3月決算_milatas-Fotolia

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3月にある銀行の決算。この時期、どこの銀行も少しでも多くの収益をあげようと必死になる。ならば、3月にあわせて新規の案件を持ち込みたいところだろう。しかし、それには無理がある

なぜなら、ゼロから審査するには時間がかかりすぎるからだ。場合によっては数週間を要するケースもあり、決算月に持ち込まれても決算に間に合わないことも往々にしてある。よって決算だからといって、有利な条件で融資を受けることは難しい。

では、この時期にすべきことは何か? 2つ挙げてみよう。

1.借り換え ~有利な条件で借りられる可能性アリ~

新規の案件は難しくとも、決算だからこそ有利な条件を引き出すことのできる例外がある。それは、融資の借り換えだ。

「借りた融資は、返済が終わるまで最初の銀行を利用するもの」

今となっては、そんなことを考えている人は随分と減少した。ほとんどの人は、条件さえ合えば他の銀行へ借り換えてもよいと考えているのではないだろうか。実際に多くの銀行が、他行の融資金を借り換えてもらおうと、そのチャンスを虎視眈々と狙っている

投資家にとっておいしい案件がそうあるものではないのと同様、銀行にとってもおいしい融資案件はそうあるものではない。銀行の都合に合わせてマンションが建つわけでもないし、宅地開発が行われるわけではない。

しかし、銀行の支店に課せられたノルマはそんな事情など考慮されない。目標達成のためには、他行融資の借り換えが不可欠なのだ。融資目標をぜひとも達成したい銀行にとっては、少々金利面で無理をしてでも案件を通したいと考えている。

ただし、銀行員というのは自分がリスクを取ることを極端に嫌う人種である。自分が獲得した案件が焦げ付くことと、目標が未達に終わること、この2つを天秤にかけたなら、間違いなく後者を選ぶのが銀行員である。

だが、借り換えられる銀行もたまったものではない。借り換えられたために、融資金の残高目標が未達に終わってしまっては面子が丸つぶれとなるため、どんなことをしてでも案件を防衛したいところだ。

しかも、3月決算間近となれば、もはや他の案件でカバーすることは不可能である。こうした銀行側の思惑もあり、思い切った金利の引き下げを獲得できる可能性はある


2.確定申告の提出 ~3月に果たさねばならない義理~

銀行から融資金を借り入れていれば、債務者として果たさねばならない義理もある。というのも、この時期は個人にとっては確定申告の時期でもある。

住宅ローンの場合は毎年の決算状況の報告を求められることはないが、事業として不動産投資を行っている場合には、申告書を持参し業況の説明を行うことが筋である。

「不動産の稼働率はどうなのか」
「大規模修繕や突発的な支出はなかったのか」
「賃料の値下げは行わなかったのか」
「当初の事業計画書との乖離はないか」

こうしたことを銀行の担当者に説明すべきだろう。それは債務者が債権者に対し行うべき説明義務でもあるが、不動産を所有している当人のためでもある。

最近の銀行は債権、債務者をさまざまな面から評価し格付を行うのが当たり前だ。そのため、返済が滞るなどもってのほかだが、決算状況、業況が常に把握できているかどうかも大きな要素となる。

融資実行の時には決算書や申告書を提出するが、その後は「必要ない」と提出を拒む債務者が実際にいる。債権者と債務者が良好な信頼関係を維持するためには決算書や申告書の開示は不可欠だ。

もし、決算書や申告書の開示を求められたにもかかわらず、拒否したらどうなるか。直ちに期限の利益を喪失し、銀行が融資金の返済を求めてくるといったことはないが、悪質なケースでは要注意取引先として分類され、今後の取引に悪影響が及ぶ可能性もある。

このように、銀行と投資家は互いに信頼関係があってこそ良好な関係を構築し、維持することができる。一方が権利を振りかざすだけでは、Win-Winの関係は築けないものだ。債務者は特に、このことをしっかりと意識しておく必要があるだろう。

以上、3月の銀行決算に備えて、実践したい2つのコトをご紹介した。

高い金利で借りてしまっている人にとっては、借り換えをすることで、少しでも金利を下げるチャンスとなる。また、決算状況を報告すれば、銀行との良好な関係を作るきっかけとなる。いずれにしても3月は、重要な時期と言えるだろう。