メゾネット最終_10142015

写真© alexandre zveiger-Fotolia

ひとくちに不動産といっても、そのタイプは様々だ。間取りの違いはもちろん、「ロフト付き」といった構造的なもの、また最近では「戸建賃貸」なども増えてきた。そんな数ある不動産物件のひとつに、「メゾネットタイプ」というものがある。これは、一つの住戸が複数階で構成されていて、住戸のなかに内階段がある賃貸物件だ。

このようなメゾネットタイプの物件は、果たして投資対象としてアリなのだろうか。賃貸経営のサポートを行い、自身もメゾネット物件を所有するオーナー・インテリジェンスの雨宮憲之氏に、その見方を伺った。

メゾネット物件は売り手市場

内階段があり、複数階での生活が可能なメゾネット物件。雨宮氏は「こういったタイプの物件は、数は少ないながらも昔からありました」と語る。

「昔は通常の住戸があるマンションのどこか一部、2階分がメゾネットになっていたり、あるいは間にある1つの階を上下階の部屋で半分ずつ使ったりという形が多めでした。それに対し、最近増えているのは、2階建の長屋のような低層物件を、縦に切った『連棟式』のメゾネット。すべての住戸がメゾネットで、上の階もないタイプです」

長屋のような低層メゾネットは、昔は「テラスハウス」「タウンハウス」と呼ばれたという。しかし、最近ではそれがメゾネットの主流となっているようだ。

このような構造の物件に住むと、戸建感覚を味わえます。これがメゾネットに住む人たちにとって最大のメリット。とくに小さい子どものいるファミリーなどは、周りへの騒音を気にする人が多いもの。そこで、上下の居住者がいない、縦方向の騒音を気にしないメゾネットを求めるケースがありますね」

このような理由があるため、メゾネットは「昔から一定数の根強いファンがいる」と雨宮氏は言う。「これは私の肌感覚ですが、ファミリーの3割近くは、メゾネットへの居住を希望するのではないでしょうか」と語った。

ただし、メゾネット物件自体の数は決して多くない。3割という少数派のニーズを満たすほどの供給量さえもないと言えよう。たとえば、大手賃貸ポータルサイトで、メゾネット物件の割合を検索してみたところ、JR目黒駅とJR川崎駅ではおよそ0.2%、JR浦和駅の徒歩20分圏内では2.6%しか存在しなかった。

あくまでこれは一例だが、他の地域でも、メゾネット物件の割合が爆発的に増えることはない。つまり、メゾネット物件に対する需要と供給のバランスで言えば、需要が多くなっているのは明らかと言える。そしてそれこそ、「メゾネットを投資物件と考える上で一番重要」と雨宮氏は言う。

「これは戸建賃貸にも言えることですが、通常のアパート・マンションが供給過多となっているのに対し、メゾネットは供給が少ないぶん、売り手市場です。適正なエリア、適正な条件の物件ならば、空室は埋まりやすいとも言えるでしょう」

雨宮氏によれば、メゾネット物件を探す人が多いのは、都心に近い郊外だという。そういったエリアで、適正な条件にすればあっさりと入居者が決まる可能性を秘めているのだ。

家賃が弱含みの中で「高値固定」できるのがメゾネット

需給バランス以外にも、メゾネットには投資家にうれしい要素があるようだ。雨宮氏は代表例に「入居期間の長さ」を挙げる。

メゾネットは戸建感覚で住めるので、入居者は定着感を得やすい傾向にあります。たとえば私の知るメゾネット物件(築39年)は、全3戸のうち15年以上住んでいるのが2戸、もう1戸も10年近く住んでいます。一度入るとなかなか退去されないのは、オーナーにとって心強いでしょう」

入居者の入れ替えがなければ、オーナーの手間やリスク、空室期間は少なくなる。そして何より「家賃の高値固定がしやすい」と雨宮氏。

「近年のデフレ経済の中では、ほとんどのエリアで、家賃相場は下落傾向にあります。しかも市場は飽和状態。つまり、入居者が入れ替わるたびに、家賃を少しずつ安くしている状況です。10年前の家賃のままで入居者を集めるのは、非常に難しいご時勢ですから。

しかし、一度入った人の入居期間が長ければ、その時代の高水準な家賃で運用し続けられます。入居中は基本的に契約時の家賃で更新していきます。メゾネット物件のオーナーにとっての大きなメリットはそこでしょうね」

家賃水準が下がっていく中で、10年以上前の高い家賃を維持できる。それは、入居期間が長くなりやすいメゾネットならではの強みだろう。

ただし、ここで注意点がある。それが、メゾネットにおける隣同士の騒音だ。先述のように、2階建の長屋タイプのメゾネットであれば、上下に居住者はいないため、縦の騒音はない。しかし、横には居住者が住んでおり、「隣同士の騒音に悩まされるケースが多い」と雨宮氏は指摘する。

「騒音に強いというイメージがあるからこそ、メゾネットでは横の部屋の騒音が盲点になりがち。そして、物件ごとで横の騒音にはかなり差があります。もしも、入居者が横の騒音に悩まされれば、短期間で出て行くのは確実。つまり、長期間入居のメリットが実現しません。ですから、メゾネット物件を見る際は、まず横の騒音チェックをすべきです」

横方向の騒音については、「遮音性効果の指標があればそれを参考にしてください。ない場合は、現在の入居者がどれくらい前から入居しているかを確認するのが一つの方法」と雨宮氏。もちろん、短期間の入居であれば、それはマイナス材料となる。

投資価値のあるメゾネットを探す方法とは?

売り手市場であるため、騒音面などの構造的問題がなければ、入居期間が長くなりやすいメゾネット。こう聞くと、メゾネット物件は投資対象として頼もしい気もする。だが、決してそう甘くはないようだ。雨宮氏が説明する。

「確かにメゾネット物件は需要の方が多い状況ですが、全体のニーズで見れば、求める人はあくまで少数派。だからこそ、物件の数が少ないとも言えます。メゾネットで確実に儲かるなら、もっと数は増えますから。つまり、やみくもにメゾネット物件に投資しても、失敗する可能性があるということ。

ですから基本的には、通常のフラット物件を探しつつ、その中で偶然メゾネットを見つけたら『条件次第でアリ』と考えるべきです」

では、その条件とは何なのか。雨宮氏は「まずは騒音の心配がないか。そこをクリアしたら、次にエリアとしての条件を満たしているか周辺調査で確認します」と言う。

「たとえばメゾネット物件を見つけたら、その周辺に別のメゾネット物件があるか歩いて調べてください。そして、もし他にメゾネットがあれば、そこの空室状況と他の通常物件の空室状況を比較してください。メゾネットの方が低い空室率の場合、このエリアでニーズはあると考えられます」

まずは、周辺状況でメゾネットの数と空室状況を把握すること。そこで、その地域のメゾネットに対するニーズを大まかに探ることが欠かせないようだ。その後は「不動産屋を回って聞き込みを行なうべき」と言う。

「地元の不動産屋と客付け専門の不動産屋を回って、メゾネット物件を探す人がこのエリアにどのくらいいるかを調査します。さらに、自分が検討しているメゾネット物件を見せて、『家賃がいくらなら貸せる自信があるか』を聞き込んでください。何件も聞いて、不動産屋の提示した家賃の平均が、自分の想定利回りを満たすか調べるのです」

繰り返しになるが、メゾネットは物件数自体が少ない。そのため、通常物件のように、周辺物件の家賃を見ながら「ヨコ比較」で家賃設定をすることはできない。となると、不動産屋を回って、適正家賃を見極めるための調査をしなければならないのだ。もしも、これらの調査をした上で、一定のニーズが見込め、さらに自分の想定利回りを上回るメゾネット物件があれば、それは「投資対象としてアリ」と言えるだろう。

「メゾネット物件の数は少ないですから、投資物件としてそればかり探すのは非効率。ただ、通常物件を探す中で良さそうな物件に出会ったら、今のような作業を面倒くさがらずに行うこと。そうすれば、投資価値の高い物件が見つかるかもしれません」

数は少ないものの、ケースによっては重宝すべき投資対象となりそうなメゾネット物件。選択肢の一つとして頭に入れておけば、どこかで良い出会いがあるかもしれない。

雨宮憲之さんプロフィール

mezonet_amamiyasamaオーナー・インテリジェンス(http://www.owner-i.com) 代表。学習院大学法学部卒業、米国アメリカン大学大学院修了。地方局アナウンサーや毎日新聞記者を経て、賃貸経営コンサルタントに。自身も4物件を所有しており、過去8年間の入居稼働率は96%の実績を持つ。

テレビや雑誌などでも活躍。著書に『もう会社に頼らない! プラス300万円を“気楽”に稼ぐ不動産投資術』(ソフトバンククリエイティブ)、『金持ち大家さんがこっそり実践する 空室対策のすごい技』(共著・日本実業出版社)などがある。