
写真© sakura-Fotolia
皆さん、こんにちは。岡田のぶゆきです。第4回目の相談者は、川崎市にお住まいの鈴本一郎さんです。会社員の鈴本さんには奥様と2人のお子様がいらっしゃいます。宅地建物取引主任者とファイナンシャルプランナーの資格をお持ちで、昨年の夏、不動産投資に目覚めたとのことです。
1棟目の取得では、自己資金は最大でも300万円に抑えたいとのこと。年収、自己資金とも豊富ですが、買い進めていくことを考え、手持ちの資金に手をつけたくないそうです。将来的には時間に縛られない生活に憧れ、早期リタイアを希望されています。
名前 |
鈴本一郎さん(仮名) |
年齢 |
52歳 |
性別 |
男性 |
職業 |
会社員(金融商品取引業) |
居住地 |
神奈川県川崎市 |
年収 |
700万円(世帯年収1100万円) |
自己資金 |
1500万円 |
Q1.勤務先が中小企業なので融資を断られるが解決策は?
何度か業者を通じて金融機関の紹介をお願いしましたが、勤務先が資本金1000万円、従業員6名の中小企業なので、会社の信用力を理由に断られています。不動産業者を通じているため詳しくは未確認ですが、資本金が銀行内の基準に達していないと言われました。
業者によると、メガバンクは土俵に乗らず、ほとんどの地銀も厳しく、信用金庫は許容範囲以上の自己資金が必要になるでしょう、とのことです。今まで直接金融機関に打診したことはありませんが、業者を通じて、不可だったものが、直接打診することで、可能になることがあるのでしょうか。
A1.勤務先でなく物件選定に問題があるのかも。自ら銀行に確認すべき
ご質問ありがとうございます。お仕事が忙しいのか、あまり積極的に動けていないような印象を受けます。まずは、業者任せにせず、自分で銀行に足を運んでみてはいかがでしょうか。
本当に会社の信用力だけで、断られているのか確かめてみる必要があります。たとえば、会社の業績がよくなれば融資がOKなのか、それとも転職すればいいのか。もうひとつ次の行動に移れるような判断が必要です。それには銀行に行って聞いてみることです。
会社の規模が小さいため、融資が引けないとのことですが、ご相談者の鈴本さん自身には、自己資金となる保険の返戻金1500万円。それに世帯年収が1100万円もあるのですから、土俵に乗らない人ではないと思えます。
もしかすると、選んでいる物件に問題があるのかもしれません。保証人なし、担保もなしとのことですが、これは奥様が副業のお手伝いをされており、世帯年収も上がっていますから、奥様に保証人をお願いできないでしょうか。
あとは物件の選定を見直してください。キャッシュフロー重視で不動産を選んで、積算評価が低いということも考えられます。銀行によって物件の評価は変わるものです。銀行から見て、持ち込みしている物件の評価がどんなものなのかを、聞いておいた方がいいと思います。
Q2. 不動産事業の規模を拡大していくうえで、どのような点に注意すべきか?
今後、不動産事業の規模を拡大していくうえでのアドバイスをいただきたいです。たとえば、1棟目の返済比率が何%を超えたら、2棟目の融資が受けづらくなるのでしょうか。積算価格を超える借入があると、次の融資を受ける際に影響がありますか。融資が受けられなくなると、その時点でストップしてしまいます。常に融資が受けられる状態をキープしておくためには、どのような点に注意すればいいでしょうか。
A2.常に黒字で手元に資金を残し、安定した満室運営をキープすることが大切
少なくとも返済比率が60~70%になれば、かなり経営が厳しい物件だと考えられます。しかし、返済比率が高くても、需要が安定しているエリアで、積算評価が伸びるような物件であれば、次の融資を受けられないことはないでしょう。金融機関の評価の出し方によっては、積算価格を超える借入があっても融資をしてもらえます。
ここで重要となるのは、1棟目の物件の積算評価・収益評価と、次に借りようとする積算評価・収益評価のバランスです。かなり規模が大きければ、所有する物件の評価の割合の方が大きくなってきます。1棟目が小さな物件であれば、その所有物件よりは、その人自身の属性や預貯金・年収・保証人の能力などを重視して見られると思います。そのため、「○○の方がいい」とは断言できませんが、1棟目の規模によるところは大きいです。
常に融資が受けられる状態はどんなものかといえば、インカムゲインの実績が黒字になっていることです。これは、個人事業主でも法人でも同じだと思います。入居率は高く安定して稼働していて、手元にしっかり資金が残っている状態。これなら、銀行も「しっかり運営しているな!」と見てくれます。
つまり、いくら数字のいい物件を買ったとしても、満室になっていなければ意味がないのです。物件の選定では、銀行評価も大切ですが、安定稼働できることが第一の条件です。
Q3. 変動金利に対するリスクにはどう対応すべきか?
日本政策金融公庫以外は、変動金利での借入になると思います。変動金利で借りた場合、金利上昇リスクへはどのように対応すればいいでしょうか。日本の財政状況からすると、金利が大幅に上がることは常に意識しておくべきですが、金利が上昇するにしても、事前に兆候が出てくると思うので、準備さえ行っていれば対応は可能と考えています。有効な準備などアドバイスをいただけますでしょうか。
A3.金利の上昇リスクより、融資期間しっかり運営できる物件を選ぶことが大事
変動金利で融資を受けた場合の金利上昇リスクは、借り方の基本ベースとなっている「銀行が調達する金利は、何か?」というところから考えます。短期プライムレートという、金融機関がそれぞれ調達する金利がベースとなっている場合では、これまでの短期プライムレートはどのような動きになっているのかを見た方がいいでしょう。
他行も含めて短期プライムレートを下げたとき、金利を下げている金融機関であれば、上がったときには上がりやすいですが、他の金融機関が短期プライムレートを下げたときに、下げていない金融機関であれば、上げるときも上がりにくいことがあります。
この短期プライムレートの動きは、各金融機関のディスクロージャーで確認することができます。しかし、不動産投資をはじめたばかりで、まだ金融機関を選べないステージにいる場合は、貸してくれるところから借りるしかありません。その場合、金利上昇リスクへの対応の1つとして、よく考えられるのは固定金利を選択することですが、それほど単純にリスクヘッジになっているわけでもありません。
借入期間をトータルでみたとき、固定金利が得だったのか、変動金利の方が得だったのか。これはやってみないとわからないからです。変動金利で金利が上昇して、固定金利よりも一時的には上がるかもしれませんし、下がるかもしれません。
その他の金利上昇リスクへの対応としては、「売却する」「自己資金を入れる」などがあります。ただし自己資金を入れた場合は、そのぶんだけ資金効率が悪くなります。売却するにしても金利が上がっている状況の最中で、売買価格に反映できるのかという問題があります。
私は金利の上昇リスクを心配するよりも、「融資を受けている間、しっかり運営できる物件を選んでいるのか」それが大事だと考えます。もし、空室があるようなら、しっかり埋めることに集中した方がいいでしょう。
借入額がかなり大きく、しかも返済率が高くて、入居率がよくない場合では、長期的にみたときに金利上昇のときのリスクは大きいものです。しかし、それほど物件の規模が大きくなければ、多少の変動金利が上がったとしても、そこまでのリスクはないと思います。つまり、金利上昇リスクが怖いのであれば、自分の手におえる価格帯にしておくというのもひとつの考え方です。
最後に、鈴本さんへの総合的なアドバイスですが、属性や資産背景からみれば、希望されている地銀なら借りることが難しくないと思います。ひょっとしたら持ち込んでいる業者さん、もしくはその業者さんの物件選定に問題があるのかもしれないので、再考されてはいかがでしょうか。
また借入金利で悩まれているようですが、最初は金利より、総額でいくら借りられるのかが重要だと思います。金利は後から交渉ができますが、借入れる金額を増やすのは難しいものです。今のキャッシュフローを意識するよりも、金利はいずれ下げていくつもりで、とりあえず借りて実績をつくることが大事だと思います。
買い進めるためには、なるべく自己資金を温存して、たとえ多少高い金利でも融資を受けておき、その後で借換えの交渉をする方がいいでしょう。どうしても、高金利での借入に抵抗があるのでしたら、自己資金を使って買い進めていく方法もあります。これはおすすめではありませんが、ひとつの選択肢です。
自己資金を入れた分の借換えをするときに「その自己資金が返ってくるのか?」といえば、普通の融資よりも難易度が高くなります。ですから、買い進めたいと考えるのであれば、なるべく、多くの借入をして自己資金を使わないようにします。
おすすめは、まず一旦借りて、実績を積む中で金利を徐々に下げていくことです。私が最初に行った借入は、地方銀行で金利2%後半でした。今も同じ地銀でお世話になっていますが、0.7%を切るくらいの金利で融資を受けられています。
これは実績によって金利が下がっていった結果です。やはり、何の実績もないのに「最初から低金利で借りたい!」というのは難しいでしょう。1棟目を購入したら、焦らずしっかりと満室経営すること、そこからがスタートです。案じるより産むがやすしです。まずは自分で行動して、銀行の反応を自分の目で確認してみましょう。思い込みが様々な可能性をさまたげていることもありますから、思い切って動くことが大切です。
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