おとり物件最終_10142015

写真© Jakub Jirsák-Fotolia

収益物件を探していると、ネット広告や検索、チラシなどに出てくるけれど実際には販売されていない幽霊のような物件に出会ったことはないだろうか。いわゆる「おとり物件」と言われるものだ。消費者庁の「不動産のおとり広告に関する表示」(昭和55年公正取引委員会告示第14号)によると、自己の供給する不動産の取引に顧客を誘引する手段として行う次のような表示を不当表示として規定している。

(1) 取引の申出に係る不動産が存在しないため、実際には取引することができない不動産についての表示(例…実在しない住所・地番を掲載した物件)

(2) 取引の申出に係る不動産は存在するが、実際には取引の対象となり得ない不動産についての表示(例…売約済みの物件)

(3) 取引の申出に係る不動産は存在するが、実際には取引する意思がない不動産についての表示(例…希望者に他の物件を勧めるなど当該物件の取引に応じない場合)

ちなみに事業者が「不動産のおとり広告に関する表示」に規定されている不当表示を行っていると認められた場合は、消費者庁長官は当該事業者に対し、措置命令などを行うことになる。

このおとり広告は、物件を探す側としての金銭的な実害こそ少ないかもしれないが、時間が無駄になるなど、非常に迷惑な存在である。そこで今回は、不動産会社の元社員に聞いた、不動産売買におけるおとり物件と、その実態についてご紹介する。業界関係者だからこそ語れる、おとり物件を見抜くコツなども必見だ。

登場いただくのは現在、不動産コンサル業を営む、元大手不動産会社(売買・仲介・管理)社員の並木和男さん(仮名)。

呼んで字のごとく、まさに「おとり」

――そもそも、いわゆる「おとり物件」は、どんな目的で広告されるのですか?

「集客目的ですね。例えば広告を出したおとり物件に、内見したいと問い合わせが来た場合、『現状を確認して、折り返しご連絡いたします』と言って、とりあえずその方の連絡先を聞いておくんです。

それであとから、『さきほど、売れてしまったんですよね。ところで当社には他にもこんな物件がありますよ。一度ご来店ください』と言い、来店を促すんです。本当に売れたかどうか確認するのは、やはり難しいですから、買い手としては対処のしようがありません……

――なるほど。集客率を上げて、さらには他の物件を紹介することで成約に結びつけようとするわけですね。

「そうですね。まさに『おとり』につられて来るお客さんを狙っているんですよ。他のやり方としては『直接、ご来店いただかないとお話できません』と、誘導する大胆な手口もあると聞いています。

またちょっとおとり広告とは性格が違うかもしれませんが、こんな例もありました。立派な外構や整備された庭のある完成後の予想図が掲載された広告で、それは周辺相場からは明らかに安い価格に設定された分譲物件でした。

ですが実際には、外構工事や造園は追加オプションとなっており、その価格には含まれていなかったんです。完成前の物件の場合は、あくまでも予定である旨をその広告に明記しなければいけないのですが、そういった記載はありませんでした。このように、安い価格に期待して問い合わせをしてくるお客さんを狙うパターンもあります

――実際どれくらいのおとり広告が市場にはあるのですか?

「賃貸に比べれば少なく、またかつてよりも減っているようですが、売買物件の場合は、だいたい2割ほどはおとり広告かもしれません」