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みなさん、こんにちは! 不動産投資専門税理士の叶です。今回は、税務署からお尋ねが来た場合の対処法について解説します。

お尋ねはどんな時に来るのか?

税務調査は誰にとってもあまり嬉しいものではありませんが、税務調査の前段階として、税務署より「お尋ね」が来るケースがあります。お尋ねは文書や、時には電話で来るケースもあります。では、お尋ねはどんな時に来るのでしょう?

それは基本的には、大きな金額の財産が動いた時です。例えば、株を売却して大きな金額が入ってきた時や、相続が発生した時、また最近では海外で資産運用をしているケース、身近なケースであれば住宅を購入した時にも、お尋ねが来ることがあります。

私たち不動産投資家、大家さんに大いに関係のあるケースとしては、賃貸用の不動産を購入したり、新築したりした時です。税務署は法務局から通知される登記簿の記載内容の変更などの情報から、土地を購入したり、新築の建物を建てたりした人に「お尋ね」を送っています。

また、消費税還付申告など、税務署から大きな金額を還付してもらう時も、お尋ねはよくあります。不動産の購入や相続した時のお尋ねは、取得してからおよそ数カ月から1年後ぐらいまでに、次のページのような書類が届きます。


税務署は何を知りたいのか?

書面

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では、税務署はお尋ねによって何を知りたいのでしょう? 先ほど掲載した書類を見てみると、「5.支払代金の調達方法」という欄がありますね。税務署は、この記載内容を見て、「購入資金をどうやって用意したのか?」ということを確認したいわけです。

借入だけでなく自己資金も出している場合は、過去の所得に比べて、手持ちの資金が多すぎないか? また、共有で不動産を購入しているなら、その共有持分と資金を出している割合に相違がないか? などを見ています。

例えば、夫婦で半分ずつの持ち分で、3000万円の不動産を現金で購入したとしましょう。妻の方は財産もなく無収入なら、持ち分の1500万円はどこから出したのか? もし全額夫から資金が出ている場合は、妻持ち分の1500万円は夫から妻へ贈与という形になってしまい、贈与税が発生することになります。

借入で購入している場合でも、借入の名義が全額夫なら、贈与になってしまいます。この辺りの資金の流れに合理性があるのかを税務署は確認しているわけですね。

また、消費税還付申告では、課税売上の内容や建物金額の根拠、管理会社との契約内容などの資料を求められるケースがあります。

どう回答するべきか?

では、お尋ねが来たらどのように対処すればよいのでしょう? このようなお尋ねが来ると、ビックリしてしまう方もいるかもしれませんが、税務署から「すぐに税金を納めなさい」と言われているわけではないので、慌てる必要はありません。

またこの「お尋ね」は回答しなければいけないと法律で定められているものではなく、回答しなくても特に罰則はありません。ただ税務調査の前段階のものなので、無視や虚偽の記載をして税務署側に少しでも不審に思われると、税務調査になる可能性が高いので、速やかにありのままを回答しておいた方がいいでしょう。

したがって、スムーズに回答するためには、不動産の売買契約書や明細書、金銭消費貸借契約書などの根拠資料をしっかりと保管しておく必要があります。不動産賃貸業をしていて、税理士に業務を委託している人であれば、その税理士にお願いすれば、依頼している税理士から税務署に対して回答してもらえるでしょう。

さらに、その税理士が申告書に書面添付を付けていれば、税務署からのお尋ねは、まずその税理士に連絡が来ます

これは書面添付制度と呼ばれていて、税理士は申告書の作成について、計算、整理、相談に応じたことを記載した書面を申告書と一緒に付けることができます。税務署側は、申告書に書面添付がされている場合は、調査をする前に、まず税理士にお尋ねをしないといけないことになっています。

不動産投資家や大家さんにとっては、税の専門家である税理士がすべて窓口となってくれるわけですから、心配することも少なくなりますし、税務調査が省略されれば、無駄な時間も使わなくて済みますよね。

ただし、この書面添付は、税理士が「この人は正確に申告をしていますよ」と証明するものですから、税理士側にとっても、信頼のできないお客さんであれば、付けることはできません。だから税理士にお願いする場合でも、まずは人と人との信頼関係を築くことを心掛けてください。

そもそも、ありのままを正直に申告していれば、お尋ねが来ても、税務調査があっても、何の心配もいらないわけですから、これをお読みの皆さんは、そのことをしっかりと心得ておいて下さいね。