消費税還付最終_01052016

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みなさん、あけましておめでとうございます! 不動産投資専門税理士の叶です。お金を残す不動産投資コラム。今回は、平成27年12月16日に発表された、税制改正大綱で、不動産投資家、大家さんが抑えておくべきポイントについて解説します。

空き家の譲渡所得の特別控除が創設された所得税

平成27年からスタートした法律が「空き家対策特別措置法」です。この法律が作られた理由は、老朽化した空き家が放置されることによって、倒壊や景観の悪化、衛生上の問題などの悪影響が出てきているからなんです。

空き家は今後もどんどん増えると懸念されていて、さらに悪い影響が出る可能性が高いため、この法律によって著しく保安上の危険となる恐れがある空き家については、自治体による解体の通告や強制対処ができるようになりました。このような背景の中、今回の税制改正大綱で創設されたのが、「空き家に係る譲渡所得の特別控除」です。

この税制は、平成28年4月1日から平成31年12月31日までに、相続した被相続人の居住用不動産を売却した場合に、一定の要件に該当すれば、居住用財産の3000万円の特別控除が適用できるというもので、その要件には、次のような項目があります。

・昭和56年5月31日以前に建築された家屋。(区分所有は除く)
・相続開始直前に亡くなった人が住んでいて、亡くなった人以外に居住していた人がいないこと。
・相続開始日以降3年を経過する日の属する年の12月31日までに売却すること。
・亡くなった人が住んでいた家屋やその敷地の売却
※相続発生時から売却時まで、その不動産で事業、貸付、居住をしていないこと。
・売却額が1億円以下。

この税制を使えば、相続した古い建物やその敷地で空き家になりそうな物件を売却しても、売却益がかなり圧縮されて、節税ができます。この税制を使って売却する人が増えれば、売り物件が増え、買う人にとってチャンスになるでしょう。


実効税率が下がる法人税

さて次に法人税ですが、こちらは平成28年4月1日以降に開始する事業年度から、法人税の税率が次のように段階的に引き下げられます。これは、日本の法人税の実効税率が、世界の先進諸国と比較して高く、それによって、日本の優良企業の海外流出や、海外からの投資が阻害されるという影響があるためで、今後、日本の法人税の実効税率は20%台まで下げられていく予定です。

個人の所得税は、どんどん増税の方向なので、ある程度所得のある人で、これから物件を増やしていきたい方は、法人での物件取得が、税金を考えると有利になる可能性が高くなりますね。

法人税の税率 平成28年度 平成29年度 平成30年度
中小法人
(資本金1億円以下)
年800万円以下 15.00% 19.00% 19.00%
年800万円超 23.40% 23.40% 23.20%
法人実効税率 平成28年度 平成29年度 平成30年度
中小法人
(資本金1億円以下)
年400万以下 21.42% 25.99% 25.99%
年800万円以下 23.20% 27.57% 27.57%
年800万円超 33.80% 33.80% 32.59%

そして、もう一つ法人税の大きな改正としては、減価償却制度の見直しが挙げられます。こちらは、平成28年4月1日以降に取得する建物付属設備や構築物の減価償却方法について、定率法が廃止されて定額法だけとなります。

定率法は当初、減価償却費が大きく取れる償却方法なので、これが使えなくなると、初期の税金が増えることとなり、自己資金の回収が遅くなってしまうので、不動産投資家、大家さんにとっては、不利な改正になっています。

消費税還付が封じ込められた消費税!

今回の改正でもっとも注目すべき改正がこの改正でしょう。消費税還付とは、建物を建築したり、中古物件でも建物を購入したりするときに、その建物に掛かる消費税を、一定のスキームを使って還付してもらう方法です。1億円の建物であれば、単純計算で消費税率8%だと800万円の消費税が還付されることになります。

これが成功すれば、自己資金をすぐに回収することが可能になるため、不動産投資家、大家さんにとっては、とっても有効な節税方法なんです。しかし、これが今回の改正により、平成28年4月1日以降は、今までのスキームではできなくなります。具体的には次の通り。

・税抜き1000万円以上の建物を建築、購入した場合、その日の属する課税期間から3年間、消費税の免税事業者、簡易課税は適用できない。

このように改正されると、何がどうなるのかといいますと、簡単に言うと、初年度に還付された消費税額を、3年経過後にまた国に還さなければいけなくなります。ですから、これから物件建築、購入時に消費税還付を狙っている方は、平成28年3月31日までに引き渡しを受ける必要がありますので、しっかりと期限を頭に入れておいて下さいね。