賃貸物件でありながら、入居者がペットと一緒に暮らせる「ペット可物件」。一定の需要はあるものの、まだまだ不動産市場で数が少ないのが実情だ。
大家としては、ここに目を付け入居付けに繋げたいものだが、果たしてどれだけ効果があるのだろうか? そこで、現役の大家3人にペット可物件と不可物件の現状を聞いてみた。
空室対策の切り札? ペット可物件にする大家の狙いとは
ペットは室内で飼育するケースが大半であることから、爪研ぎでの内装へのダメージは避けられない。また、部屋の臭いに対する懸念もある。その分修繕費も高くつくため、ペット可物件にすることを躊躇する大家も多い。
それでもペット可物件へ転向するのは、やはり「空室対策のため」と3名とも口を揃える。ペット可物件にする最大のメリットは、賃料を下げることなく物件の価値を高めて空室対策が行えることだ。
「必ずしも空室が埋まるとは限りませんが、ペット可物件とすることで客付けがしやすくなるため、入居率は上がる可能性が高いと言えます」(大家A)
では実際に、入居率や賃料収入にはどのような変化があったのだろうか。
「私の所有する物件の場合、原状回復のリスクヘッジとして敷金を3カ月分いただいています。賃料については1万円を上乗せしています」(大家B)
退去後のリフォーム費を勘案し、ペット不可物件よりも敷金を高くするほか、賃料も高く設定していると言う。一方で、こんな意見もある。
「確かにペット可物件はお客さまへのアピール力がありますが、だからといって賃料を高くしても良いとは言い切れません。私の所有物件では、敷金や共益費を高く設定して対応しています」(大家C)
「賃料を上げて募集をかけたことがありますが、却って問い合わせが少なくなりました。すぐに賃上げというのは難しいと思います。賃上げは都心では可能性はあっても、地方では難しい印象を受けます」(大家A)
このように、ペット可物件はレアだからこそ価値があり、入居者への訴求力があることは認めながらも、賃上げに対して慎重な姿勢を見せている。物件エリアの相場状況をよく知った上での対応が好ましいと言えるだろう。
ペット可物件はマンション・アパートよりも断然戸建て!?
では、所有物件をペット可物件にする上で、抑えておきたいポイントはあるのだろうか。
「ペット可物件に稀少価値があることは事実ですが、入居者が付くかどうかは物件次第です」と大家3名は言う。
例えば、一棟マンションやアパートよりも戸建てのほうが、ペット可物件として貸し出しやすいそう。というのも、ペット可物件はファミリー層に人気が高いため、広い間取りの戸建てが好まれるからだ。また、近隣トラブル防止の観点でも戸建ては魅力的だといえよう。
マンションやアパートの場合、空室対策としてペット可に転向する際には、既存の入居者に対し配慮する必要がある。同じ敷地内でスペースを共有するという共同住宅の特性から見ても、鳴き声や臭いなどがトラブルを引き起こし、最悪の場合は退去という事態になりかねない。
ペット可物件を新規で購入する場合の注意点は?
最後に、ペット可物件への転向ではなく、新規で購入を検討している人向けに、どのような点に気をつける必要があるかを尋ねた。ペット可物件を購入する際には、物件の管理体制をしっかりと見ておくことが大切だと3名の大家はアドバイスする。
「規約が明確に定められ、どんな動物が何匹買われていたかなど、これまでの状況を知ることも必要です。購入した場合、修繕費用がどれくらいかかるのかを、過去の情報を元に シミュレーションしてください」(大家C)
動物でも犬と猫では習性が異なることから、犬・猫どちらか一方をお断りとすることで、対策を行う物件もある。
とはいえ、購入検討物件の内見をしようとしても、入居者がいる場合は内見ができない。しかし、このような状況でも、管理が行き届いた物件であれば、データを見ることで部屋の状態を把握することが可能だ。
また、こんな見方もある。
「過去に水道トラブルがあったかを調べるのも手です。ペットをバスルームで洗って、排水管が毛で詰まるトラブルがなかったかを知るためです。
上層階で水道トラブルが起こると、下層階の住民に影響が及ぶこととなり、早急な対策が必要になります。これが思わぬ出費になるので、購入前にチェックすることをおすすめします」(大家C)
物件がどのような管理をされているかは、物件購入の判断材料になる。いずれにしても、購入には慎重な姿勢が必要だ。ペット可物件だからといって、購入を急がないようにしたい。
お目当ての物件が立地する場所のニーズをつかみ、ペットを飼育したい人が多く収益が見込めると判断したときに購入するなど、購入前にしっかりとした戦略を持つことが重要だ。
ペット可物件の数はまだまだ少なく、不動産市場において高い価値を持っている。一方で、近隣トラブルや他の入居者への配慮など、リスクもある。
大切なことは、ペット可物件と不可物件をバランス良く所有することだろう。そのためには物件エリアの状況や相場、ニーズを的確に掴むことが必要になってくるだろう。
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