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皆さん、こんにちは。岡田のぶゆきです。第7回目の相談者は、東京都葛飾区にお住いの佐藤功さんです。佐藤さんは、商社の社内システム部門の課長職をされており、年収900万円のいわゆる高属性のサラリーマンです。家庭の事情で動けなかった時期があるそうですが、物件を探してすでに1年が経とうとしています。
目標は、家賃年収1000万円とのことですが、なかなか条件に見合った物件が見つからず、ある程度リスクを許容する形で不動産投資を始めようかと悩まれています。
名前 |
佐藤功さん(仮名) |
年齢 |
39歳 |
性別 |
男性 |
職業 |
商社 課長職 |
居住地 |
東京都葛飾区 |
年収 |
900万円 |
自己資金 |
400万円 |
Q1.なかなか物件が買えない……条件や活動方法を見直すべきか?
2015年2月に母が亡くなり、葬儀等で忙しかったこと、葬儀費用として拠出した自己資金を再び貯蓄していたことなどから、不動産投資の活動を停止していた期間があるとはいえ、活動を開始してからもうすぐ1年になります。
買いたい病にかかってしまっているのかもしれませんが、買えないまま時間が過ぎてしまうより、まずは不動産投資を始めたいと考えるようになりました。
物件探しは『楽待』などで検索し、条件に近いものがあれば業者へ問合せをし、レントロールや現地確認等を行う、というスタイルで行っています。全ての条件を満たしていなくても、ケースバイケースで検討していますが、私の条件や活動方法は見直した方が良いでしょうか。
条件は下記となります。
・木造一棟物件
・駅徒歩10分以内
・物件から都内主要駅(東京、新宿、渋谷、池袋、品川、上野)まで45分以内
・表面利回り10%以上
・返済比率55%以下
・表面利回りとのイールドギャップ7%以上
・1戸あたりの家賃3万円以上
・物件価格4000万円以下(自己資金の都合と、1棟目は小規模な物件で始めたいため)
・築30年以内
A1.購入するためには、条件をいくつか変更する必要がある
ご質問ありがとうございます。極端なことをいえば、「4000万円以下」の物件を希望して「自己資金400万円」であっても、高利回りであれば、条件の「返済比率55%」は可能です。しかし、現在の市況でそこまでの高利回り物件が買えるかといえば疑問です。
○シミュレーション
物件価格 |
4000万円 |
融資期間 |
20年 |
金利 |
2% |
返済額 |
月20万円 |
シミュレーションのように、利回り12%で毎月40万円の家賃年収が得られる物件であれば、返済比率は50%となり、佐藤さんの条件を満たすことができます。つまり現状の「利回り10%以上」を「利回り12%以上」という条件に変える必要があります。
しかし、木造の一棟物件で築古物件では20年長期融資は難しくなります。この条件のまま返済率55%で行うためには、自己資金率を高めるしかありません。
ご希望の価格帯は4000万円以下という小さい物件のため、一般的に自己資金は入れやすいですが、佐藤さんには「自己資金400万円」というしばりがあるため、木造アパートを狙うのであれば、価格帯を4000万円から1000万円に下げるのが現実的です。
都内主要駅から近いというのは、都内在住の佐藤さんにとって融資を受ける観点では良い条件ですが、都心に近ければ物件は割高になります。
「主要駅45分以内」は車で高速を使った移動なのか、それとも特急電車を使っていいのか、その辺の判断が難しいところでもありますが、ご自身が許容できる範囲で、もっとも遠くのエリアで1000万円以内の物件を探して購入されることをお勧めします。その場合は、金融機関は日本政策金融公庫が対象になります。
また、木造を希望されながら「築30年以内」という条件も購入を狭めます。築20年をすぎる木造アパートでは、融資がなかなかつきません。築30年以内という条件をつけるのであれば、木造を条件から外した方が良いでしょう。
この木造のしばりを外すことで、融資年数の伸びやすい鉄骨やRCも対象となるため、長期ローンが組みやすくなり、自己資金の比率を下げて、2000万円程度の物件を検討することもできます。
Q2. リスクのある物件も検討しているが、万が一の場合のヘッジ方法はあるか?
なかなか物件が見つからないため、最近は擁壁や旗竿地、築30年以上の物件など、多少リスクのある物件も検討対象にしています。しかし、地震のリスクや売却しにくいことを考えるとなかなか購入には踏み切れません。こういったリスクをある程度ヘッジする方法(または考え方)があれば、アドバイスいただけませんでしょうか? また、初心者やサラリーマン大家が避けたほうがいいリスクがありましたら、ご教示ください。
A2.リスクには、それぞれ対処法があるので、その特徴を把握することが大切
佐藤さんが懸念されるリスクに対して、返答いたします。
【擁壁】
擁壁とは、宅地の土砂が崩壊するのを防ぐため、崖面を支える壁を指します。擁壁では宅地造成規制法に則る必要があります。擁壁のリスクでいうと、地震で崩れる可能性は高いです。例えば、自分の家には擁壁がなく、隣接の家に擁壁があった場合に、壁が崩れてきたら保険対象となります。
あらかじめ建築確認をとって建てたものは、割高になりますが火災保険に加入することもできます。万が一、崩れても保険対象になりますので、リスクヘッジになります。
なお、崩れた原因が災害であれば、保険対象となりますが、経年劣化での崩れの場合は保険対象になりません。また擁壁だけでなく、家の宅地そのものが崩れると保険対象になりません。
以上のことから、宅地造成規制法に基づいた擁壁であれば、ある程度のリスクは残りますが許容範囲内かと思います。しかし、その基準を満たしていない擁壁、古い擁壁であれば避けた方が無難でしょう。
【旗竿地】
旗竿地とは旗竿状の形をした不整形地を指します。敷地延長ともいわれます。メリットは整形地よりも安く購入できることで、デメリットは旗竿部分(通路部分)を駐車場として使うことがありますが、細く長い形状の場合、駐車場としては不適となります。
また四方が住宅に囲まれるため、「日当たりが悪い」「圧迫感がある」といった不満にもつながります。しかし、これらのデメリットはあくまで一般住宅のケースに当てはまり、不動産投資では問題ありません。
・一般住宅に不向きのため、土地が安く仕入れられる
・袋小路になっていることから、セキュリティに優れている
というようなことがプラスに働きます。
気を付けなくてはいけない注意点といえば、現状で古家があり、建て替えを検討する場合は、既存の建物と同じだけの広さが建てられないケースもあります。また、旗竿地の場合は建築基準法上、共同住宅が建てられないことも多く、その場合は長屋式住宅を建てる必要があります。いずれにしても専門家に土地を見てもらって判断しましょう。
【築古物件】
築古物件の場合、物件価格は低くなり、高利回り物件が購入しやすいですが、いくつか注意があります。
○修繕コスト
購入した後に、修理や設備交換の可能性があります。とくに屋上防水や外壁塗装といった大規模修繕が必要であれば、物件価格に対する修繕コストの割合が高くなり、数年分の収益がなくなります。こういった費用は、あらかじめ織り込んで購入すべきです。
○売却しにくい
築年数が経っていることによって、融資がつきにくくなります。サラリーマン投資家の多くは融資を使った投資を行いますから、「融資がつきにくい物件=売却しにくい物件」となります。なお、建て替えを前提、更地で売却することを前提とするなら、心配する必要はありません。
なお築古物件で建物比率が大きい物件では、いずれ建て替えをしようとしても、土地の銀行評価が伸びにくく、融資が難しいケースもあります。その点もしっかりチェックしてください。
○買い増しに向いていない
築古物件を購入するために、ある程度、自己資金を入れて買うと、次に規模の大きい物件の購入時に、自己資金が足りずに売却が必要なケースもあります。売らないと次が買えないという中、タイミングよく物件が売れるとは限りません。とはいえ、4000万円以内という価格帯は規模としては売りやすいです。
Q3. 物件を取得するためのとるべき行動とは?
現在の市況では、良い条件の物件はなかなか見つかりづらいのが現実ですが、そういった物件を見つける、あるいは紹介してもらえるようになるためには、どういった行動をとるべきでしょうか?
A3.まずは物件の数を見て「見る目」を養う
佐藤さんは勉強のために読破した書籍は8冊とのことですが、もっとたくさん知識をつける必要があります。また、不動産投資にどれくらいの時間がかけられるかにより手法も変わってきます。
最初は、なるべく時間をつくって、物件を見に行くことが大事です。物件を見て、大規模修繕が何年以内に必要か、またどれくらい費用がかかるのか目を養った方がいいでしょう。小さな物件では、先述した通り大規模修繕のコストがかかる割合が高くなります。物件を見て見積もりをとって、先々のコストを把握することは、実際にやってみないと感覚としてわかりません。
大家の会に参加して、先輩投資家さんからの教えてもらうのも手ですが、とくに不動産投資を上手にされている先輩では、相場より安すぎる価格で行っている可能性もあります。
例えば、100室所有している投資家と、5室所有の投資家では、同じ条件で工事をしてもらえるとは限りません。そのリフォーム業者は常に仕事を依頼してくれるお得意様だからこそ、安く施工しているというケースもあります。最初のうちは「割安な修繕費用」ではなくて、「相場の修繕費用」を知る方が現実的です。
くわえて、先輩投資家さんに話を聞くときは、ある程度、自分で動いて理解してから聞くべきです。例えば、リフォームに対する意見だとしたら、何もないところで漠然と聞くのでは、アドバイスのしようがありません。できれば、実際に検討対象の物件があり、その見積もり書を見せて意見を聞く方が良いでしょう。
このように見積もりをとって、具体的に話を進めることができれば、販売価格の指値交渉もできますし、金融機関に対して、購入後のリフォーム資金を含めて融資してもらうこともできます。不動産業者からすると、手間がかかると思われるかもしれませんが、真剣に物件購入を検討していると話して、理解を得るしかありません。
実際のところでいえば、最初からちょうどいい物件は売っていないものです。リフォームが必要のない物件で、好条件の物件はすぐに売れてしまいます。資金を投入して自分が手を入れる前提で物件を購入するのは、リスクをある程度引き受ける不動産投資としてはお勧めです。
佐藤さんへの総合的なアドバイスをすれば、所有される自宅がお父さんとの共有ということで、共同担保に使えないのが懸念材料です。名義は1人であるほうが、共同担保に使えます。築古物件を購入するためには、自宅を共同担保として使える方が有利です。お父さんの持ち分を購入して、お父さん世帯からは賃料をもらうことを検討してはいかがでしょうか。
また、目指す規模は家賃年収1000万円とのことですが、おおよそですが1億円程度、物件を購入すれば、家賃年収1000万円です。毎年250万円の貯金を行って、2500万円の物件を4~5年かけて増やしていくのが現実的です。
そして、家賃年収が1000万円あるからといって、会社は辞めないことです。判断は、ローン支払いや経費を差し引いた手元にキャッシュフローで行うべきです。キャッシュフローを得るためには、もっと目指す規模を大きくして、小さい物件を購入したりしながら売却を織り交ぜ、自己資金を増やしていくことがキーとなります。
佐藤さんの目標についていえば、決して実現は不可能ではありません。焦らず取り組んでいきましょう!
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