話し方最終_12112015

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ビジネスシーンにおいて最重要ともいえるスキルは、やはりコミュニケーションではないだろうか。仕事をバリバリとこなす、高収入のビジネスパーソンは関わる人も多く、それだけにコミュニケーション能力の高さが求められる。では年収が高いお金持ちは、どのようなコミュニケーションを図っているのか。そこに、お金持ちでない人と比べると、違いはあるのだろうか。

今回は『話し方で失敗する人と成功する人の習慣』(明日香出版社)の著者で、コミュニケーション総合研究所代表の松橋良紀氏に話を伺い、実際に話し方を教わった。お金持ちが持つ思考パターンと、コミュニケーション手法の大きく2つに分けて説明する。

思考編

実際のコミュニケーションの話をする前に、お金持ちの人に共通する思考パターンについて説明したい。松橋氏によれば、思考パターンは話し方に大きな影響を与えるという。

○お金持ちは常に「未来思考」

「お金持ちの人は未来思考です。たとえば目の前に何か問題があるとしましょう。お金持ちでない人は、『どうしてこんな状況なのだろうか』と問題の原因を考えます。それに対してお金持ちは『どのようにしたら改善できるか?』と考えます。未来志向なのです」

未来思考とは、問題解決型の思考と言い換えられる。目の前にある課題について、どのようにして解決していくかを意識することが、話し方に大きく影響するのだとか。松橋氏によれば、お金持ちの人は概してポジティブ思考だという。でも多くの人がネガティブに考えてしまう理由があるという。

「シャド・ヘルムステッター心理博士の研究によると、人は0歳から20歳の間に、マイナスの言葉をなんと14万8000回も浴びているといいます。反対にプラスの言葉は1万回も聞いていません。ほめられて賞賛される回数より、非難されたり注意されたり怒られる回数が圧倒的に多いのです。

たとえば、『早くしなさい、ちゃんとしなさい、だからやめなさいって言ったでしょ! なんでこんなことするの?』など、しつけを通じて叱られて、社会性を身につけていきます。その過程で、つい否定的に考える習慣が築かれてしまいます。何かやろうと思っても、『上手くいかなかったらどうしよう』『どうせ自分には無理』と反射的にブレーキをかけるようになるのです」

成人するまでに14万8000回もマイナスの言葉を浴びてきたとは驚きだ。ではお金持ちに近づくためには、どうしたら良いのだろう? 松橋氏は言葉の使い方を変えることが大事だと言う。

「多くの資産を築く人は、そんな環境に負けずに、『自分には無理だ』、『自分にはできない』という言葉を打ち消して、『他人ができるなら自分もできる』『やればできる! 不可能はない』とポジティブにとらえる思考パターンを持っています。まずは言葉の使い方をポジティブなものに変えることから始めていきましょう」


○お金持ちは感謝と読書が習慣

お金持ちは、人に感謝する気持ちが強いという。目の前にないものよりも、今、目の前にあるものに感謝できる人は、精神的にも落ち着いており、コミュニケーションも穏やかになることは想像に難くないだろう。人に対して感謝の気持ちを抱けることは、相手に対して思いやりを持てることにつながる。

多くの資産を残す人は、皆で発展しようという考えを持っている。人に何かを与えたり、教えたり、育てたりする活動が多いそうだ。

「成功者と呼ばれる人に読書嫌いはいません。本を読み、先人たちが残してくれた英知を受け継ぐことで、自分の体験以外の観点からも、人に何かを伝えることができる。『LeaderはReader』と言うように、人を率いる人は、本をたくさん読む人なのです」

現時点でプラス思考になれない人でも、心配はいらない。松橋氏によれば、人の潜在意識は21日間で変わるという。それまでマイナス思考だった人も、21日間思考を変える訓練をすれば、今までとは違う脳の使い方ができるようになるのだ。

「どんなに小さいことでも構いません。1日にあった良いこと3つを、日記やブログなどに書くのがおすすめですよ」と松橋氏。こうしてプラスに対するセンサーを磨いていくことが大切だという。この方法なら誰でも気軽に取り組めそうだ。

コミュニケーション編

ここまで、お金持ちが持つ思考の傾向について説明した。ここからは本題である、お金持ちの人の話し方について詳しく紹介する。

「お金持ちの人にはコミュニケーション能力の高い人が多いです。彼らには2つの大きな特徴があります。1つは質問の技術。もう1つは、親密感を作る技術です」

たとえば、雑談の中で、「先日、京都へ行ってきました」と相手が発言した。それに対して、あなたはどのように反応しますか? 松橋氏から尋ねられた筆者は、「そこで何をされたのですか?」と質問した。これではNGだという。では何をどう改善すると良いか、おわかりだろうか?

このときの筆者の問題点は、「相手が話したいことは、きっと『京都で何をしたのか』に違いない」と決めつけて質問をしたことだと松橋氏は言う。「京都に行ってきた」としか話していない段階で、それだけではまだ情報が少ないのに、『京都での行動』を質問するのは、相手の発言の意図を決めつける行為

相手は京都で何をしたかではなく、京都の寺社仏閣の美しさについて話したかったのかもしない。この時点で、コミュニケーションにずれが生じてしまう。

「相手の言葉を聞いて、自分が勝手に作り上げた思い込みで質問をしてしまう人はたくさんいます」と松橋氏。それではどのようにしたら良いだろうか。


○お金持ちはペーシング技術が高い

松橋氏が教えてくれたのは、ペーシングという手法だ。ペーシングとは、相手とペースを合わせる心理技術のこと。ペーシングには、「おうむ返し」「声を合わせる」「体の動きを合わせる」の3つの方法がある。1つずつ解説する。

「おうむ返し」は相手の言葉をそのまま返すことを言う。「先日、京都へ行ってきました」という言葉に対しては、「京都へ行かれたのですね」と、相手の言葉をそのまま返すだけでOKだ。さらに短い返しとして、「京都へ?」という返しもありだという。

「おうむ返しで相手の言った言葉をそのまま返せば、相手は自然と会話を続けてくれます」

お金持ちは、決めつけの質問をせず、おうむ返しで相手の会話を促し、相手の心をつかむ方法を身につけているという。

次に「声を合わせる」とは、相手の声の大きさや話すスピードに合わせることを指す。小さい声でゆっくり話すことを好む人からすると、大きい声でまくし立てるように話す人は、とても不快に感じる。相手の声のトーンや話すスピードに注意を払い、合わせていくことで親密感を構築できる。

最後に「体の動き」については、主に相手がうなずくときのアゴの動きを見ることが大切だと松橋氏は語る。

「相手がどういう風にうなずくかをよく見ましょう。うんうんうんと素早くうなずく人や、うーんとゆっくりとうなずく人など、人によってうなずき方には違いがあります。コミュニケーションの達人たちは、うなずきを見て、相手のアゴの動きを合わせる技術が高いのです」

実際にこれら3つをやってみると、わかることがある。相手に合わせようと意識するので、「自分が話さなければ」などとは思わないのだ。ペーシングを行うには、相手を観察することが必要不可欠だということがわかる。お金持ちは、相手を観察することで心地良い会話を作り出し、短時間で相手との間に親密感を作るのが上手いという。

親密感を作ることで相手に好かれ、結果的に人脈を広げ、ビジネスを円滑に行えるようになる。コミュニケーションは一方通行では成り立たないのだ。人と向き合うと、つい自分が話すことに意識を向けてしまいがちだが、それは相手を無視した一方的なコミュニケーションになってしまう。お金持ちとそうでない人との話し方の違いは、相手を観察できるか、できないかにあるといえよう。

松橋良紀氏プロフィール

松橋様写真コミュニケーション総合研究所 代表理事。コミュニケーション心理の専門家。メンタルトレーナー。米国NLP協会認定NLPトレーナー。1964年生青森市出身、青森東高校卒。

『あたりまえだけどなかなかできない雑談のルール」『あたりまえだけどなかなかできない聞き方のルール」など、40刷を超えるベストセラーも多い。

30才でNLPに出会って以来、20年間以上に渡り、NLPを通して、「コミュニケーションで悩む人をゼロにする!」を合言葉に活躍中。