融資特約最終_02052016

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こんにちは。銀座第一法律事務所弁護士、鷲尾です。今回は、ローン特約についてのご相談です。

ローン特約を付けて契約してしまったのですが、想定金利よりも高く、契約を解除したいと考えています。可能でしょうか?

融資特約が利用される理由

不動産の売買契約において、「買主が融資の承認を得られなかった場合には、買主は、本売買契約を無条件で解除することができる。解除された場合、売主は、受領済みの金員を遅滞なく買主に返還しなければならない」といった特約がつけられることがあります。このような特約を、ローン特約とか融資特約と呼んでいます。

不動産を購入するにあたっては、売買価格が高額なことが多いため、代金の全部または一部が金融機関からの融資を利用して支払われることが多くあります。

ところが、融資を利用するつもりで売買契約を締結したのに、いざ融資を申し込んでみたら金融機関から断られてしまったということもないとはいえません。

融資が受けられないと買主は売買代金を用意できない可能性が高いため、売主と取り交わした売買契約を解消することができなければ、手付金を没収されたり売主から違約金を請求されたりといった大変なことになってしまいます。

そこで、このような事態を回避するために融資特約がもうけられるのです。


融資特約により、売買契約を解除することは可能

融資特約により契約が解除となる場合には、手付解除や契約違反による解除の規定は適用されず、買主は、手付金を没収されたり損害賠償責任を負うことなく売買契約を解除することができます

また、融資特約に基づいて売買契約が解除となったときは、解除により売買契約は不成立になったものと同視することができるため、仲介業者に対しても仲介報酬を支払う必要はありません

もし仲介業者が売買契約締結時に委託者からすでに仲介報酬を受領していたときは、融資特約により売買契約が解除となったときはただちにこれを依頼者(買主)に返還しなければなりません。

国土交通省の定める標準媒介契約約款でも、「目的物件の売買の契約が、代金についての融資の不成立を解除条件として締結された後、融資の不成立が確定した場合、または融資が不成立のときは依頼者が契約を解除できるものとして締結された後、解除の不成立が確定し、これを理由として依頼者が契約を解除した場合は、宅建業者は、依頼者に、受領した約定報酬の全部を遅滞なく返還しなければなりません。」と定めて、仲介業者は仲介報酬を返還すべきであることを明らかにしています

融資特約の2つの方式

現在使用されている宅地建物取引業協会の契約書には、融資特約が「融資の全部または一部について承認を得られないとき、また、金融機関の審査中に融資未承認の場合の契約解除期限が経過した場合には、本売買契約は自動的に解除となる」などのように記載されています。

このように、融資が得られなかった場合に売買契約が自動的に白紙解約となるような定め方を「解除条件型」といいます。

これに対し、たとえば「融資の全部または一部について承認が得られなかった場合は、この契約締結後30日以内に限り、買主はこの契約を解除することができるものとする。」などと記載されている場合もあります。

この場合は、買主が解除を申し出ない限り融資特約による契約解除の効力は生じません。これを「解除権留保型」といい、自動的に契約が解除となる解除条件型と異なり、買主が契約を解除する意思があることを明らかにしなければなりません。

上で紹介した標準媒介契約約款の前半の「代金についての融資の不成立を解除条件として」が解除条件型で、後半の「融資が不成立のときは依頼者が契約を解除できるものとして」が解除権留保型にあたります。

このように融資特約の定め方によって効果が異なるため、融資特約がどのように定められているかについては、契約書をよく読んで注意しておくことが必要です。

なお、融資特約の条項の記載からは解除条件型か解除権留保型かが不明なこともあり、売主と買主とで認識にズレが生じて融資特約による解除の有効性をめぐってトラブルとなることがあります

このようなときは、融資特約の条項の記載だけからではなく、売買契約締結の際の説明や契約締結に至るまでの経緯などを総合的に考慮して判断すべきとされています。

一般には、買主は、自己資金が不足するからこそ金融機関から融資を受けて不動産を購入しようとしているのですから、買主に有利に解除条件型の特約として売買契約を締結したものと判断されることが多いと思われます。


融資特約において定めるべき事項

融資特約がついていても、買主として、いつまでにどの程度、融資に向けての努力をすべきか等についてトラブルとなることが多いので、融資特約には次のような事項を明記しておくのがよいです。

1.融資申込金融機関
2.融資金額、金利、借入期間
3.融資が承認されるまでの期間
4.融資が承認されなかった場合の対応策

もし、融資申込先が空欄だったり「A銀行など」のように曖昧だったりすると、「A銀行で融資が通らなかったので解除したい」といっても、仲介業者から、ノンバンクに打診したところ融資可能との回答なので融資特約に基づく解除はできないなどと言われたりして、トラブルになりかねません。

また、融資金額の定めがなかったりすると、たとえばローンを4000万円、1000万円は両親に援助してもらう予定で代金5000万円で売買契約を締結した、ところが当てにしていた両親から援助が受けられず、銀行からも4000万円なら融資可能だがこの金額を超える融資はできないと断られてしまったというような場合、融資特約に基づく解除が可能か、問題となりかねません。

このような場合、融資金額が5000万円と定められていれば融資特約による解除が可能ですが、融資金額が4000万円と定められていたような場合、融資が不成立となったわけではないので、融資特約による解除はできないとされる可能性が高いでしょう。資金計画については、あらかじめ十分に準備しておくことが必要です。

買主には融資を受けられるよう努力する義務がある

融資特約があるからといっても、買主が常に「融資が受けられなかった」という理由だけで売買契約を解除できるとは限りません

売主にしてみれば、売買契約を結んだ以上、その物件を買主に引き渡せるよう準備を進めるでしょうし、その物件を他の人に売ることも控えるのですから、契約を交わした買主としてはその信頼に応えなければならないのです。

判例も、融資特約のある売買契約を締結した場合には、買主に、契約締結後すみやかに金融機関に融資申込みを行って融資契約成立に向けて誠実に努力する義務があるものとしています(東京地裁平成9年9月16日判決、判時1647号122頁)。

したがって、売買契約を締結した後に買主の気が変わって、手付金を無条件で返還してもらい、他方で仲介業者への報酬の支払いを免れるために、融資申込手続をあえて行わなかったり買主自ら融資を承認しないよう金融機関に働きかけるなど、買主の責に帰すべき事由により融資否認させたというようなときは、信義則違反などとして、買主は融資特約に基づいて売買契約を解除することはできないのです。

結論

○融資特約が解除できる成功率:30%程度

さて、それではご質問にあるような、承認された融資が想定金利よりも高かったという理由で融資特約による無条件解除をすることは可能でしょうか。

ご質問のケースでは、融資特約にどこまで具体的に定められていたかが明らかではありませんが、もし融資特約に上限金利が条件として定められていて、承認を得られた融資の金利がそれよりも高いときは、買主は融資特約により売買契約を解除することができます

これに対し、たとえば融資特約には金額だけしか定めがなく、金利や融資機関については定めがないという場合には、融資特約による解除が認められない可能性があります。

ご質問のケースで、仮に金利等については定めがなかったとすると、売買契約の締結までの交渉経過などにもよるため一概にはいえませんが、融資特約による解除が認められる可能性は30%程度というところでしょう。