再建築不可最終_12252015

写真© ほじん-Fotolia

新年明けましておめでとうございます。またまた新たな一年が始まってしまったといった感じです。歳を重ねるにつれて時間の経過が早まるような感覚になるようですが、私の場合、加速度が付いているようにも思えます。

昨年は「楽待」においてこの「特集コラム」を担当させてもらうことになり、続けて「大家さんの味方」コラムの担当もさせていただいております。従来からの「実践大家コラム」を含めて3種のコラムで、作家になったような気分です。

さらには11月には私の第3棟目となる中古RC物件も手に入れることができ、非常に充実した1年であり、アッと言う間の1年でした。本年においても皆様のお役に立てるようなコラムの執筆に心がけますので、引き続きよろしくお願い致します。

さて、今回は「再建築不可物件」についてのお話です。

そもそも、なんで「再建築不可」の物件って存在するの?

なぜ再建築(建替え)ができない土地が存在するのでしょうか。再建築不可と言ってもその理由は様々です。 一般的に多い事例は「接道義務」の問題です。

接道義務とは建築基準法42条で、基本的に建築物の敷地となる土地は、「幅員4m以上の道路に2m以上接していなければならない」といった規定があります。「基本的に」と書いた理由は、幅員4mの道路が様々な要因で それ以下になったりそれ以上になったりすることがあるからです。その辺の細かい規定は難しくなるので割愛します。

ちなみにここで言う道路とは一般の道路であり、自動車専用道路や高架や地下道など実際に自動車の出入が不可な道は除外されます。ただ、個人所有の道路であっても建築基準法上の道路としてみなされることもあります。こういった基本条項を満たしていない土地では建築確認申請が通りません。そのため、再建築が不可となるのです。

では、なぜ既存建築物が建てられたのかといった疑問が生まれます。それは、建築基準法施行以前に建てられた建築物であったり、違法建築物であったりします。東京でも昔からの下町に行くと車の通行ができないような狭い道を挟んで、昭和初期以前の建物が林立する地域があるかと思います。そういった地域では再建築不可の建築物が多いことでしょう。

また、災害危険区域のように、急傾斜地の崩壊や津波、高潮、出水等による災害の危険から、人々の生命と財産の安全を確保して建築制限を行う目的で、地方自治体が指定する地域が存在します。このような地域においても再建築することは不可能です。もっとも、こういった地域では絶対に建築物を建てるべきではありませんね。

道路予定地や区画整理計画地に選ばれてしまった土地も建築ができなくなります。日本では車の普及が著しく、 各家庭に1台ではなく成人各自1台なんて状況にもなりつつあります。また、物品の輸送でも貨物自動車の需要が多く街中や幹線道路では多くの渋滞が発生します。

そのような車需要の過多に伴い道路の拡張工事や、新道の建設が方々で行われております。道路建設には当然土地が必要になるわけで、既存建築物を撤去して用地を確保します。この時点で道路予定地となる土地には新たな建築物は制限されるのです。

区画整理などの都市計画予定地においても同じような理由から新築はできなくなります。もっとも、前述のような事業予定地となった土地は、遅かれ早かれ土地は明け渡すことになりますので、再建築どころではなくなるでしょう。

他方、再建築ができるのかできないのかグレーゾーンな土地もあります。それは「市街化調整区域」の土地です。 一般的には市街化調整区域であっても既存建築物が建っている既存宅地であれば、再建築にて新築建築物を建てることができると思われているようです。確かにそういった事例は多くあります。

しかし、市街化調整区域でも再建築なら可能だと言う法律はどこにもありません。再建築が当たり前のように建築確認申請を提出して却下されても当然なのです。法律では市街化調整区域には一般的な住居は建築不可なのです。それを裏付ける事例として、金融機関は余程のメリットが無い限り、市街化調整区域内の収益物件には融資しません。

再建築不可の土地では、再建築する方法は無いのか?

それでは、再建築不可の土地へは新築で建築物は建築できないのでしょうか。災害危険区域、道路予定地や区画整理事業計画地は前述した通り、再建築は不可とお考え下さい。しかし、接道義務に関して条件に満たない場合は可能性があります。建築基準法の条文に適合しないのですから適合するように対処すれば良いのです。

例えば全面道路の幅員が4m未満であれば4m以上になるように、自分の土地を道路とみなしてもらうように道路から後退して建築するのです。この場合、基本的に幅員4mが必要であれば道路の中心線から2m後退するのです。その道路の中心線から2m後退した線が道路境界線とみなすのです。一般的には「セットバック」と呼ばれます。

しかし、全面道路に2m以上接していない場合は厄介です。隣の土地が空いていればその土地も手に入れて2m以上になれば建築可能になります。でもそうそう土地が空いていると言う状況は難しいでしょう。中には全く接する道路が存在しない土地と言うのも存在します。こうなるともうお手上げですね。

ただ、近くまで道路が来ていて、そこへさえアプローチできるのであれば可能性はあります。アプローチ用の土地を購入して道路を作ってしまうのです。案外こういった地域では古い建築物が多いので、所有者がちょうど処分を考えていたなんてことになると、土地を売ってもらえることもあります。ちょっと費用はかかりますが、土地の価値は必ず上がります。

再建築が不可であるのなら、既存建築物の寿命を延ばすという方法もあります。いわゆるリノベーションをしてリニューアルする方法です。戸建て住宅であれば、大規模な修繕や模様替えを行っても確認申請提出の義務はありません。

ただ、共同住宅に関しては建築基準法上「特殊建築物」に該当する為、ある一定以上の工事となる場合には確認申請が必要となります。確認申請が不要な範囲内であれば新築のようなリニューアルが可能かもしれません。