決め物件最終_11132015

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賃貸仲介業者の営業マンが、入居希望者に物件を紹介する際に欠かせないのが内見。入居希望者に複数の物件を見比べさせて、最終的にどの物件にするか選択してもらうために行うのだ。

その際にいわゆる「決め物件」といわれる、営業マンがイチオシの物件を内見ルートの最後に入れて、成約に結びつけるという手法を採用することがあると、まことしやかに噂されている。その噂は本当なのだろうか?

そこで現役の仲介業者の営業マンに、不動産業界における「決め物件」の実態について聞いてみた。登場するのは都内の仲介会社に勤務する遠藤成明さん(仮名)。賃貸物件を中心に、年間100人以上の入居希望者を内見に連れて行くベテラン営業マンだ。

ほとんどの営業マンがやっている

――ずばりお聞きします。「決め物件」というのは本当に存在し、内見ルートのなかに巧みに組み込んでいるのですか?

「はい。営業テクニックの1つとして、私たちの業界では当たり前の存在ですね。公然の秘密とでも言いましょうか、別に営業マンでなくとも業界事情に詳しい人ならみんな知っていると思います。結果を出されている不動産投資家の方なら、当然ご存知でしょう」

――どの不動産業者でも、営業マンは日常的にそのテクニックを使っているのですか?

「そうだと思います。私も新人の頃には先輩から教えてもらいましたし、当然後輩にも指導しています。もちろん、すべての仲介業者がそうしているとは言い切れませんが」

――テクニックの1つということは、そうすることで契約まで結びつくことが多いのですか?

「そのとおりです。当たり前ですが、私たちもボランティアで内見にご案内するわけではありません。多い時では1日に4人以上のお客さまをご案内することもあります。そんなとき、いかに効率的に成約までたどり着けるかが鍵になるんです。当然、少ないご案内回数で成約までいければ、当社としては費用対効果が高いということになりますから」

――では実際には、どのように決め物件を内見ルートに組み込んでいるのですか?

「営業マンそれぞれによって、またはお客さまの状況やご希望によって異なりますが、私の場合はだいたい『見せ物件』、『ボロ物件』、『決め物件』というような順番で行います。おそらくもっともポピュラーで正統派の組み立て方ではないかと思います」

遠藤さんに具体的な方法を聞いたのでまとめてみた。

○1件目「見せ物件」
予算より高めの物件。築浅で客の希望より広いことが多い。入居希望者のテンションを上げるために、少し豪華な物件を紹介する。

○2件目「ボロ物件」
予算内の家賃だが古くて汚かったり、狭かったりする物件。入居希望者は、1件目で盛り上がった気持ちが現実に引き戻され、がっかりする。

○3件目「決め物件」
家賃も間取りも周辺環境も、入居希望者の希望に極力近い物件。

 

「要は、1件目で期待値を上げ、2件目で落とし、そして3件目で、これくらいがちょうど良いかな、と入居希望者に思わせるための演出なんです。言い方は悪いですが、印象操作を行って成約へと誘導する感じです。

もちろんすべてのお客さまがこれで、契約を決めるというわけではありませんが、何も考えずにご案内するより成約率は高いと思います」


「決め物件」は条件に応じて臨機応変に判断

――違うやり方もあるのですか?

「そうですね。営業マンによっては『ボロ物件』、『ボロ物件』、『決め物件』という順番でまわる人もいるようです。また、お客さまの属性や状況にもよって変わります。例えば、何らかの理由ですぐにでも新居を決めたいという方は、ご予算より多少高めな『見せ物件』のような部屋でも成約することが多いですね。そういう時は、少し豪華な部屋を『決め物件』としてご案内しています。

つまり私たちは、お客さまのご予算、ご希望、そして状況に合わせて柔軟に『見せ物件』、『ボロ物件』、『決め物件』を決定しているのです。そのためには、常に最新の物件情報を頭の中にインプットしておき、さらにそれを的確に判断することが求められます。優秀な営業マンほど、そのような判断を瞬時に行うことができるのではないでしょうか」

――極端なことを言うと、狭くて古い物件でも、お客さまがそういった物件を希望しさえすれば、成約までいくこともあるということですか?

「はい。需要と供給がマッチすれば当然、成約可能です。ケースバイケースで私たちも判断していますから」

――他には、なにか内見ルートを決める時のポイントはありますか?

「私たち仲介業者は通常、成約すれば仲介手数料の他に、オーナーさんから成功報酬として広告料をいただけます。この額は任意で決められますので、より高い広告料をいただけるオーナーさんの物件を積極的に紹介する業者もいます」

――遠藤さんもそういう物件を紹介することがあるのですか?

「正直、無いとは言えません。ただ、最終的に物件を決めるのは入居希望者です。あまりにも条件からかけ離れている物件は成約までいけませんよ。条件にほど近く広告料が高めでしたら、『決め物件』として当然プッシュしますけどね(笑)

また、オーナーさんが自主管理されている物件の場合に気をつけなければならない点があります。例えば、そういう物件へ夕方以降に内見のご案内に行った際、廊下の灯りが切れていたりするとお客さまの印象は悪くなります。管理が行き届いていないと、せっかく条件にマッチする『決め物件』としてご案内しているのに、敬遠されることもあるんです。

偉そうなことを言うようですが、空室が多くて悩まれているオーナーさんは、どうしてご自身の物件が『決め物件』として扱われないのか、一度考えたほうがいいかもしれません」

というわけで、「決め物件」「見せ物件」など、物件をジャンル分けして内見ルートに組み込む手法は、やはり存在することが分かった。不動産投資家としては、いかに自分の収益物件が「決め物件」として認識されるかが、健全なキャッシュフローを作るうえでの鍵になる。行き届いた管理はもちろん、仲介業者との良好な関係構築など、「決め物件」にしてもらえるための努力が必要となりそうだ。