京都税務調査最終_02042016

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京都の大家さんを対象に税務調査が行われ、約50人が2014年までの3年間で計約3億円の所得税と消費税の申告漏れを指摘された。追徴税額は過少申告加算税を含む計約6000万円で、大半が修正申告したとみられる。

なぜ、京都にこのような問題が起こってしまったのか、京都在住の不動産投資家にインタビューを行った。

学生向けの賃貸住宅の入居者が増加

2016年1月8日付の新聞各紙で、京都の賃貸経営者約50人が大阪国税局の税務調査を受け、計約3億円の申告漏れを指摘されたことが大きく報じられた。

大学が集積する京都市北部(京都市上京区、北両区)では学生が増加している。その理由は、同志社大が3年前に実施した学部やキャンパスの再編。同志社大広報課によると、京都府京田辺市のキャンパスから文学部などを上京区のキャンパスへ移転させた他、新しい学部を新設した。

こうして上京区のキャンパスに通う大学生、大学院生は約2万人となり、再編前より約7000人増えたという。同志社大に通う学生の4割が1人暮らしをしており、単身者用の賃貸マンションの需要が高まっていた。

「観光地というイメージがあり、今はAirbnbなどの民泊で注目を浴びていますが、京都は『京都市の人口の1割は大学生』と言われるほどの学生街です。元々、学生をあてこんだアパート・マンションはたくさんあります」

そういうのは京都在住の不動産投資家のKAZIさん。本業は京都市内で大学教員をしている。

「私は関東の出身ですが、京都は一言でいうと大家さんパラダイスです。いまだに敷金・礼金がとれますし、更新料2カ月をしっかりとる大家さんもいます」

珍しく大家さんの立場が非常に強い地域で、需要も増えているというのだから、大家さんたちは笑いが止まらない状況だった。

「今回の京都の税務調査では『収入の一部を計上しなかったり、経費を過大に算入したりするなどのミスがあり、所得の申告額が少なくなっていた』とありますが、具体的な手口でいうと、10戸アパートであれば、その内2戸を別の口座に振り込むように手配して、別口座分を申告しなかったといったやり方があります」

このように過少申告加算税を含めた所得税と消費税の追徴税額は計約6000万円だった。なぜ、この地域に絞った税務調査が入ったのだろうか。

「それはわかりません。そもそも不動産賃貸業に税務調査はつきものと考えられています。地域のローラー調査でたまたま引っかかったのか、それともタレこみがあったのでしょうか」


税務調査には3種類ある

ここで税務調査について、簡単に説明しよう。税務調査とは、申告内容が正しいかどうかを帳簿などで確認して、申告内容に誤りが認められた場合や、申告する義務がありながら申告していなかったことが判明した場合には、是正を求めるもの。

調査には大きくわけて、次の3種類ある。

1.強制調査

「国税犯則取締法」に基づいて行われるもの。「査察調査」と呼ばれ拒否できない。映画『マルサの女』がまさに強制調査で、とくに悪質な脱税に対して行なわれる。

2.任意調査

一般的に言われる税務調査がこちら。任意調査は各税法上質問検査権に基づいて執行される。事前に告知され顧問弁護士が立ち会うケースが多い。税務上の不審の程度により「一般調査」と「特別調査」に分かれる。

3.お尋ね

税務署から届く「お尋ね」という文書で、取引内容や資金の動きなどを確認することを目的としている。状況によっては修正申告が必要。

一般的に言われる「税務調査」とは「任意調査」を指す。任意だけにいきなり税務署員が家に押しかけてくることはなく、税理士に立会いを頼むことも可能。税務調査を受ける場所も自宅や会社である必要はなく、税理士事務所で対応することもできる。

税務調査で指摘事項を受けた結果によっては「修正申告」を行い、追加で税金を支払う……追徴課税を支払うことになる。追徴課税は申告漏れや脱税といった理由で、納税すべき金額よりも実際に納税した金額が少なかった場合に、追加で支払うことになる税金のことを指す。多くのケースでは、税務調査の際に発覚する。

追徴課税は、不正確な申告に対する行政制裁的なものという意味合いがあり、次の5種類がある。

1.過少申告加算税

過少申告加算税は、期限内に行った申告に関する修正申告・更正があった場合に課される。追加で支払うことになる金額の中で、50万円までは10%、50万円を超える部分には15%の税率となる。

2.無申告加算税

無申告加算税は、期限後申告・決定を行った場合、期限後申告・決定に関する修正申告・更正が行われた場合に課される。50万円までは15%、50万円を超える部分に対しては20%の税率となる。

3.不納付加算税

不納付加算税は、法定の納付期限後に納付・納税の告知を行った場合に課される。追加で支払うことになる税額に対して10%の税率が加算される。

4.重加算税

重加算税は上記の3種類の加算税が課されるような状況で、悪質をみなされる場合に課される。その対象となる加算税が、過少申告加算税・不納付加算税の場合には35%、無申告加算税の場合には40%

また、遅れた期間に対して、「5.延滞税」という利息的な性格の税も課せられる。なお正当な理由がある場合、更正の処分が行われる前に自主的に修正申告すれば、課税されないケース、税率が軽減されるケースもある。


自身も税務調査を経験

もし不正確な申告があった場合、このように多額の税金を支払う可能性のある税務調査。実は、KAZIさん自身も税務調査の経験があるという。

「詳しく説明すると、私ではなくて私の父です。父は農業をしながら不動産賃貸業をしています。私自身も不動産を所有していますので、不動産については父の分も私がまとめて行っていたのですが、農業の申告は農協を通じてやっておりノータッチでした」

税務調査に入られたのは約10年前、対象は意外にも不動産ではなくて農業だった。

「地元の農家が野菜を売る市場があるのですが、その売上が無申告状態でした。これは、完全にこちらの非となりますが、細かい経費などもチェックされて、結局、5年分調査を受けて500万円程度追徴金を支払うことになりました」

農家と農協は密接な関係にあり、税務については農協の税理士に相談することができるため、顧問税理士がいなくても不便が無かったという。このときも、京都同様にそのエリアの農家へ一斉調査が入ったそうだ。

「詳しいことはわかりませんが、農業での出入金は農協を通じて行われるので、ここを押さえられたら一発のようです。芋づる式でたくさんの農家が調査に入られました。特徴としては、専業農家ではなくて不動産賃貸業をしている農家だけが対象のようでした」

税務調査といえば、顧問税理士が対応するものという印象があるが、顧問がいない場合はどうなるのだろうか。

「農協の税理士はあてにならず、私が父に代わって対応しました。日中は仕事をしていますから、19時以降の時間帯に調査を行って、全部で2カ月くらいかかりました。経費をひとつずつチェックして、『これは認める、認めない』とやっていきました。

おそらく狙われる業種というのがあるのでしょうね。サラリーマン投資家の方はしっかり管理されているでしょうが、昔ながらの地主や農家はまだまだどんぶり勘定が多いですからターゲットになりやすいのかもしれません」

結局のところ、目をつけられたら逃げられないのが税務調査。不正申告するのはもちろんご法度だが、必要経費についてもきちんと記帳を行い、説明できる状態にしておくのがベターだ。

KAZIさんプロフィール

京都在中の大学職員で京都市内に新築アパートを建築中。実家は地主で農家、10年くらい前に税務調査を受けた経験があり。