スイスに預金最終_01222016

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ヨーロッパの一国であるスイス。日本よりもはるかに小さい面積のこの国は、「富裕層がお金を預ける国」として、古くからよく名前が挙がる。とはいえ、それらの真偽はよくわからず、都市伝説のように捉えている人も多いのではないだろうか。

富裕層がスイスにお金を預けるという実態が本当にあるのだろうか。あるとすると、なぜそこまでスイスにお金が集まるのか。著書に『なぜ、富裕層はスイスにお金を預けるのか』がある、T&T FPコンサルティングの高島一夫さんに話を聞いた。

歴史を持ったプライベートバンクで、お金を「守っている」

巷でよく聞く「富裕層がスイスにお金を預ける」という話。高島さんに聞くと、やはりそういった事実は古くからあるようだ。

「スイスのプライベートバンクに集まってくる富裕層のお金は相当なもので、国全体の収益のうち1/3はプライベートバンクによるものです。スイスは国策として海外からの預金を募っており、この分野では確固たる歴史を持っていますね」

プライベートバンクとは、融資などに頼らず、富裕層のお金を預かって運用する小型の銀行のこと。運用の手法は株や債券など多岐にわたり、顧客の目的や希望に合わせて選択する。スイスにはプライベートバンクが非常に多く、彼らは「お客からフィーをもらって、富裕層の持つ莫大な資産を運用しています」と高島さんは語る。

「古くは『スカルノ大統領(インドネシアの初代大統領)がスイスに多額の資産を保有していた』という噂などもありました。また、日本国内・海外問わず、代々続く一族会社の人たちの中にも、スイスに預けている人は多いです。ただし、『誰が預けているか』という情報は堅く守られるため、あまり表に出回りません」

では、なぜ富裕層たちはスイスにお金を預けるのだろうか。

富裕層がスイスにお金を預ける理由として、高島さんは「歴史」と「安全性」を挙げる。

スイスは、世界の中でもとくに資産運用の歴史が長い国といえます。スイス人はかつて国に産業がなかったため、他国の戦争へ傭兵に行きました。傭兵に行けば多額のお金をもらえますが、戦死する可能性もあります。

そこで、本人が亡くなってもお金をきちんと未来まで守っていくプライベートバンクの文化が生まれたんです」

このような背景で育まれたからこそ、プライベートバンクには独特の慣習があるという。前出の「誰が預けているか」といった情報が堅く守られるのもそのひとつだが、他にも、「顧客の担当者は、その人がリタイアするまで原則的には変わりません」と高島さんは話す。

そして、これらの歴史に裏打ちされた「安全性」こそ、富裕層がスイスに預金する最大の理由だと、高島さんは説明する。

「まず、スイスは永世中立国であり、他国の動乱に巻き込まれにくいこと。そして、経済状況としても非常に安定しています。さらに、資産運用の文化があることにより、スイスには世界中の優秀なファンドから情報が入るんですね。それは、経済の先行きを知るプライベートバンクが多いことにつながります。

これらを理由に、富裕層は自分の資産を『守ろう』とスイスに預けるのです」

ここで大切なのは、スイスにお金を預ける目的があくまで「資産を守る」ためだということ。高島さんは「資産を増やしたいというより、少しでも減らしたくない人が『保全』として預けるのです」と言う。

資産の保全と聞いてもピンとこない人が多いかもしれない。しかし、これらは決して富裕層に限った話ではなく、私たちも見習うべき事柄のようだ。