こんにちは。才津です。今回は、RC物件を実際に運営した場合の「手残り額」がどれくらいになるのか、といった内容を中心にお話したいと思います。
事例として2009年末に私が購入した1棟目のケースです。
購入時の築年数は28年、現在、築34年程度のいわゆる築古のRCです。満室時の家賃年収は2311万円(月額約193万円)、これに太陽光発電、自動販売機などの収入が他にあります。
昨年、1年間の支出で一番大きいものとして、銀行返済920万円(月額77万円弱)、次に固都税が190万円、管理料として家賃の5%(115.5万円)があります。この時点での手残り額は1085万円程度。
これからリフォーム費用、客付けをしてもらった際に支払う広告料などが別途かかってきます。この物件の場合、築34年とかなり古い物件ですが客付けに困ったことはなく、むしろ空室待ちが出るほどの人気物件となっています。
実際、広告料として支払うのは月額家賃の0.5カ月分とかなり安めですし、入居期間も長く、1年を通して退去がほとんど出ない物件です。また、退去後のリフォームも原状回復程度(下手をするとクリーニング程度)で済むことがほとんどです。
これまで6年間運営してきた感覚では、これらの経費は年間100万円~200万円程度で推移しています。(少ない年は100万円以下)
上記の収入、支出を総合すると、この物件からの手残りとしては、800万円~900万円程度といったところでしょうか。
築古RCにもかかわらず、維持費が少ない理由は?
これだけの築古物件で、なぜこれだけの高稼働、かつ、リフォーム等がかからないのかというと、簡単に言うと「家賃が安い」からです。
購入後、運営してみてすぐに、「家賃が安すぎる」=「家賃を高くできる」ということに気付きましたが、あえて家賃は現状のままにしておきました。その理由は「物件を買い進めたい」からです。
家賃を高くすると、どうしても空室期間が長くなりますし、退去後のリフォーム費用も高くなってしまいます。たしかに計算上の利回り(満室時の家賃年収)は高くなりますが、空室ロスや支出(リフォーム代、広告料)が発生し、手持ち資金を効率的に回していくという考え方からはムダが多くなってしまいます。
これからもどんどん物件を買い進めたいという本来の目標から考えると、無理に家賃を上げて利回りを高くし収入を多くするよりも、現状の家賃のまま支出を少なくおさえる方が、最終的な手残り額が多くなる上に、決算書もよくすることができるという判断をした、ということです。
シミュレーションはあくまで手堅く!
この物件、購入前のシミュレーションの段階では、空室率などを厳しく考慮した場合、1年間の手残り額は280万円程度、満室で推移した場合でも600万円程度しか手残りがないだろうという前提で購入の判断をしています。
つまり、実際の手残り額の方が、購入前のシミュレーションよりも多いという結果になっています。この辺は意外に感じられる方が多いと思います。やはり築古RCはお金がかかるというのが常識? ですので、この物件が優秀なだけで、他の物件ではありえないという感想になると思います。
もちろん、この物件がたまたま優秀なだけで、通常はこれだけの額が残るのは稀かもしれません。ただ、私がここで言いたいのはこの物件の優秀さや、築古RCでも手残りはこれだけあるんだ、凄いだろう、ということでもありません。
不動産というのは、購入前にほとんどの支出がどれくらいになるかを予想することが可能です。かつ、売上(満室時の家賃年収)の上限をほとんど上げることができないという前提条件があります。
また実際に購入し、運営してみないと、その物件が運営しやすい物件なのかどうかもわかりません。私もこれまで16棟物件を購入していますが、なかなか満室経営ができなかった物件もあります(1棟だけですが)。
購入前のシミュレーションをしっかり行い、その物件のリスクの幅を把握することが重要です。リスクの幅を事前に把握しておくことで、物件を購入した後に発生するほとんどのことは対応することが可能です。
今回の物件も、購入前の判断としては、空室率、リフォーム費用などを厳しく計算すると280万円程度しか手元に残らないという前提で購入の判断をしていますが、実際に運営した結果は、いい意味でかなり乖離が出てきています。
購入前にしっかりとシミュレーションを行うことで、購入した物件がどんな物件であってもリスクなく投資ができるという状態をつくるというのが大事なことであって、購入後の手残りがどれだけ多かったかはあまり大事なことではない気がします。
ただ、私が不動産投資のアドバイスをする様になって気にかかるのが、矛盾するようですが、「厳しくシミュレーションするだけでは、本来の物件の力が見えなくなってしまう」という事です。リスクに注目しすぎることで、物件を購入できる機会を逃している、ということです。
初心者のうちは見えなかった経験を積むことで、空室対策のスキルも向上しますし、物件の見極めをする目も養われてきます。単純に厳しくシミュレーションするだけではなく、ある時は厳しく、ある時はゆるめるなど、現実に即した臨機応変な判断が必要なのではないかと思います。
例えば、家賃を上げれそうだけれども入居が決まる間でのスピードを重視し、「家賃を上げない」という判断をするなどです。この辺は投資家としての醍醐味だと思いますので、ぜひ時間をかけて思考を深めていってください。
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