人の意見を鵜呑み最終_10072015 (1)

写真© takasu-Fotolia

昨今、不動産投資に新規参入する投資家が増え、コンサルティングやメンターなどの専門家にアドバイスをもらう人も増えているという。だが実際に不動産投資を行い、物件を運用していくのは、専門家ではなく投資家自身。もらったアドバイスを実践して成功すれば良いが、そんなことばかりでもないのがリアルな投資の世界である。今回、不動産コンサルなど専門家の意見を鵜呑みにして投資に失敗してしまった2名の方に、その顛末を取材した。

脱サラを志して、投資を始めることに

まずご登場いただいたのは、ある不動産コンサルから建築会社を紹介され、3年前に千葉県某市に鉄骨造3階建のデザイナーズマンションを建てたサラリーマンのHさん。早速、話しを聞いてみた。

――まず、投資を始めたきっかけを教えてください。

「父親がアパート経営をしていた関係で、不動産投資に興味を持ったのがきっかけです。ただ父自身は家族をまかなえる程度の収入があれば良いというタイプで、投資家というよりも気のいいおじいちゃん大家さんといった感じでした。

私としてはそれなりの自己資金もあり、相続税対策の目的で生前贈与された私名義の土地もあったので、そこの有効活用を考えたんです。実を言うと投資を始めたときには、すぐに脱サラするつもりだったのですが、あんな状態になってしまった今では辞めるに辞められません……」

――では具体的なその失敗談をお聞かせください。

「最初は、どうやって始めれば良いのか分かりませんでしたので、とある初心者向けの不動産投資セミナーに行ったんです。講師は投資関係の著書もある人でした。そこでは講演終了後に講師による無料相談会が開かれており、私はとりあえず自分の土地も含めた資産状況などを説明して、投資を始めたい旨を伝えました」

――その講師の方はなんとアドバイスをされたのですか?

所有している土地はそれなりに資産価値があったので、そこを担保にすれば、1億円ほどは融資を受けられるのではとのことでした。そして私と似た境遇の方で、鉄骨造のデザイナーズマンションを建てて、それなりに成功しているという事例を示し、だいたいの建築コストや利回りなどについて説明してくれたんです。想定では、家賃収入は年に1200万円、利回りは10%ということでした」

――それを聞いてどう思われましたか?

「初心者にいきなり1億円とは驚きましたね。ただそのときは、もし本当に興味があるのならば、本格的なコンサル契約を結んでから具体的な相談に乗ると講師が言うので、いったん持ち帰って考えさせてくださいと伝え帰宅しました」

――その後はどうされたのですか?

「やはり一人だけではなく、他のコンサルの意見、つまりセカンドオピニオンも聞きたかったので、別の相談会に参加することにしたんです。それが過ちでした……」


魅力的だったセカンドオピニオン

――詳しくお聞かせください。

「後日、別のコンサルが開催している無料相談会に参加して、同じく資産状況などを説明しました。それで、初回のコンサルが教えてくれた事例を伝えると、それならばもっと良いやり方があると言ってきたんです」

――それはどんな意見だったのですか?

「そのコンサルによると、私の土地があるあたりで新築のデザイナーズマンションであれば、初回のコンサルのプランより2割ほど家賃を高く設定しても、入居者は集められるとのこと。そして具体的な利回りの話しとなり、さらに融通が効く知り合いの建築会社も紹介するので、もう少し建築費は抑えられると言うんです。つまり家賃を上げて、コストを下げれば、さらに収益性は上がるということです。

彼が言うには、投資額は1億1000万円にして、家賃収入は年1440万円、利回り13%ということでした。そりゃ、最初のプランよりも良く思えましたよ」

――そのセカンドオピニオンを採用したということですね?

「そうですね。2番目の講師とコンサル契約を結び、そのプランの通りに投資をスタートさせました。ところが実際にフタを開けてみれば、なかなか部屋は埋まらなかったのです。それでも月々の返済は迫ってくるし、税金も払わなければなりません。半年後には家賃を下げずにはいられなかったのです。結果、思うようなキャッシュフローが得られませんでした。そのままサラリーマンも辞められず、現在にいたっています」

――なぜそのような状況になったと思いますか?

「今、冷静になって考えれば、早く投資を始めて脱サラしたかったので、あのコンサルの話しにやや前のめりになっていた気がします。そんな私の焦りは見透かされていたのでしょう。それで、『今ある見積もりやプランを持ってきてください。診断いたします』とセカンドオピニオンをアドバイスするなど、寄り添っているフリをしていたのだと思います。

要はそのプランニングを見ることで私の懐具合を丸裸にすることができますからね。それで私からのコンサル料、700万円に加え、紹介した建築会社からはおそらくキックバックをもらっていたのでしょうね。あとは知らんぷりです。知識も乏しく、経験もゼロなくせに、欲に溺れた私が悪いとは思ってますけどね。今はローンはなんとか返せていますが、空室次第では……、というところです」

――今後の脱サラについてはどのようにお考えですか?

「計画段階では税引前収入で600万円以上を見込んでいたので、脱サラも現実的に思えました。ですが現在、税引き後の手残りは、年間100万円にも満たない状況。到底脱サラするどころではありません。それでも、今後はきちんとした知識や正しい判断力を身につけ、いつかは脱サラの夢を叶えたいとも考えています」

Hさんは、早く投資を始めたいと焦っていたあまり、魅力的に思えたセカンドオピニオンを鵜呑みにしてしまい失敗したということだ。ではもう一方の例をみてみよう。


相続税対策として投資を始めた

次に登場するのは、東京23区内にある築30年のアパートを一棟買いしたMさん。投資を始めたきっかけから聞いてみた。

――どういった経緯で投資をすることになったのですか?

「2年前、当時80歳だった父が病気で入院したとき、私の知人からある一人の税理士を紹介されました。なんでもその人は、税理士をしながら不動産コンサルにも関わり、資産運用についてアドバイスをしているとのことでした。それで、相続税対策のために不動産投資を始めてはいかがですかと提案してきたんです」

――それほどの資産をお持ちだったのですか?

「私の父は土地など不動産は所有しておりませんでしたが、数年前に株式売却で得た現金を含めた金融資産が1億円近くありました。ですからなんらかの相続税対策をしたほうが良いのではと、父も含め親族で話し合っていた矢先のことだったんですよ。

そんなこともあり、渡りに船ではないですが、その税理士の話しを聞いてみようかということになりまして。彼もことある度に、遺族間の揉め事にならないようにだとか、資産圧縮のためにだとか言っては、なにかと投資を勧めていましたからね」

――Mさんご自身は、不動産投資のご経験はあったのですか?

「いえ、まったくの素人です。親族にも経験者は皆無です。こちらとしてはそんな状況でしたが、税理士という士業の人だったので、まさかおかしなことにはならないだろうと、すっかり信頼していたんです」

――それで具体的にはどのようなアドバイスを?

「アパートの一棟買いを勧めてきました。いくつか物件を挙げてきたのですが、その全てが税理士と業務提携しているという、とある不動産業者の物件だったんです。種明かしを先にすると、コンサル料160万円に加え、その不動産業者から紹介料のかたちでキックバックを取っていたんですよ」


それは維持費が掛かり過ぎるアパートだった

――なるほど。ただ紹介料を上乗せされただけでは、Mさん側にそれほどの被害はありませんよね?

「もちろんそうですね。問題は紹介されて購入したアパートにあったんです。それは23区内にある築33年の10部屋からなるアパート。価格は8000万円で、父の現金資産を担保にしてほぼフルローンの融資を受けて買いました。

それがいざ所有してみると、なにせ30年超えの築古物件ですから、水漏れなど修繕費がかなり掛かったんです。そんな物件なので家賃も上げられません。むしろ更新時に入居者から値下げを要求されたくらいです。当然、空き室も多くて収益性はいっこうに上がらない……。今の空き室率は70%くらいですね」

――当初と比較して、実際にはどれほど収益がマイナスになっている状況でしょうか? そのような状態でも、ローンは返済できているのでしょうか?

「ローン返済が月約50万円で、現状は家賃収入とトントンです。税金分が持ち出しとなっていますね。税理士の話しでは、キャッシュフローは年150万円程度は残るということでしたが、それは満室での試算だったんです」

――それはなかなか酷い物件ですね。

「そうなんです。つまり不動産業者も自社所有とはいえ、手を焼いていた物件だったんですね。気づいたときには、あとの祭り。また、例の税理士は『ローン返済額は月々これぐらいだけど、数十年後に完済すれば家賃が私的年金のようにまるまる手元に残りますから』なんて耳障りの良いことを言っていましたね。

ですが築30年超えのアパートがさらに数十年後に満室になる保証なんてありません。普通に考えればそんなことは分かりそうなものですが、なにしろ当時の私たちは素人そのもの。相続税を抑えたいがために肝心なことに気がつかず、税理士に言われるがままでした。それであんな物件を掴まされてしまったんです」

――「生兵法は大怪我のもと」、なんて言葉もありますが……。

「その通りですね。そもそもが相続税対策のためで利益はそれほど重視していなかったとはいえ、これほどアパート経営が大変だとは想像もしていませんでした。おかげさまで良い経験をさせていただいたと思っています。実は今、不動産投資について勉強しているんですよ。学べば学ぶほど、私たちがいかに愚かだったのか身にしみて分かってくるのですが、なかなか興味深い世界だとも感じています」

――ということは、今後、投資をされるおつもりですか?

「親族にはまだ話していませんが、父はまだ存命中ですので、許されるならばやってみたいですね。人の言うことを真に受けずに、自身でしっかりとしたシミュレーションをする。まずはこのことを肝に命じて、コツコツとやれればと思います」

士業の肩書きがあったからがゆえ、コンサルをすっかり信頼してしまい、被害を受けたMさん。授業料としては高くついたかもしれないが、あくまでも投資に前向きな様子だ。今後のリベンジに期待したい。

以上、不動産コンサルの意見を鵜呑みにして失敗した2つの事例を紹介した。いずれも知識や経験が足りないがために付け込まれ、利用されてしまったケースだ。投資を始めたばかりの方、もしくはこれから始めようという方は、自身で冷静に状況を見極められるように、きちんとした知識を身につけておきたい。

最後に断っておくが、もちろんここに登場したようなコンサルはほんの一部の存在である。むしろ結果を出し続けなければと使命に燃えている優良なコンサルのほうが多い。悪意のあるコンサル行為が撲滅することを願うばかりだ。