1千万の悲劇最終_01252016

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はじめまして、南部と申します。この度、楽待コラムの執筆をすることになりました。私は地方銀行に入行し、営業統括部門の責任者として経験を積んで参りました。現在は、富裕層を対象に資産運用のコンサルティングを行っております。

銀行員である他、1級ファイナンシャル・プランニング技能士、宅地建物取引士の資格を保有しているため、皆様のお役に立てる情報をお届けできるのではないかと考えております。


私は、日本経済がバブル景気に沸く時代に都内の私立大学で大学生活を謳歌したのち、金融機関に就職した。社内での仕事ぶりはごく平均的なレベルで出世も人並み。それでも、すでに40歳では年収1000万円を超えていた

その一方で収入の増加と同時に自動車や自宅、教育費とさらには保険など次々と出費は増加し、豊かさは実感できずにいる。預貯金は増えるどころか、むしろ最近では可処分所得が減少していると漠然と感じている。

年収1000万円は多くのサラリーマンにとって目標であり、憧れだろう。このステージに昇ることを目標に自己研鑽に励み、努力し、時には家族をも犠牲にし、理不尽も受け入れてきたに違いない。

ところが、ようやく手にした年収1000万円には大きなワナが待ち構えている! 今や、単純に年収1000万円を喜べる時代ではなく、年収1000万円だからこそ対応が必要となる時代なのだ。

こんなに増える! 年収1000万円の負担

国税庁の民間給与実態統計調査(2013年分)によると、会社員などの給与所得者は約4600万人。年収1000万円超~2000万円以下の給与所得者は約166万人で4%弱にすぎない。その点では年収1000万円は多くのサラリーマンにとって憧れあることに間違いないだろう。

割合は全体の4%にもかかわらず、所得税額は約2兆2700億円と全体の27%を支えているという計算になる。1人あたりの所得税額は137万円。03年の111万円と比べ10年で23%も負担が増えている。

ちなみに、年収500万円超~1000万円以下の税負担は約24万円とほぼ横ばいであり、年収1000万円以上の層の負担が増していることがわかる。

そして、今後もさらに増税が続くことになる。15年、年収1500万円超では給与所得控除は一律245万円だったが、16年には年収1200万円超は一律230万円に、17年には年収1000万円超は一律220万円へと、控除額が段階的に引き下げられていく。年収から所得控除を差し引いた額が課税の基礎になることから、サラリーマンが納める所得税や住民税は実質増税になるのだ。

また、政府は少子化対策に力を入れているにもかかわらず、夫婦と子供2人の世帯で年収960万円(所得額736万円)を超えると、これまでの手当の支給を受けることができなくなった。

しかし、これにはカラクリがあり、所得制限の基準となる年収額は、世帯の合計ではなく、「生計の中心者」の収入となる。そのため、夫の年収1000万円、妻は専業主婦で子ども2人という家庭では手当は3分の2カットされるのに対し、夫婦それぞれに500万円の収入がある共働き世帯なら満額もらえることになる。

他、高校無償化制度でも年収1000万円は影響を受けている。2014年4月に入学する学生から、世帯年収が910万円以上の生徒については無償化の対象外となった。実は2011年から、16から18歳の子どもがいる人が受けられる特定扶養控除が減っている。その対応として作られた制度だったが、結局負担だけは増えてしまったというわけだ。

サラリーマンの多くは所得税や住民税を源泉徴収されている。つまり、年収1000万円に対するこだわりはあっても、それに伴いどれだけ税負担が増えたのかということについては無関心になりがちだ。だからこそ、ターゲットにされているのだ。


サラリーマンの家計は脆弱

1000万円を超える収入があるのに、なぜかお金が貯まらない。年収1000万円の多くのサラリーマンはそう感じているはずだ。先に述べたように、知らず知らずの間に税負担が増えていることも一因だが、根本的な問題を抱えている年収1000万円世帯が非常に多いことが挙げられる。

人より稼いでいるから、少しくらい贅沢しても大丈夫」多くの人がそんな甘い誘惑に負け、支出がだんだんと膨らんでいくのだ。

子供の教育費が聖域化しており、無秩序に教育に関連する支出が増加している世帯も多いのではないだろうか。家や自動車、さらに保険など大きな固定資産に対する節約意識が希薄な世帯も多く見られる。また、40代以上のいわゆるバブル世代は再びバブルの恩恵を受けられるようなことは無いと頭では分かっていても、贅沢をなかなか止められないというケースがあるようだ。

このような贅沢は少しずつ家計を圧迫することになる。かつては年功序列と終身雇用により守られていた1000万円世帯も今後はその保障がない。「ホワイトカラーエグゼンプション」、いわゆる「残業代ゼロ」制度は脆弱な1000万円世帯の家計圧迫に拍車をかけることになるかもしれない。このままでは1000万円世帯の老後には破綻が訪れる可能性が高いのだ。

余裕のあるうちに不動産投資を!

こうした1000万円を超える年収のあるサラリーマンこそ不動産投資を検討すべきだろう。ワンルームマンション投資でも良い。とにかく、給料以外の収入を得られるようにすることが大切だ。

なぜ不動産投資を勧めるかというと、不動産投資にはさまざまなメリットがあるからだ。特にサラリーマンの場合には不動産所得の赤字を給与所得から控除できるというメリットがある。

不動産投資を行えば、その所得は当然課税されることになるが、赤字をうまく利用することが可能となる。借入金の返済も出来ないような赤字は論外だが、不動産収入から減価償却費や諸経費を控除すれば赤字になるよう、うまく物件を選択すると良いだろう。

しかし、次第に減価償却費も減少していくため損益通算の効果は薄くなってしまう。そのため、どのタイミングで不動産投資を始めるのかも重要なポイントになる。給料がピークを迎える時期や、退職など今後のライフイベントと関連づけて不動産投資を考える必要があるだろう。

例として、物件取得に融資を利用すれば、生命保険代わりにできる。多くの場合、物件取得の融資には団体信用生命保険への加入が条件となる。

万が一の場合には保険金により借入金を返済するための保険だが、これによりローン残債はすべてなくなり、遺族が物件を手にすることができる。本人の生死に関係なく不動産収入が入ってくるため、生命保険代わりとしても不動産投資は有効というわけだ。

不動産投資には長期的な計画が必要となる。物件の周辺環境や景気動向によっても収益は大きく変わってくるだろう。細かな計画と長期的な収支計画が必要なことは言うまでもないが、退職が間近に迫ってから不動産投資を検討しても、もはや大きな効果は得られない可能性がある。

具体的には収入がピークを迎える次期に、できる限り不動産所得の赤字が多くなるようにして節税効果を最大限に利用したい。そして、退職後には不動産所得で年金収入を補うことができるよう退職金による借入金の繰上返済なども検討すべきだろう。そのため余裕があるうちに検討することが肝心といえる。