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皆さん、こんにちは。岡田のぶゆきです。第11回目の相談者は、京都市にお住いの山下裕子さんです。

専業主婦の山下さんは、ご主人の資金を使って、不動産投資を行いたいという希望をお持ちです。自己資金300万円で、目標は「年間1000万円のキャッシュフロー」、すでに1年前から物件探しをスタートされています。

名前

山下裕子さん(仮名)

年齢

42歳

性別

女性

職業

専業主婦

居住地

京都市

年収

約1000万円(夫)

自己資金

300万円

Q1.現状で収益がなくても、法人を設立してよいでしょうか? 

物件を購入するまでに、法人化をして税金対策を行える準備をしたいと考えています。収益のない状態で法人を作ることは可能でしょうか? また、そういった法人に対して、金融機関は融資をするのでしょうか?

A1.収益のない状態でも法人を設立することは可能

ご質問ありがとうございます。ご主人の年収が1000万円ということで、不動産投資を始めて所得税率が上がることを心配されているのかもしれません。その点を考えれば、最初から法人を設立して、法人名義で物件を購入していくことは有効でしょう。

実績のない法人に対して融資をするのか……については金融機関によります。どちらかといえば、融資を受けやすいのは個人名義ですが、法人名義からスタートすることも不可能ではありません。

地方銀行、信用金庫については各々の都市ごとで変わりますので、物件を探しながら不動産業者に、「法人の融資に積極的な金融機関を紹介してほしい」と頼むのがよいでしょう。業者によって融資の知識は変わりますので、複数の業者に声をかけることをおすすめします。

また、融資に対する姿勢は同じ金融機関でも支店によって違うものです。私は自分で金融機関をまわっていますが、同じ金融機関でも個人に強い支店があれば法人に強い支店もあり、その中でも大企業向けから中小企業向けに特化した様々な支店があります。

そもそも、不動産に対して融資をする支店と行わない支店があります。そのことを認識して情報を集めることが大事です。

Q2. 税制対策で自宅も法人所有にできる?

自宅は夫の名前でローンを組み、名義も夫の名義になっています。この自宅を法人所有にして税金対策をすることは可能でしょうか?

A2.自宅を法人で所有するのは難しい

自宅を社宅のようにして、居住費を経費扱いにしたいという意味だとすれば難しいと思います。法人の社宅は、役員が住む場合と従業員が住む場合で変わります。役員報酬には住居費が含まれているため、経費にすることができません。

また、当たり前のことですが、住宅ローンは個人の住宅資金のために貸し出しています。それを法人所有にすることは、ハードルが高いでしょう。

Q3.京都という地域性を活かしたゲストハウス経営は?

物件を購入するまでに300万円から500万円の頭金が貯められると思います。この元手でどのような物件を買い進めるのが、一番効率よく規模を拡大できるでしょうか?

京都という地域性を活かし、安い戸建てを改装してゲストハウスを始めたいのですが、集客には季節の波があるようで、どのくらいの収益になるのか未知数です。ゲストハウスを始める前に一棟アパートを確保し、空き部屋がでたら、そちらをAirbnbで運営する方がよいのでしょうか。

A3. 戸建て投資に慣れてからゲストハウスに取り組む

効率よく規模を拡大したいと考えたときに、とるべき投資手法は、山下さんの目標「自己資金300万円で、年間1000万円のキャッシュフローを得る」をどれくらいの期間で達成したいのかにもよります。

その達成まで10年程度を費やすことができるのであれば、急いで買い増やさなくても、貯金をしながら少しずつ物件を購入していってもよいでしょう。

購入の順序としては、まず節税を気にするよりも投資を進めた方がいいと思います。法人で購入するためには実績が一番です。

また、戸建てをリフォームしてゲストハウスにする……というアイディアをお持ちですが、低価格物件を対象とした戸建て投資は、主婦投資家にも好まれています。まずは戸建て投資で慣れてから、ゲストハウスに取り組むのはいかがでしょうか。

「戸建てを運用して利益を追求する」というよりは、リフォームの基礎を学んだり、賃貸経営を実体験されたらいいと思います。時間が許せばDIYを行うことで、リフォームのコストカット方法なども身につくはずです。不動産投資で成功するためには、このような地道な努力の積み重ねも大切な要素です。

また、法人で進めたいのであれば、現金で300万円程度の戸建てを法人名義で購入して、2戸目、3戸目からローンを使っていくのが現実的です。このようにして、将来的に実績をつくるやり方であれば、法人名義でもスムーズに借りられると思います。

その場合は日本政策金融公庫が使えますし、リフォームローンの形であれば、1戸目からでも融資可能で、借りる先の選択肢も増えるでしょう。このように戸建てを積みあげていくのはおすすめです。

資金調達については、自宅の残債が残っていないのなら共担に使えます。自宅を担保にする際は、個人で融資を受ける方が行いやすいでしょう。

市況からいえば、築浅の物件や建物の状態が良い高利回り物件を格安で購入するのは難しいです。安い戸建てを購入して、貸家にする場合は、築古物件や難のある物件に手を入れていく必要があります。

しかし、その最大のメリットは貸してから手間がかからないことで、リフォームをして貸し出してしまえば、大家さんの行うことはほとんど何もなく自主管理も可能です。

対して、ゲストハウスは貸し出してからも多くの手間がかかります。その代わり、貸家よりも高い収益性が得られるでしょう。

ゲストハウスの経営は、旅館業の中の「簡易宿所」にあたり、行政に申請して営業許可をとることが義務づけられています。営業許可をとるためには、消防の基準や衛生基準を満たす必要があり、そのためには区分マンションではなく、一戸建てが向いています。

京都は土地柄、旅行客が多く、今のインバウンドブームに乗らなくても、将来的にも需要が見込めます。簡易宿所は民泊条例と同様に法整備中で、現状で緩和に進んでいるので、少し様子を見た方が良いかもしれません。

ゲストハウスや民泊は高い収益性が見込めますが、運営に手間がかかります。また、こういった運営を外注すれば、収益が大きく減ってしまいます。まずは戸建てを購入して、スキルを身に付けてからでも決して遅くはありません。

立地でいえば、京都は日本を代表する観光地で、常に宿が足りないと言われています。そういった中で、物件価格が低くても、立地がよく外国人が集まりやすいところ……コストパフォーマンスが良い立地選定は、地元の方でなければわからないと想像します。まさに地元の強味を活かせるチャンスです。

現状で1日のうち不動産投資に費やせる時間が、1時間ということですが、この時間を増やしていければ良いと思います。ご主人と上手にコミュニケーションをとりながら、どういった物件が良いのかよく話し合ってください。

そして、「物件を調べて見に行ったり、業者とのやりとりは奥様が担い、契約決済についてはご主人が責任を持つ」といった役割分担をすることにより、さらに効率よく買い進めていくことが可能になるでしょう。