オーナーチェンジ物件最終_11202015

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不動産投資を行う際の課題の一つに空室リスクがある。高額の資金を投下して物件を購入したのに、空室のままで収益が発生しない状況が続くのは厳しい。最悪の場合、賃下げによって空室を埋めようとし、収益が圧迫されるケースもある。

そう考えると、既に入居者がいる状態で購入できるオーナーチェンジ物件は魅力的だ。しかし、室内を見ることができないというデメリットがあるのも事実。入居者がいる状態で内見する裏ワザはないのだろうか。サラリーマン大家であり、現在46室の区分マンションを保有する芦沢晃さんに話を伺った。

オーナーチェンジ物件のメリット・デメリットは?

オーナーチェンジ物件とは、既に入居者がいる物件を現オーナーが、次のオーナーに売り渡す物件のことを指す。つまり、オーナーだけが変わるということだ。

売る側としては空室物件を実需顧客へ売却するようなフルリフォームなどはせず、現状有姿の契約条件で売却でき、現金化できるメリットがある。また、売主が個人の場合、瑕疵担保責任は通常3カ月間。入居者が住んでいると、瑕疵があれば家主へ連絡が入るため、実際に売主が瑕疵リスクを負う確率も低い。

また、買う側としては購入した瞬間から家賃収入を得られるのは大きな魅力だろう。空室リスクのない状態で購入でき、しかも収益が約束されているという嬉しい取引だ。

しかし、区分マンションのオーナーチェンジ物件の場合、オーナーチェンジであるがゆえに、100%室内を確認できない。一棟アパートやマンションであっても、満室であればこの条件は同様だ。つまり、事前に内見できないという欠点もあるのだ。

買った瞬間から家賃が入るからと安易に購入し、購入後に修繕で思わぬ出費に直面する恐れもある。なんとかして部屋を内見する裏ワザはないのだろうか。


芦沢さんは「結論から申しますと、現入居者の方がいらっしゃるので、特別にオーナーの了解をいただき、入居者を訪ねてお願いし、見せていただける以外は、部屋を直接見ることはできません」とバッサリ。

色々な寝技をかけて部屋に立ち入らせてもらう方法は、誰もができることではない。やはり直接見ることはできないようだ。しかし、物件のデータを見ることで、部屋の状態を把握する方法があるという。

物件データを読み解けば、室内状況が見えてくる

「最も一般的で確実な方法は、売主が自ら『専有部修繕履歴』を保管していて、買付時にそれを提供してくださるというもの。それがあれば解決です。しかし、日本の中古市場の商習慣では、物件のインスペクション情報についての明確な決まりがありません。

とくに賃貸物件の場合はオーナーでも室内はわからないし、履歴もなく、いつ何をどうしたかも忘れてしまっていることも多い。

ただし区分の場合は、物件の管理がシステム化されているケースがほとんどです。例えば、エアコンや給湯設備をいつ入れ替えたのか、どのくらいの規模の修繕をいつ行ったかなどの詳細データを管理会社さんから入手すれば、部屋の状況は掴めます。また区分は、一棟全室ほとんど同じか、類似した間取りなので、ネット上の同棟他室の空室募集情報などで、おおよその内装は図面も含めて確認できます」

大切なことは、部屋の歴史と現状を知ることだと言う。直接見ることができなくても、データを見れば一目瞭然というわけだ。とはいえ、専有部内の内装履歴の詳細データは、専有部管理会社へお願いすれば、全て入手できるわけではない。

区分の場合、共用部と専有部は別の管理会社であることが多く、とくに専有部はオーナーの意向で自由に管理会社を変えることができるからだ。

一方で、新築時から業者が、建物管理から専有部管理まで長年一貫して行い、場合によってはサブリース(家賃保証)で20年以上も任せきりのオーナーもいるという。

その手の物件であれば、専有部管理会社は新築以来、自社系列の会社が販売したわけだから、専有部内のデータに関して全ての維持修繕履歴を持っているということだ。

つまり、仮に過去にオーナーが変わっていても、管理システムが機能していれば、物件の履歴を知ることができる。さらに、芦沢さんは別の方法も教えてくれた。

リフォーム会社の方に部屋の様子を伺うという手もあります。とくに、上記のように新築時の系列会社でずっと管理されている物件は、内装業者もその系列である場合が多いです。

大抵は決まったリフォーム会社がずっと同じ物件に出入りしているので、以前の入居者が退去した後の保守修繕時などに、その部屋に入ったことがある可能性があります。専有部管理会社が今は変わっていたとしても、内装業者に尋ねると、過去の履歴がわかることもあるわけです」

このように、聞かなければ知り得ない専有部修繕履歴が隠れているので、管理会社をはじめとした関係者との日頃からのコミュニケーションが必要不可欠のようだ。

【修繕履歴では、ココをチェック!!】

□ 壁クロス、床材交換時期
現入居者が将来退去する時に、経過年数が明確になっていると、費用負担割合を交渉できる材料になる(たとえば交換後わずか1年で退去時、自然劣化であり得ないほど傷んでいるなど)。

□ エアコン、給湯器等の付帯設備の入れ替え時期
通常、メーカーでの保守部品の維持は7年間で、以降は修理不能となる。物理的な経年劣化を考慮しても10年が交換の目安だろう。

□ 特殊仕様改造がないか
同棟他室にはない仕様に改造している履歴はないか? あればいつ、どこを、どのように改造しているか?(たとえば、クローゼットを改造してバス・トイレを分離した、ガスエアコンを電気エアコンに交換し、配管・配線類も合わせて改造した、室内防水パンを新設し洗濯機置き場を追加した、ベランダまで水道管を延長して洗濯機置き場としたなど)

□ 特殊なトラブルはないか
専有部内に起因するトラブルに関して、設備類で特別なトラブル対応をしていれば、いつ、どの業者が、どんな対応をしたか?(たとえば、床下漏水が発生し、埋没配管を破棄して、室内配管を新設した、ユニットバスから漏水し、ユニットに対してメーカー標準仕様から現場で個別に特殊な改造を手加工で施したなど)


現地調査もマスト! 共用部から見えてくる管理体制

ただし、管理システムから得たデータを用いる方法は使えるが、購入したい物件は自分の目で見ておくことも必要だと芦沢さんは強調する。部屋の様子だけでなく、物件全体の様子をつかむことを忘れてはいけない。これはオーナーチェンジ物件に限らず、不動産投資を行う上で外せないTo doだ。

共用部を見ると、物件の管理体制を把握できます。エレベーターの内部が汚れている、全体的に掃除が行き届いていない、築年数の割に傷みがあるなどの場合は、管理が行き届いていないと判断できます。

共用部の管理がおざなりになった物件を購入すると、その後の修繕で出費がかさむことが予想されます。たとえば鉄製階段であれば、5年ごとでの定期的な修繕で100〜200万円が必要になります」

【現地調査では、ココをチェック!!】

□ エントランスの状態

□ ゴミ置き場の状態

□ 全ての掲示物
建物管理の連絡先など、多くの共用部管理情報が含まれている。

□ 屋上防水の状態
築年と劣化具合から管理状態と次回修繕必要時期がわかる。

□ 共用部床シートまたはコンクリートの状態
屋上が見られない場合は参考にできる。

□ ライフライン設備一式
エレベータ、変電室、貯水槽、ポンプ、通信放送インフラ設備。購入後、どれか一つ壊れれば、即(管理組合として)数百万円は吹き飛ぶ。管理人にお願いして鍵を開けてもらえば、通常立入禁止箇所を調査できる場合もある。

□ 駐車・駐輪場
料金の有無とその会計処理方法。(組合財源の検討や入居者への料金案内に役立つ)

□ 道路付や周辺地境
区分でも一部借地や接道不適合物件もある。拡張計画道路に接道している場合は、セットバック計画地なども調査。

□ 隣接地都市計画
隣接の空き地に将来、いきなり競合物件が建ったり、高層物件で日影になったり、物件の付加価値たる自慢の眺望が皆無になることもある。

□ 現場でなければわからない五感情報
騒音、悪臭、採光、振動、眺望など。近接工場からの騒音、悪臭。繁華街からのネオンサインで夜中もチカチカ。道路向かいの商店の宣伝呼込みがうるさい。近隣に大型車両の出入りが常時あり、走行振動が絶えない。物件自慢の最上階ルーフバルコニーが隣接物件から見下ろせて丸見えなど。

□ 共用部の植栽
綺麗に整備されている場合、積立修繕金が潤沢である場合が多い。逆に自転車置き場等に改造された形跡がある場合、資金源とした経歴がある。これらの逆パターンもあり得る。

□ 地域の都市計画
現地を見ると同時に将来のエリア開発予定などをいろいろな情報源から調査してみる。(新路線 or 新駅の計画有無、大型施設や企業・学校などの進出&撤退など)

では、現地で確認して、もし管理がおざなりだった場合、購入はあきらめた方が良いのだろうか。

「そんなご質問を時々いただきますが、一言で申し上げれば、未来を見通して輝いて見える物件でしたらOKという答えになります。

区分の場合、修繕積立金というものがあり、売主を含め、その物件の全オーナーたちが新築以来、積立ててきた修繕積立金を管理組合が保有しています。その金額が1室当たり100万円以上貯まっていれば、大規模修繕はいつでも可能です。これだけの費用をかけると、新築と見違えるほど綺麗に生まれ変わります。

もう一歩踏み込んだ答えは、上記がなされていない、そのままの状態でも『買い』と判断できる物件でしたらOKでしょう。その基準は、周辺の街並みとのバランス、つまり立地次第です。別の言い方をすれば、将来にわたる賃貸需要が現状で推移できること。調査した稼働率がほぼ満室で推移しており、過去から現在までの家賃下落率が、ご自身のシミュレーションの許容範囲以下であれば買いです」

つまり、あえてお金をかけてリフォームをせずとも、今のままの状態で賃貸付けできている状態、というわけだ。それが未来も続くであろうと予想できれば「買い」だと芦沢さんは話す。

「例えば、管理状態が悪くて狭いバストイレ一体型の1Rでも、吉祥寺駅直近なら住もう、渋谷駅近なら事務所として使おう、というニーズは将来も絶えないわけです。

反例を挙げると、八王子駅からバス便の1Rだと、特殊事情がある物件(すぐ横の病院が新築以来ずっと看護士寮として借上げてくれているなど)を除き、よほど入念に管理しなければ賃貸付けは難しいですね。これは、数多くの物件の経年変化を自らトレース体験してみると見えてきます。場数を踏んで、将来を見抜く力を養ってください」

入居者が既にいるからこそ、購入時から収益が入るオーナーチェンジ物件。現入居者がいて内見ができないからと諦めるのではく、上記のようなチェックポイントを確認することで、これから購入する物件・部屋がどのような状態にあるのかを事前に把握してみてはいかがだろうか。

芦沢晃さんプロフィール

不動産、金融とは全く無縁のサラリーマン・エンジニアだったが、自宅の値下がりで自己資金1500万円全てを失う。

借金が残り売却できない事実に直面したのを機に、不動産実践研究の重要性に目覚める。収入の多角化を目指し、ワンルームマンションを区分所有し、投資を行っている。