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みなさん、こんにちは! 不動産投資専門税理士の叶です。お金を残す不動産投資コラム。6回目となる今回は、不動産を運営しているのに確定申告をしていない、いわゆる無申告状態のペナルティーについて解説します。
意外と多い無申告者?
サラリーマンの方は医療費控除や住宅ローン控除を使うとき以外は、あまり確定申告について気にすることはありませんよね。なぜなら、勤め先が毎月、源泉徴収として税金を給与から差し引き、年末に再計算して、確定申告の代わりに年末調整してくれているからです。
でも個人で事業をしている人は、自分で確定申告をする必要があります。ただ、「面倒くさい」とか「税金を払いたくない」などの理由で、無申告の人もたまにいらっしゃいます。
スナックやクラブなどの飲み屋さん、大工の一人親方などは昔から申告しない人が多い傾向がありますが、最近ではせどりやネットオークションなどのネットビジネスをしている個人も無申告状態の人が増えているようです。
事業を始めても10年継続できる人は1割程度といわれていますから、そもそも赤字であれば申告してもしなくても税金は発生しません。また、その稼ぎがお小遣い程度であれば、所得控除などを考慮すると税金が発生しない場合もあります。
でも、ある程度の稼ぎがあって、利益が出るようであれば、税務調査に入られたときに、かなり重いペナルティーを科されることになります。法人の場合は、法務局に登記されるので税務署も開業を把握することができますが、個人事業の場合は、開業届出書を出さなければ、しばらくの期間、把握できないことも多いようです。
不動産の運営であれば、不動産登記がされるので、無申告の人は少ないように思えますが、昔から不動産を運営している人の中には、たまに無申告状態の人もいらっしゃいます。では、無申告だと、どんなペナルティーがあるのでしょうか?
税金の時効は何年?
無申告のペナルティーを解説する前に、税金の時効について知っておきましょう。税金の時効が来ると、納税義務が消滅するので、無申告でも税金を払わなくてよくなります。税金の時効は、ケースによって3年、5年、7年の3つがあります。
まず、申告書を期限内に提出した場合は、原則として申告期限の翌日から3年で時効が到来します。平成24年分の所得税の申告であれば、翌年平成25年3月15日が申告期限ですので、その翌日から3年後となると、平成28年3月15日で時効になります。税務調査が開業してから3年後にくることが多いのは、この3年の時効が関係しているのでしょうね。
次に、申告書を期限内に提出していない、いわゆる無申告の場合は、原則として申告期限の翌日から5年で時効が到来します。ただし、平成16年以降の贈与税については、時効が6年になっています。
最後に、申告書を期限内に提出していても、また無申告の場合でも、脱税の意思があったと認められる場合は、時効は申告期限の翌日から7年に延びます。
上記3つは税金の話。これとは別に脱税の金額等によっては、刑事告発される場合があり、こちらの時効は5年となります。ただし、途中で督促状が送られてくると時効は中断されて、督促状の送付日からまた時効までの期間が始まります。
刑罰を受けることも? かなり重い無申告のペナルティー
では、無申告のまま税務調査があって、税額が発生した場合のペナルティーにはどんなものがあるのでしょう。まず当然のことながら、利益が発生している場合は、それに対する税金(本税)が発生します。
そして、納税が遅れたことに対する罰金として、無申告加算税が課されます。この無申告加算税は、本税に対して、50万円までは15%、50万円を超える部分は20%掛かります。ただし、税務調査を受ける前に自主的に期限後申告した場合は、5%になります。
次に納税を延滞したことによる利息として延滞税が課されます。こちらは、納付期限から2カ月以内であれば原則として年7.3%が掛かりますが、平成27年1月1日から平成27年12月31日までの期間は年2.8%になっています。このパーセンテージは、毎年変わります。
納付期限から2カ月を超えた期間については、原則として年14.6%が掛かりますが、平成27年1月1日から平成27年12月31日までの期間は年9.1%になっています。こちらのパーセンテージも毎年変わります。利率としてはかなり高いですよね。
さらに、仮装隠蔽をしている等、脱税の意思があって悪質だと認定されると、重加算税が課されます。こちらは期限後申告の場合は本税に対して40%掛かりますから、本税が多ければ多いほど、高額になっていきます。
本税が1億円以上で無申告状態だと、実刑になることもあります。実刑になった場合は、5年以下の懲役若しくは500万円以下の罰金に処されるので、かなり重い罪になることがわかりますね。無申告状態は余計な税金を払わされるだけでなく、金融機関からの信用も得られませんので、新たに物件を購入しようとしても、資金を借りることができません。
また期限後の申告は、受けられるはずの節税メリットを享受できないことも数多くあります。そもそも不動産投資で利益を得たいのであれば、しっかりと数字を把握することは当然のことですよね。
税務署の人たちは、一般の人と違って税金徴収のプロですから、そうそう見逃されることはありませんので、このコラムをお読みの皆さんは、しっかりと帳簿をつけ、投資の数字を把握してください。そして、節税メリットもしっかり受けつつ、金融機関の信用を得ながら不動産投資を進めていってくださいね。
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