不動産価格最終_12152015

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「一物四価」と言われるほど、価値を判断するのが難しい不動産。物件の購入を検討する際「物件の価格は何を基準に決まっているのか」と疑問に感じたことがある人は少なくないのではないだろうか。

一般的に物の価格は需要と供給のバランスで決まるとされるが、不動産価格はそう単純に決まるものではないらしい。今回は、「ガイアの夜明け」や「報道ZIP!」ほか、数多くのテレビ番組への出演歴を持つ経済評論家の平野和之さんに、不動産価格がどう決まるかをズバリ聞いた。

そもそも、モノの価格はどう決まる?

そもそも、物の価格がどのように決まるのか、平野さんに尋ねてみた。

「基本的に物やサービスの価格は需要と供給のバランスで決まります。たとえば、パンを買うとします。パンの需要が供給を上回れば、価格は上がります。逆に供給が需要を上回れば価格が下がります。この点では不動産などの資産価格も基本は同じです」

仕組みは学生時代に授業で習った需要・供給曲線の理論そのものだ。では、インフレとデフレではどうか。

「マクロ(全体)として景気が良いときはインフレ期待が高まるため、不動産価格は上昇します。ところが、景気に過熱感が出てくると、中央銀行である日銀が利上げをします。景気の過熱の抑制に失敗すると金利だけが上がり、購入できる人が減るため、結果として不動産価格が下落することがあります。

また、これはケースによりますが、景気が悪いとき、国の信用力が乏しい場合は利上げせざるを得ず、さらに不動産価格が下がることがあります。逆に、先進国などでは景気を刺激するために利下げを行い、資産価格の上昇を引き起こすことがあります。資産価格は景気の先行指標といえます」

日本やシンガポール、香港などの小さな国では、土地が資産バブルを引き起こしやすい。金融政策など、政府の政策によって、経常黒字国が低金利、円安に舵を切ると、外資は割安に不動産を取得できる。つまり、不動産価格が上がりやすくなる。

しかし、実際に関係している要素は、マクロ経済学だけではないのだ。


不動産価格を決める見えない価値

冒頭でも書いたが、不動産価格の難しさを表す言葉に「一物四価」がある。ひとつの土地に対して、4つの価値判断があるという意味だ。ちなみに四価とは、時価(実勢価格)、地価公示価格(公示地価)、路線価、固定資産税評価額の4つ。それだけ不動産の価値判断は複雑なのだ。実際の不動産価格の決定に大きな影響を与えるのは「見えない価値」だと平野さんは話してくれた。

一言でいえば、地名がもたらすブランド力です。これを作り上げるのは、まさに、ローマは一日にして成らずですね。ローマになるにあたり、街がどのようにできあがったかを考えるとわかりやすいです。

土地に対するイメージも不動産価格の決定に大きな影響を与えます。不動産価格とは若干話がそれますが、東京ディズニーランドや新東京国際空港には、東京という名前がついていますが、実際はどちらも千葉県にあります。それでも東京という地名を入れる理由は、東京という地名が持つグローバル都市間競争力の高さにあります」

「東京」を知らない人はいない。それだけネーミングにはインパクトがあるのだと証明するわかりやすい例だろう。しかし誰もが、東京を真似て、そのような都市を作れるかといえば、不可能に近い。

たとえば、中国の地方都市にいきなり、高層ビルが建ったとしても、周りが更地で何もないような場所だったらどうだろうか? 誰もそこに住もうとはしないだろう。公共政策として、生活インフラが初めに整備され、街づくりを行い、街ができて、人が集まり、コミュニティーが形成されて初めて、土地や物件に価値が生まれる。

「ただ、インフラがすでに整備されている現代においては、行政は公共政策のみを行えば良く、そこに魅力があれば、民間が勝手に投資をし、街の魅力を上げられます。近年で都市化を政策で成功させたのは、海外ではシンガポールと中東くらいかもしれません。

日本国内で行われている公共政策の事例としては、北陸新幹線による北陸の創造都市政策(文化、芸術を活かして産業化していく都市)などがまさにそれですね。実際に、土地の価格も高騰しました。

また、地域によっても、住宅であれば東日本震災後は、海沿いの不動産価格が下落し、地震に強い堅固な地盤を持つ地域の不動産価格が高騰しています。この事例には、リスクを割り引いた不動産価格形成も含まれます」と平野さん。

住みよい街=不動産価格が高いとは限らない

「少し古い調査にはなりますが、2011年の『世界で最も住みやすい都市ランキング』(エコノミスト・インテリジェンス・ユニット)では、実は大阪が東京よりも上位(大阪が12位、東京が18位)であることをご存知でしょうか。大阪は東京に比べて街がコンパクトで交通手段が充実しているほか、物価が安いという利点があります。

その上、京都や神戸といった観光地にも近い。外国人にとっては大阪の方が住みやすいと捉えられているのですね。でも実際には東京の方が土地の価値は高い。単に住みやすいという条件だけで、不動産価格が上がるわけではないんです」

また、外国人の住みやすい都市が、即座に不動産価格に直結するわけではない。ただし、外資が割安な不動産だと思い、そういう場所にお金が流れ出せば不動産価格も上がるだろう、と平野さんは見ている。

「結局は、みなさんの直感と大きく外れていないわけですね。基本は、この直感が大事。その上で、データを見たり人の話を聞いたり、ネットをチェックしたりと、総合的に判断することが大切ですね」と平野さんは教えてくれた。

平野和之さんプロフィール

平野様プロフィール写真

経済評論家。23歳で1部上場企業事業開発部課長に昇進し、インターネット投資、M&A、IPO支援等に従事。24歳でマーケティング会社を起業、30歳から現職。

著書は『図解でわかる経済入門 経済効果』『コンビニがなくなる日』『クビきられないマニュアル』など計6冊。

現在FM NAC5 レギュラー出演中。「ガイアの夜明け」「たけしのニッポンのミカタ!」「報道ZIP!」「EVERY、スッキリ!!」「NEWS ZERO」「みんなのニュース」「あしたのニュース」「とくダネ!」「めざましテレビ」「グッドニュース」「羽鳥のモーニングバード」「スーパーJチャンネル」「報道ステーション」「朝ズバ!」「アッコにおまかせ!」「THE NEWS」などテレビ出演も多数。

自らテレビ番組の報道、ドキュメンタリー、経済、経営においては監修も手がける。執筆やコメントも時事通信社、ダイヤモンド社、日経、日経BP社、読売、毎日、講談社 東スポ、小学館、プレジデント、リクルートなど多数。

主な講演のテーマは「アベノミクス3本の割りばしを中小企業はどのように矢にするか?」その他の実績はぐるなび経営大学講師、松下政経塾講師、全国各所商工会関連、金融機関等大企業など多数。