美原さん1月最終_02052016

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こんにちは、三浦隆です。今回は特別企画として、「マイナス金利」について楽待さんから受けた質問にご回答します! 不動産投資に与える影響はいかなるものか、私の見解をお伝えできればと思います。

Q.マイナス金利が日本経済に与える影響とは?

A.景気が浮揚してくる可能性あり

過去、北欧諸国やスイスで導入事例があるようですが、世界第3位の経済大国である日本で導入された場合、経済がどうなるのか、マーケット参加者は読み切れていないと思います。それが、政策決定発表後の株価に表れて、急激な下げになっています。「先行きが分からないから、とりあえず売っておこう」という感じです。

マイナス金利導入の狙いは、金融機関が日銀に預けて滞留している資金を融資などの形で市中に放出させて、世の中にお金を回すことです。この目標は、アベノミクスが始まったころから掲げられており、金融庁は中小零細企業向け融資を伸ばしているか、定期的にチェックしていました。

しかしながら、リーマンショックからようやく立ち直りかけてきた金融機関としては、融資基準を甘くするわけにもいかず、政府が思ったほど融資拡大とはなりませんでした。今回のマイナス金利導入は、金融機関の融資拡大を促す、強いメッセージとなっています。

狙い通り、各金融機関が「日銀に資金を寝かして金利を取られるくらいなら、貸出をしたほうがマシだ」と融資を出し始めれば、世の中にお金が回り始めますから、短期的には日本経済にとってはいい影響が出ると思います。

ただし、低属性先への融資など無茶な融資が増えてしまう可能性も高く、そうなると、長期的にはそれらが不良債権化して、景気悪化へとつながる可能性もあります。

一方で、各金融機関が「無理な貸し出しをして、それが未回収となって損をするくらいなら、日銀に金利を取られるほうがマシだ」と判断すれば、融資スタンスは従来と変わらず、資金が回ることでの景気の急浮上というシナリオは実現しづらいということになります。

このように、金融機関がどう対応するのかが不明確なため、現時点では景気浮揚につながると明確には言えない状況です。

ただし、政府のメッセージが出ていることもあり、すべての金融機関が融資を現行通りというスタンスをとるとは考えづらく、徐々に市場に資金が流れ出し、景気は浮揚してくると思います。


Q.銀行の融資は出やすくなる?

A.融資が出やすくなるのは地方銀行

先ほどもお伝えしたとおり、各金融機関のスタンス次第です。「日銀に資金を寝かして金利を取られるくらいなら、貸出をしたほうがマシだ」となれば、一気に融資は出やすくなります。

逆に「無理な貸し出しをして、それが未回収となって損をするくらいなら、日銀に金利を取られるほうがマシだ」と判断すれば、融資スタンスは従来通りでしょう。

この場合、日銀に金利を取られる部分を穴埋めするために、今まで以上に、証券部門や国際部門、資産運用部門の強化、投資信託販売手数料や保険窓販手数料などに走ると思います。

よって、各金融機関がどのようなスタンスをとるのかがポイントとなってきます。また、「スタンス」は、すべての金融機関が同じ方向を向くわけではなく、それぞれの置かれた状況によって異なる立場となるはずです。

私の予想では、メガバンクは巨大な証券部門を持ち、投資信託などの窓販も充実しているので、別の収入を得ることで、マイナス金利を回避する方向に行くと思います。

また、信用金庫は信金中央金庫という管轄組織があるため、ダイレクトな影響は少ないのではないでしょうか。さらに信用組合は、そもそも日銀に当座口座を持っていませんので、影響は少ないと思います。

では今回のマイナス金利の影響を一番受けそうな金融機関は一体どこかといいますと、それは地方銀行です。地方銀行は、メガバンクほどには証券部門や国際業務は強くなく、収入構成の大部分は融資金利となっています。

これを改善すべく、資産運用の一環として不動産私募ファンドやJ-REITなどに大量の資金を積極的に投じてきましたが、これ以上増やせないレベルにまで残高が積みあがっているようです。マイナス金利発表前から、地方銀行は融資以外の別の収入源を確保しようと懸命になりながらも、うまくいかない状況が続いていました。

そうなると、今回のマイナス金利導入により、本業回帰で融資を増やして金利収入を増やそうという流れになってくるものと思われます。

Q.不動産投資の融資にはどんな影響がある?

A.貸出先は拡大、金利の急激な上昇はなくなる傾向へ

拡大すると思います。ここからは融資拡大しようとしている地銀の融資という観点に絞ります。貸し付ける側としては、当然ながら未回収となることを避けたいという思いがあります。そうなると、必然的に属性のいい先への融資をやりたがります。

ただ、属性のいい融資先が、そう簡単にたくさん見つかるわけもありません。そうなりますと、既存顧客に注目するのではないでしょうか。すでに貸し付け実績があり、きちんと返済がなされていれば既存顧客ほど、「いい属性」の顧客はいないからです。

取引が始まった後で、その担当者と次回の融資の可能性について話をすることがあります。そのなかで、よく耳にするのが、「うちの支店では3億円までが支店長決裁なので、3億円までは貸せます」といった話があります。

私は、この枠のようなものが引きあがっていくのではないかと思っています。よって、すでに不動産投資資金を借り入れている人にとっては、借入可能額が増額となる可能性がありチャンスです。

あわせて、新規取引先への融資実績を増やす目的で、すでに借り入れている法人ではなく、新たに新設法人を作ってその法人に融資をしたい、という要望を銀行が分からされる可能性も増えてくると思います。

また、今回のマイナス金利導入で、金利の急激な上昇が起こる可能性が、さらに低下しました。よって、金利上昇を恐れて不動産投資を躊躇していた人はチャンス到来とみるべきでしょう。


Q.不動産価格や家賃にはどのような影響がある?

A.不動産価格は上昇、家賃は現状維持

融資が出やすくなれば、不動産を買いたい人が増え、価格は上がっていきます。今回は速いペースで上昇していくとみています。

家賃については、J-REITに組み込まれるようなSクラス、Aクラス物件(とくに事務所・店舗)は、まだ上昇のスタート地点とみる動きもあります。我々がターゲットにしている賃貸マンションについては、新築物件を除いて、現状維持となるのではないでしょうか。

Q.マイナス金利はいつまで続く?

A.市場に資金が回り始めるまで

貸付実行額が増加し、市場に資金が回り始めたと判断されるまで続くでしょう。

Q.マイナス金利のマイナス幅が大きくなることはある?

A.今後大きく動く可能性あり

スウェーデンでは-1.1%まで下がったことがあるそうです。現在の-0.1%はまだまだ入り口段階ではないでしょうか。

また、冒頭で、なかには、「無理な貸し出しをして、それが未回収となって損をするくらいなら、日銀に金利を取られるほうがマシだ」と証券部門など別の収入を得ようとする動きも出てくるとお話ししました。

現在の-0.1%程度の金利水準では、それをカバーする売り上げを別で上げることは容易かもしれません。しかし、これが5倍の-0.5%や10倍の-1%となると別の収入でカバーするのが困難になってきます。

そうなると徐々にメガバンク等も貸し出し増加に動く可能性があります。「必要に応じてさらなる追加緩和の準備がある」というのは、このようなことを含んだメッセージだと思います。

貸し出し増加に動くということは、これまで融資がつかなかった案件でも、融資がつく可能性が出てくるということです。つまり、物件を購入しようとしている人には、チャンスな時期と言えるでしょう。

視点を「売り手」に変えても同様です。買い手に融資がつきやすい=売りやすいと同意ですので、こちらもチャンスと言えます。前述のとおり、不動産価格は上昇傾向なので、売却益を狙うには良い時期かもしれません。

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