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みなさん、こんにちは! 不動産投資専門税理士の叶です。お金を残す不動産投資コラム。今回は、不動産運営において重要な経費、減価償却費に影響する、建物価格の決まり方や、建物価格が大きい場合のメリットについて解説します。

中古物件の土地と建物の価格はどうやって決まるのか?

少し不動産投資の税金について勉強したことがある人なら、物件を購入するときに建物の価格を少しでも高くしたいと思うでしょう。新築物件なら、土地と建物の価格は決まっていますが、中古物件の場合は総額で売られていることがほとんどなので、土地と建物の価格を分けなければいけません。

では、まずは1億円で建物の耐用年数が40年の場合を例にして、土地と建物の分け方と減価償却費がいくらになるかを解説しましょう。

(1)売買契約書に土地と建物の価格が記載されている場合

売買契約書に土地5000万円、建物5000万円と価格が記載されている場合は、その価格が土地と建物の価格になります。この場合の建物の価格は5000万円となり、減価償却費は次のようになります。

建物5000万円×償却率0.025(耐用年数40年)=125万円/年

(2)売買契約書に土地と建物の価格が記載されていない場合

売買契約書に土地と建物の価格が総額で1億円と記載されている場合は、合理的な方法で土地と建物の価格を算出しないといけません。合理的な方法はいくつかありますが、もっとも代表的な方法が、固定資産税評価額を使って按分する方法です。

1億円で購入した物件の固定資産税評価額が土地建物7000万円で、その内訳が土地4割の2800万円、建物6割の4200万円だとすると、建物の価格は次のようになります。

土地建物1億円×60%(建物の固定資産税評価額4200万円÷土地建物の固定資産税評価額7000万円)=建物の価格6000万円

そして、この場合の減価償却費は、次のようになります。

建物6000万円×償却率0.025(耐用年数40年)=150万円/年

このように中古物件の場合は、建物の価格をいくらにするかで毎年の減価償却費が変わることになります。したがって、物件を購入する際に、建物の購入希望価格を売主さんと交渉して売買契約書に記載することによって、購入した後の減価償却費を事前にコントロールすることができることになります。


建物価格が大きい場合のメリットは?

先ほどの数字を見てもわかるように、建物価格を大きくできると、減価償却費が大きくなります。

減価償却費は、固定資産税、借入金利と並ぶ、不動産運営の3大経費で、特に中古物件の場合はかなり大きくなることもあります。だからこそ、この減価償却費をコントロールすることができると、税金をコントロールすることができるようになります。

減価償却費とは簡単に言うと「モノの劣化代」です。だから劣化しない土地は減価償却費が計上できなくて、時とともに朽ちていくものだけ減価償却費を計上することができます。

したがって、建物価格が大きいほど、年間の減価償却費が多くなって利益が減ることになります。そして税金が減って最終的に税引き後キャッシュフローは多くなることになるんですね。その結果、最初に出した自己資金を早く回収することができるというメリットもあります。

建物価格が大きい場合のもう一つのメリットは?

建物価格が大きくなると、もう一つメリットがあります。それは消費税還付を狙っている場合です。消費税は土地には掛からず、建物にだけ掛かります。ということは、建物価格が高くなると、それに含まれる消費税額も大きくなるので、消費税還付が成功すると、還ってくる税金が大きくなるんですね。

その結果、最初に出した自己資金は、とっても早く回収できることになり、次の投資に早く進むことができます。

建物価格が大きくなる場合のデメリット

このように、建物価格が大きいと、それに応じたメリットがありますが、逆にデメリットはないのでしょうか? やはり税法はうまくできていて、建物価格が大きくなると、売却の時にデメリットが出てきます。

まず先ほど例に出した1億円の物件の減価償却費は、建物価格が6000万円の場合は年間150万円でした。この価格がお金は出ていかないのに、経費として認められます。それではお金がなくならない代わりに、何がなくなっているのでしょうか?

実は、6000万円で購入した建物から、この150万円が差し引かれています。ですから購入10年後の建物価格は、次のようになります。

建物6000万円‐減価償却費1500万円=建物4500万円

そしてこの物件を10年後に9000万円で売却したとします。

10年後の物件の簿価:土地4000万円+建物6000万円-減価償却費1500万円=8500万円

売価9000万円-10年後の物件の簿価8500万円=売却益500万円

このように、減価償却費の価格が大きいほど、簿価が少なくなって、売却益が出やすくなるんですね。そうなると、その分所得税が多くなってしまいます。したがって、毎年の減価償却費を大きくできれば何でも良いというわけではありません。

その人の投資戦略によって、建物価格の扱いも変わってくるので、しっかりと戦略をもって税金をコントロールするようにして下さいね。