キャバクラ大家さん最終_01132016

地元青森でやんちゃな10代を過ごし、20代は美容師からホスト、プロのキックボクサーを経て、一転、美容室・キャバクラなど経営者の立場となった桜庭匠さん。31歳からはじめた不動産投資は、わずか3年で11棟102室まで拡大! 賃貸需要が冷え込んだ地域にもかかわらず高稼働させる秘訣から、低属性でも勝ちあがるそのマインドまで伺った。

毎晩バイクで走りまわった10代から、キャバクラ経営で成功した20代

キャバクラ大家の通称で親しまれている桜庭匠さんは、キャバクラが好きな大家さんではなく、キャバクラを経営コンサルする異色の大家さんだ。25歳でオープンさせた美容室を皮切りに、現在は美容室2店舗、蕎麦屋1店舗を経営、キャバクラ6店舗をコンサルティングしている。

「もともとは地元の青森で、バイクを乗り回すようなやんちゃな10代を過ごしていました。中学を出て美容学校へ通ったものの卒業3日前で退学したりと、当時は遊ぶことに夢中でした。

18歳のときに『これじゃいけない!』と単身上京して、そこでようやく念願の美容師になりました。そのとき、時間ができたので元々好きだった格闘技ジムに通い、プロデビューも果たしました」

当時の目標は「25歳で自分の店を持つこと」。しかし、23歳になっても夢が叶えられるメドが立たず、24歳で一念発起して歌舞伎町でホストとなる。

「ホストは誰もが成功するわけではありませんが、うまくはまればお金の稼げる商売です。1年間がむしゃらに働き、ナンバーワンにもなりました。おかげで貯金もできて、25歳のときに念願の美容室を横浜にオープンさせることができました」

その後も節約生活を続け、2年後には2店舗目の美容室をオープン。28歳には地元青森でキャバクラ経営をはじめる。

「そこからは次々とお店をオープンさせていきました。現在は月の半分ずつで美容室のある横浜と地元の青森を行き来しています。飲食業や美容室など、いわゆる店舗経営と不動産投資ではまったく違うように見えますが、私にとっては同じです。

というのも、すでにお店をやって10年くらい経っています。これまでの経験からいえば、『不動産だから、美容室だから、キャバクラだから』といって、考え方の違いはありません。お客さんが求めるもの……不動産は入居者ですが、入居者が求めるものを提供することで、順調にいくと思っています」


賃貸需要が冷え込む地域で高利回り&高稼働をキープ!

そんな桜庭さんが不動産投資をはじめたきっかけは、石原博光さんの『まずはアパート一棟買いなさい』(ソフトバンククリエイティブ)を読んだこと。

「もともと不動産投資に興味がありましたし、直感でなんだかいけそうな気がする……そう思いました。そして、2013年1月、1棟目の物件を購入しました。北海道の岩見沢市で、表面利回り28%の1DK×10世帯のアパートです。当時は知識も浅いですし、損しなければいいやという感覚です。実際に行いながら、知識をつけていこうと考えたのです」

もともとの販売価格は1350万円だったが、指値して約1100万円で現金購入。こうして、石原式の地方高利回り投資で、桜庭さんの不動産投資がスタートした。

「現地にいったところ、築30年ですが、思ったよりもキレイでした。入居率もいいし、今でも年間を通して入居率9割以上でまわっています」

はじめから遠隔での投資にもかかわらず、成功した桜庭さんは、青森を中心に次々と物件を購入。当初は木造アパートが中心だったが、2015年のはじめに初のRCマンションを購入、また11月には新築アパートも完成して、現在11棟102室となった。

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1棟目に購入した北海道のアパート

購入したRCマンションは、40%を超える超高利回り物件。滅多に見ない高利回りとはいえ、32世帯中25世帯が空室で、雨漏りがあるということで、そもそも「買いたい」というライバルすらいない物件だったとか。

「このRCマンションは懇意にしている地元業者からの情報です。最初に話をもらって、その日のうちに現地調査に出向き、すぐに買付をいれました。売値は3000万円で、指値をせずに購入しました」

その後、大規模修繕を実施して、物件再生を行った。

リフォームには約1500万円をかけました。繁忙期の1月に購入したので時間がなく、万人受けを心がけたデザインで早急に仕上げました。間取りは1DK、1LDK、2LDKの3タイプあるので、3部屋だけ先行してリフォームしてモデルルームにしました」

家賃は安めにしたものの、相場からかけ離れた金額ではなく、「普通よりはちょっとお得だな」という程度。それでも内装は新築同様に床と壁を新しくして、照明も新品を設置。その戦略が大当たりして、募集開始後2週間で満室を達成した。

「この物件はご縁があって半年後に売却しました。これが私にとってはじめての売却です。売却価格は1億1000万円でした。こちらはすぐに満室になった成功パターンですが、一番時間がかかっている物件は満室までに7カ月かかっています。そこも利回り40%の物件ですが、空室率70%という需要のない地域でした」

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2週間で満室を達成した売却済RCマンション


高利回り物件を購入するには見極めが重要

空室率の高さは日本全国で問題となっているが、それは東北も同じこと。青森の不動産市況はどうなっているのだろうか。

「東京に比べれば、空室率が高く、何十年先まで見れば、どんどん人口減少していくエリアですが、いきなり半分になるわけではありません。私は『部屋を探す人がゼロじゃなければいい』という考え方です。

東京は人口が多いかもしれませんが、ライバルもたくさんいます。地方は人口も少ない分、ライバルが少ないのです。簡単に言えば、その少ないライバルに勝つことができれば問題ありません」

また地方投資の魅力は、やはり高利回りにあるという。単純に、東京で利回り7~8%の1億円の物件を購入するのであれば、地方で利回り20%、5000万円の物件で20%あれば、手元に残るお金も多く、借入金も少なくていいという計算だ。

「空室で購入しても、埋めることさえできれば、しっかり現金が残ります。私の基本は、価値のない物件にいかに価値をつくっていくか。2棟目から、その方針でやっています」

桜庭さんは、ただ「高利回りだから」という理由で物件を選ぶのは危険だと提唱する。

「地方物件で失敗している人の話も聞きますが、東京の感覚で買うからではないでしょうか。東京で7~8%の物件が、青森にくると14~15%であります。それを『安いな!』とマイソク(物件チラシ)だけで判断するのは危険です。しっかり見極めないといけません。地方には20%の利回りがあっても、買ってはいけないエリアがあります

大きな鍵となるのは賃貸ニーズ。また好立地でなくても、そこは価格次第ということもある。例えば、地方で駐車場がなかったとしても、安く買って近くの駐車場を借りられればいい。

間取りが狭く水回りが3点ユニットだとしても、ライバル物件が家賃4万円のところ、家賃3万円で入居が決まるのであれば、3万円で貸しても利益が出ればいいという考え方だ。

「地方で勝つためには安く買うことが重要。また、高利回りの裏には高リスクが潜んでいるといわれますが、そのリスクの理由を確かめます。ボロい、掃除していない、空室率高い、修繕していない……そういった理由を確認して、本当に改善できないのか、それとも改善できるのか。そこをしっかり見極めます。

土地勘がある人、また地方がわかる人であれば、その辺の判断ができます。わからない人がマイソクだけで判断するのは危険という話なのです」

桜庭さんは最低限の勉強はするけれど、実際の現場のやってみないとダメという、あくまで現場主義。

「税金や利回りの計算、最低限の計算は行っていますが、机上の計算に時間をかけて意味があるのかという気持ちがあります。商売はもっと単純で、入ってくるお金がいくら、支出がいくらかを把握して、確実にお金が残るように進めていけば成功するのではないかと考えています」


融資を受け続けるには実績が一番

また、融資についてはどうなのだろうか。

「融資についていえば、プレゼンをしっかり行う、決算書を黒字にするなど、当たり前のことでしているだけで、特別な対策はしていません」

融資を受け続けるためには、結局のところ、今までの実績が一番だという。最初の2棟は個人で購入したが、それ以降は法人で購入。事業によって法人をわけることはせずに、1つの法人で実績を積んでいる。

空室が多い物件を確実に満室していくことを繰り返す。それを数字で見せれば、金融機関は納得します。空室を何カ月で埋めたのか、物件ごとに資料をつくって、あくまで黒字を目指しています。

こうやって事業が拡大していくことにより、融資条件はよくなっています。最初は金利が3%前半だったところ、今は2%になっています」

そんな桜庭さんの今後の目標を伺った。

「規模は、この1、2年で今の3倍を目指します。不動産はずっとできる商売で、時間的に自由がきくのが一番のメリットです。あとは商売が好きなので、楽しそうな商売はやっていこうと思っています。なので、不動産と両立しながら、好きな商売をやっていきたいですね」

また、物件に対しても、一生持ちきることは考えていないという。

「今年は、はじめて売却を経験しましたが、これからは年に1~2棟は売却していきながら、買い進める予定です。購入するのは、もちろん地方高利回り物件です。

でも今後ずっとこの手法でいくかはまだわかりません。昨年の秋にはじめて新築物件にチャレンジしましたが、時代が変わったり、自身の資産背景が変わることにより、とる手法も変わっていくのではないかと考えています。それはその時々で検討していきたいと思っています」

最後に低属性で、高利回り物件を購入していきたい読者へのアドバイスをうかがった。高利回り物件を買うためには、次の2点が大切だという。

1.ある程度の間口を広げること
2.不動産業者との関係をつくること

理想だけを追い求めていては買うことは難しく、自分に受け入れられる部分があるかどうかが重要となる。最初から大きく儲けるのではなくて、少しでもいいから確実に儲けていくことが大切で、そこからレベルアップして空室多い物件など、難易度の高い物件にチャレンジしてもいい。

「また、融資が受けにくい属性が低い人へのアドバイスをいえば、きちんと働いてお金を稼ぐのがいいと思います。やはり、元になるお金がないと買えません。ラクして稼ごうと思っているのは、うまくいかないし、最初はうまくいっても最終的には行き詰まると思います。

死にもの狂いで働いて自己資金を貯めて、1棟目は現金購入してもいいと思います。最初は小さい物件でいいので、確実に利益を出します。そうやって勉強しながら少しずつステップアップしていきましょう」

まずは自分の目標を定めること。その際には何十年先ではなく、1年後の目標を決めて逆算する方が達成率は高いという。身の丈にあった挑戦からはじめて、徐々に実績を積んで規模拡大、収益拡大を狙っていくのがキャバクラ大家流不動産投資なのだ。

昨年の秋に完成した新築アパート

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室内の様子

キャバクラ大家こと、桜庭匠さんプロフィール

青森県出身。キャバクラ6店舗の経営コンサルタント。案内所1店舗、蕎麦屋1店舗、美容室2店舗を運営。所有する賃貸不動産は青森を中心に約100戸。

やんちゃな少年時代を過ごし、地元中学を卒業後、美容学校に進学するが、卒業3日前に退学。ひたすらバイクで走り回る毎日を過ごすが、これではいけないと単身上京。

「25歳までに美容院を持つこと」を目標に、美容師として経験を積む傍ら、格闘技ジムに通いプロデビューも果たす。

24歳のとき「このままでは目標が果たせない」と一念発起。歌舞伎町でホストデビューしてナンバーワンに。25歳、ホストで貯めた資金を元に念願の美容室をオープン。その後、極貧生活を続け27歳で2店舗目の美容室もオープン。28歳のときに地元青森でキャバクラ、翌年の29歳、青森でラーメン屋(現在、蕎麦屋)をオープンした。

31歳、石原博光氏の『まずはアパート一棟買いなさい』を読み、不動産投資開始。現在、34歳。