老後貧乏_Photographee.eu-Fotolia

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少子高齢化が進む中、近年問題化しているのが高齢者の貧困だ。1人暮らしのお年寄りが1人でひっそりと亡くなっていた……そんな報道を目にすることは少なくない。

生前に病気に気づいていたにもかかわらず、医療機関を受診するお金がないために放置しておいたことが原因のひとつだ。

老後に直面する貧乏の実態はどのようなものなのか。老後の貧乏はなぜ起きるのかを、NPO法人ほっとプラス代表理事で、『下流老人』の著者でもある藤田孝典さんに話を伺った。

700万人の高齢者が貧困にあえぐ。その生活の実態とは!?

日本には約3300万人の高齢者がいるが、うち約700万人(22%)が貧困状態にあるという。藤田さんが著書でいう貧困(下流老人)とは、「生活保護基準相当で暮らす高齢者およびその恐れがある高齢者」を指す。

1人暮らしでは税引後の所得ベースで年間122万円、2人暮らしだと170万円という金額が貧困ラインであり、これらの金額以下で生活している高齢者が貧困ということになる。一体なぜこのようなことが起こるのだろうか。

社会保障制度や社会福祉制度の未整備が原因だと考えています。数十年前と現在の日本とでは状況が違います。

たとえば、非正規雇用の増加により子どもからの資金援助が見込めない状況や、金利低下により金融機関にお金を預けていればお金が増えて老後の生活が安心できるという時代ではありません。

日本は先進諸国の中でも、老後の生活を身内に依存する傾向が強いです。そうした傾向や社会的構造がもたらしている問題でしょう」

だが、かつての日本でも老後、経済的に逼迫するケースはあったのではないだろうか。最近になって老後の貧乏が社会問題化しているのはなぜなのか。

「非正規雇用や世帯人数の減少、核家族化などで、老後の生活を支えるセーフティーネットが崩壊し、老後、金銭的に困窮した人を支える人がいなくなってきているため、問題が顕在化しているといえます」

高齢者の平均貯蓄額の数値にも注意が必要だという。

高齢者の平均貯蓄額は1270万円です。この数字だけ見ると貧乏とは程遠いように感じられるかもしれません。しかし、あくまで平均値なので、統計対象の中に大金持ちがいれば平均値を引き上げてしまいます。平均値よりもあてになるのは中央値です。中央値で見ると、高齢者の貯蓄額は大体400万円から500万円です。

500万円の貯蓄がある高齢者は全体の40%、貯蓄なしの高齢者は16.8%います。年金の満額が6万5000円で、ここから家賃を差し引けば生活は苦しくなり日々の生活だけで精一杯で、趣味や社会活動をするという余裕はありません」

悲惨……老後貧乏のリアルな実例

ここで、老後貧乏に陥った2つのケースを見てみる。

○ケース1:生涯独身のAさん(76歳)

独身1人暮らしで家賃3万5000円のアパートで生活している。現役時代は飲食店などに勤務していたが、40代のときに親の介護で退職し、両親を看取った後は首都圏に仕事を求めてやってきた。その後は介護の仕事などに就き、65歳で退職した後は年金で暮らし始めることになった。

しかし、年金に加入していない時期もあり、受給される年金額は想像以上に少なかった。生涯独身のため頼る身内がなかったが、Aさんには500万円ほどの貯蓄があったという。

しかしその後、糖尿病や腰痛での医療費がかさみ、貯蓄はみるみる減っていき、一時は野草を食べて飢えをしのぐまでに。年金から家賃を引くと手元にはほとんど残らず、現在は年金で足りない分は生活保護を受けて生活している。

○ケース2:うつ病の娘(48歳)を支える老夫婦(夫77歳、妻74歳)

現役時代の年収は高くなかったが、金銭的に困ることはなかったという。夫妻の転機は、娘が中学生のときにいじめに遭い、不登校になったことだ。夫妻からあらゆるサポートを得て、娘は短大を卒業したものの、その後うつ病にかかり、卒業から30年間一度も働いていない。

一戸建を売却して賃貸アパートに住んでいるが、夫婦の悩みは娘の今後のことだ。

年金暮らしの今、娘の生活費まで負担するのは厳しい。現役時代に貯蓄ができなかった夫婦にとって、毎月の年金だけが命綱だ。夫妻の年金は2人分で17万円

金銭的にギリギリの状況では、親子ゲンカが自然と多くなる。現役時代の夫妻は老後の生活に十分な貯蓄ができる状況ではなく、当時から今まで娘の生活を背負ってきたため、余計に金銭的に逼迫する状況に直面している。