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電車通勤時に大きなストレスとなる満員電車。なるべくなら避けたいが、そうはいかないのが実情だ。ところで、この満員電車のストレスにまつわる面白い研究結果が、イギリスの研究者によって発表された。
その研究者によると、満員電車で感じるストレスは、戦場にいる兵士が感じるそれと同じレベルだというのだ。戦場に行った経験がないのでなんとも言えないが、たしかにピーク時における満員電車の混み具合は、殺人的とすら表現したくなるほどである。
そこで今回は、満員電車の快適な過ごし方を、「電車通勤士」を名乗るサラリーマン、田中一郎さんにアドバイスしていただいた。田中さんは片道2時間の通勤を30年以上続け、大混雑と乗客のマナーの悪さと闘った結果、独自の乗り方を開発。
その理論をまとめた『電車通勤の作法』を上梓するなど、満員電車と真摯に向き合う、いわば電車通勤のプロフェッショナルだ。早速、聞いてみよう!
見知らぬおじさんの顔が目の前に……
――まず、満員電車で感じるストレスは戦場で感じるものと同じレベル、との研究結果について、どうお考えですか?
「やや大袈裟な気もしますね。ですが、危険という意味では近いかもしれません。実際、車内での些細なトラブルから喧嘩に発展し、ときには刃傷沙汰も起きています。また混雑しているホームから落下する可能性もゼロではありません」
――ちなみに、今では快適な電車通勤生活をおくられている田中さんですが、そのテクニックを編み出す以前は、満員電車のストレスは何に匹敵するとお考えでした?
「会社を辞めたくなるレベルでしたね(笑)そもそも私が独自の電車通勤術を開発するようになったのは、電車内でトラブルに遭うことが多かったからなんです。理由もないのにタチの悪そうな人に絡まれたり、座ったシートが汚れていたりと、とにかくそういう目に遭いやすかったんですよね。
そうはいっても会社を辞めるわけにはいきません。それでこのままではストレスに潰されてしまうと考え、車内での快適な過ごし方を研究し、実践するようになったんです」
――では、一般的に満員電車ではどんなことがストレスを生むのでしょうか?
「一番大きいのは、やはり身動きもとれないほどのすし詰め状態になることでしょう。見知らぬおじさんの顔が、吐き出す息を感じるほどすぐ目の前にあるのは、なかなか不快なシチュエーションです。
あれほど人と人の距離が近くなるなんて、日常生活ではありえません。その状態が1駅間ぐらいだったらまだ耐えられますが、毎日10分、20分とも続くとなると、そりゃあ会社に行くのも嫌になりますよ(笑)
また、痴漢と誤解されないように行動する必要もあります」
ではここで、混雑以外にどんなことがストレスになるのか、田中さんの経験を聞いたのでまとめてみた。
・満員電車に乗れずに、はじかれてしまう
・座るために詰めて下さいと言ったら怒られた
・隣の人と肘がぶつかる
・シートが汚れている
・イヤフォンからの音漏れ
・冷房が効き過ぎ
・車内での化粧
・車内での携帯
・車内での飲食
「ストレスというのはそれぞれ感じ方が違うかもしれませんが、ここに挙げたのは多くの方が感じる原因だと思います」
何かに没頭して外部からの情報を遮断する
――では、具体的に田中さんはどのように、ストレス回避術を編み出したのですか?
「私の場合はまず、明らかにおかしい行動をとっている方がいたり、異臭を感じたりしたときなど、何か異常を察知したら車両を移るなどその危険から回避します。
なにせ様々なトラブルに遭ってますから、危険に対する感度が高いんです。アドバイスといえるかは分かりませんが、少しでも異常を感じたら、とにかくそこから逃げるようにしたほうが良いと思います。
そして矛盾するようですが、車内で落ち着けるポジションを確保したら、自分の気配をひたすら消して空気になりましょう。そして読書でも人間観察でも、また空想にふけるなど、趣味の世界に没頭して外部からの情報を遮断する。そうすれば、あまり周りのことが気にならずに過ごせます」
――たしかに自分の殻に閉じこもれば、周囲で起きていることは感じないで済むかもしれませんね。
「また先ほど、車内での化粧も不快になると申しましたが、見方を変えると結構面白いものなんですよ。化粧している女性を見ていると、その変身ぶりに驚かされます。別人に入れ替わった! なんてことも多々ありますね。ただし、ジーッと女性を見るのは厳禁です。それはそれで相手にストレスを与えることになりますから。
要するに私がストレスを感じないためにしていることは、とにかく何かに没頭して外部からの刺激を感じない状態にすることです。読書でも、新聞を読むでもなんでも良いです。化粧している女性をチラ見するなど人間観察もオススメです。
そして最後に、もし本当に満員電車がものすごいストレスになっているようでしたら、転職することだって悪くはないと思います。人生において少しでも不快な時間はなくしたほうが良いですから」
なるほど。一番の解決策は満員電車に乗らないで済む環境を作ることかもしれない。脱サラもそのひとつの手段。投資家のみなさんのなかには、十分なキャッシュフローを確保してそのような環境にいる方もいるだろう。じつにうらやましい限りだ。
取材協力:電車通勤士 田中一郎さん
往復4時間もの電車通勤を約30年続け、その過酷な通勤経験から生まれた理論をサイト『電車通勤士』(http://www.tsuuk.in)にて公開している。また2012年には、同理論をまとめた著書『電車通勤の作法』(メディアファクトリーより発売中)を上梓。
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