借地権最終_12252015株式投資の格言に「人の行く裏に道あり花の山」というものがある。多くの投資家と同じ行動をしていたら、成功を手にするのは難しい。異なる行動をとることで大きなチャンスをつかめるといった教えだ。

これは不動産投資の世界でも同様。セオリーどおりのやり方ではなく、多くの投資家と違う視点を持って臨むことが時に有効な策になり得る。その方法のひとつ、「借地権」を利用した不動産投資に注目してみたい。

一般的に借地権に目を向ける不動産投資家は少ない。なぜ好まれないのか? 借地権のメリット・デメリットは? どんな人に向いているのか? そもそも借地権って何?……など、疑問に思う読者も多いだろう。

サラリーマン投資家のカーター校長こと河田康則さんは、2015年6月、東京都内の借地権の土地に新築アパートを建築し、満室経営を続けている。

借地権をうまく活用すると、不動産投資を有利に進められます。いくつかの注意点を認識したうえで実践すれば、利益を大きく増やすことができるのです」と河田さん。

あまり知られていない借地権活用法。しかし知られていないからこそ、そこには「花の山」が潜んでいるのかもしれない。先の疑問とともに、不動産投資に借地権をうまく活用するノウハウを河田さんに聞いた。

そもそも借地権とは……?

まず、借地権がどんなものなのかを頭に入れよう。

「借地権とは読んで字のごとく、土地を借りる権利のこと。もっといえば、建物の所有を目的として、地主から土地を借りて使用する権利を意味します」

建物の敷地となる土地の権利は、「所有権」と「借地権」に分けられる。世に出回っている投資物件の多くは所有権がほとんど。所有権の物件を購入した場合、土地も建物も完全に購入者の所有とされる。

「対して借地権の物件は権利関係が複雑になります。地主の所有する『底地』を借りて、そこに自らが所有する目的でアパートなどの建物を建てるからです」

底地とは、地主が第三者に土地を貸し、地代収入を得ている土地のことを指す。

「借地権の物件を購入した人は、地代を払う義務を負う代わりに土地を利用する権利=借地権を持ちます。一方、地主のほうは貸した底地の所有権と、地代をもらう権利=底地権を持ちます」

「旧法」と「新法」で大きな違いがある

所有権より数は少ないものの、借地権の物件は全国各地に点在する。「楽待」などの収益物件サイトで、「借地権」とキーワード検索すると該当のものを閲覧できる。

「借地権は『旧法』と『新法』で違いがあります。平成4年8月1日に借地借家法が改正され、それ以前に設定された借地権は旧法、以後のものは新法と判断してください。

旧法の借地権は地主(底地権者)に厳しく、借主(借地権者)に有利な法律です。これには戦後しばらく、弱い立場だった借主を守ることに重点を置かれた背景が関係しています。

しかし結果、借地を嫌がる地主が増えて、都市部の開発が進まなくなってしまった。そこで土地の流動性を高めようと、今度は逆に借主に厳しく、地主に有利な新法が作られました」

だが実際、新法はあまり機能していない。現在も、借地権の多くは旧法が大半を占めている。

「旧法借地権の土地の契約期間は建築構造によって異なり、木造で20年、マンションなど堅固な建物だと30年が基本です。旧法の場合、前述したように借主を守るため、地主は正当な理由がない限り、借主の希望する契約期間の更新を拒めません。したがって実質、半永久的に権利を存続できるのです」

所有権より安いのが一番のメリット

基本を抑えたところで、借地権のメリットを聞こう。一番の魅力に挙げるのは価格の安さ。所有権の物件に比べてはかるに安いという。

借地権の物件価格は所有権の3~4割程度。中には半分程度で購入できる激安なものも潜んでいます」

土地は自分の所有にはならないが、建物を建てる目的で土地を安く利用できるわけだから、御の字だろう。

「私が借地権に目を向けたのも、その利点を強く感じたからなんです」

もともと河田さんは東京都心の新築または築浅RCの購入を考え、物件を物色していたという。しかし近年、アベノミクスの影響もあって新築も中古RCも価格が値上がりし、手が出せないレベルになってしまったそうだ。

「そんなとき頭に浮かんだのが借地権でした。東京都内には借地権の物件が意外に多いんですよ。で、条件の合うものを見つけ、建っていた古屋を解体後、更地にした土地に新築のアパートを建てました」

物件の詳細は後述するが、土地を安く利用できる分、利回りが上がるのは言うまでもない。

「現在、都内の所有権の土地にアパートを建てると利回りは6~7%台なのに対し、借地権の土地に建てると9%台に到達します。借地権を選択すれば2~3%の利回りアップにつながり、キャッシュフローが増えるわけです」

そのほか、土地の所有権は地主が持っているので、借地権を取得しても土地の取得税はかからず、登記費用もかからない。また、土地の固定資産税や都市計画税を負担しなくてすむメリットも。

「さらに、相続などのタイミングに地主から底地を買い取ることができれば、借地権から完全な所有権となって土地の価値は上がります。これを売って利益を狙うというワザも使えますよ」