び、見事に崩壊した。その後の日本経済は、ご存知のとおりだ。みなさんのなかにもあの狂乱の時代を過ごした方もいることだろう。

そこで今回は、バブル期に物件を買い、そしてバブル崩壊で大打撃を受けた人に取材した。匿名を条件にご登場いただいたのは、埼玉県某市にお住まいのKさん。都内から30分ほどの私鉄沿線の駅前に、9階建てのマンションを所有する投資家だ。そのリアルな声に耳を澄まし、今後の教訓にしていただければ幸いである。

相続税対策のため、駅前にマンションを建築

――まず、いつ頃、どのような物件を、どちらに購入されたのですか?

「ちょうど1990年、某駅の駅前ロータリーに面した場所に、SRC造の9階建てマンションを新築で建てました。1、2階はテナントで、住居部分は2DKの部屋が35戸。家賃はテナントが月150万円、住居が12万円でした」

――どういった経緯でそのマンションを建てられたのですか?

「自分で言うのもあれですが、私の実家はもともとそのあたりの資産家で、駅周辺にいくつか土地を所有しており、駐車場として貸していたんです。土地の名義は私の父でしたので、相続税対策のためにその中でもいちばん大きな駐車場をつぶして、マンションを建てたんです」

――どれほどの建築費がかかりましたか?

「すべての工費が当時で約11億円。相続税圧縮目的でしたので、銀行からフルローンで融資を受けました」

――すごい額ですね。融資はすんなりと、おりたのですか?

「はい。他の土地を担保にして借りました。今では考えられませんが、当時の銀行は抵当さえあれば、しっかりとした事業計画書がなくとも、イケイケドンドンで貸してくれましたね。銀行としても融資してナンボみたいな雰囲気でしたから。そして、資産家は手持ちの財産を担保にして不動産に投資する。それが当たり前の時代でした。土地価格は青天井、本気でそう思っていましたよ」

――バブル期には工事費も高かったと聞いています。実際いかがでしたか?

「現在と比べてですが、人件費も建築資材も高かったですね。まあ好景気真っ最中ですから、物価が高いのは当たり前。ただ、そんなことはその時代の真っ只中にいると、気づくはずもありません。世間の雰囲気が一様に浮かれていましたから」

入居率100%が続き、家賃の値上げ交渉もしていた

――では完成後、そのマンションの入居状況はいかがでしたか?

「テナントも含め、すぐに満室になりました。たしか月々のローン返済額は600万円くらいでしたが、なんの問題もなかったですね。減価償却費を加味して毎月200万円のキャッシュフローはありました。空室が出たとしてもすぐに埋まるので、更新時には家賃の値上げ交渉をこちらから遠慮無くしていましたね」

――そんな好況だったバブル景気が、1993年に崩壊を迎えたわけですね。どのような変化が起きましたか?

「まず、テナントを含めた入居者の皆さんが更新を前に、安い賃料の物件を求めて出て行かれました。そして更新を迎えた方も値下げ交渉をしてきましたね。私としては、少しでも入居率をキープしたかったので、家賃を下げざるを得ませんでした。もちろん新規で入られる方の家賃も同じように下げました。それでも入居率は上がらず、キャッシュフローが徐々に目減りしていったんです」

――ローンは滞りなく支払えましたか?

「それは他に所有していた駐車場からの賃料や、蓄えでなんとか可能でした。ご存知でしょうが、銀行と言うのは晴れている日に傘を貸し、雨の日にはそれを返せと言うものです。返済は待ったなしでした。

ですが、そんな自転車操業状態も長くは続かず、結局1年半後くらいに駐車場などマンション以外の資産を売却して、借入残高を減らすことになりました。それで繰り上げ返済をして、さらに金利が低くなっていたのでローンを借り換えることによって、月々の返済額を減らしたんです」

――マンションは手放さなかったのですか?

「はい。どうせ買い叩かれるのは目に見えていましたし、経理上は減価償却の面で税金対策にもなったので売りませんでした」

――実害は相当な額になったのでしょうか?

「そうですね。工事費が一番高かった時期に建て、ほんのわずかしかそれを回収できませんでしたから。また、仕方なく売ってしまった駐車場などの土地には、息子やその家族が家を建てる予定でしたので、そっちのほうが痛かったかもしれません。今では息子はお嫁さんの実家に婿入りして、こっちにはほとんど顔を見せませんから。一家離散というほど大袈裟なものではないですけど、やはり寂しいものです」

――ちなみに現在のマンションの状況は?

今は入居率8割弱で、家賃は7万5000円に設定しています。周辺相場は 同等間取りの築浅物件で8万5000円くらいなので、 かなり安いですね。もう築25年ほどですから修繕費も結構発生しますが、ローンはなんとか払えているのでその設定にしています。世の中が浮かれに浮かれ、私も値上げ交渉を当たり前のようにしていたあの時代が懐かしくはありますが、崩壊後のあの悲惨な経験をもう二度としたくないという気持ちのほうが上回っていますね」

――バブル景気とその崩壊を、まさに身を持って経験されたKさんから、現在の不動産投資家の方々へのアドバイスはありますか?

「もしいま私が投資をするとしたら一点豪華主義で大きな物件を扱うのではなく、比較的低価格な物件に分散させて資金を投入するでしょうね。ですが、投資にはいろんな考え方がありますし、なにより私は敗者ですから、あくまでも参考程度にしてください……」

猫も杓子も好景気に浮かれていたバブル期。その崩壊によって、Kさんのように大打撃を受けた不動産投資家の方は、大勢いただろう。現在も2020年の東京オリンピックまでは、土地価格、不動産価格ともに値上がりを続けるとの意見を耳にする。しかし、いつなにを引き金にして、なにが起こるのか分からないのが現代だ。是非、みなさんにはその潮目を見極めていただき、投資ライフを充実していただきたいものである。