ほったらかし物件_bonb-Fotolia

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物件のまわりにツルが絡まっていたり、雑草がビッシリ生えていたり…一体誰が所有しているんだろう、という酷い有様の物件を見かける。そんなほったらかし物件の所有者に、「なぜ管理しないのか」「売れるなら売りたいか」など、その本音をインタビュー!

2年間ほったらかしのゴミだらけの部屋

H・Kさん(30代の専業主婦)

埼玉県で築25年の軽量鉄骨アパートを管理するH・Kさん。30代前半で小さな子供を育てている主婦。管理といっても、これまで不動産経営の経験は一切なく、結婚して義理の両親から、アパートの管理をするように頼まれたのだという。

「夫は自営業で、義父と共に働いています。私は結婚して仕事を退職したので、『私も仕事を手伝いますよ』といったところ、『だったらアパートを管理して欲しい』と頼まれたのです。

見ると、建物自体はさして汚くないのですが、いくつかの部屋に荷物が置きっぱなしだったり、ゴミだらけだったり、すごく荒れた状態なのです。聞いたら夜逃げにあったということでした」

工場のある町ということで元々は工場に勤める単身者向けに建てた10世帯のアパート。6畳の和室に3点ユニットの水回りと、今となっては競争力のない物件だが、安い家賃設定のため、築浅のときには満室が続いていたそうだ。


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2年間ほったらかしのゴミだらけの部屋

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照明やトイレなどがなぜか破壊されている

「昔は身元のしっかりした人に入居いただいていたようですが、だんだん入居がつかなくなって、定職についていない人や保証人のはっきりしない外国人の方などが入居されるようになったようです。一番良くないのは自営業のつながりで、不動産会社を通さないで入居者をいれていたことです」

お嫁さんであるH・Kさんが管理するまでは、義母である夫のお母さんが管理をしていたようだが、やはりまったくの素人。仲介業者を通している物件はともかく、自営業のつてで直接契約している部屋に関しては、契約書すらないこともあるという。

「管理を受けてから今年でもうすぐ2年目ですが、夜逃げして荷物のある部屋は、勝手に荷物を捨ててはいけないということらしく、ずっとそのままです。他にも家賃滞納もありますし、もうどうしていいのかわかりません。夫に相談しても、多忙なせいか他人事のようです」

聞けば、義両親は典型的な地主大家のようで、収支についても詳しく理解せず、メンテナンスには一切お金をかけていない。壊れてクレームが出たら直すというという、やり方でずっとやってきたらしい。ローンはすでに払い済なのか、家賃収入に対しても無頓着だそう。

「とりあえず、今入居いただいている3名の方に対しては、電話を受けたり集金をしたりと、それなりに動いていますし、それなりに外回りのお掃除はしていますよ。誰もがこの物件に対して意識がないというか、気にしてないのですね。おそらく相続のときまでこの状況が続くと思います」

話をしてくれたH・Kさんにしても、お小遣い程度の謝礼で管理をしているそうで、あくまで義実家の手伝い程度の認識だ。

「でも、建物が古くなってきたのか、最近、雨漏りのクレームがありました。一応、業者さんに応急処置をしてもらったのですが、どうやら屋根全体を直した方がいいようなのです。他にも給湯器も古くなっていますし、これから、お金も手間もいっぱいかかりそうで不安です。

できれば、早く売って欲しいと思っています。私が払うわけではないにしても、入居者さんの対応をしたり、いろいろ手配するのは私なので……」

この物件に関しては、所有者を含め関係者すべてが、ヤル気がないというケースだった。ゴミや荷物を片付けて清掃すれば、十分に貸せそうなだけに残念な物件だ。


立ち退き交渉に失敗して、気づけばアパートはボロボロに……

S・Tさん(50代 会社員)

東京都にほど近い千葉県にお住いのS・Tさんは、約10年前に親御さんから古い木造アパートを相続した。1DK4戸の小ぶりなアパートで、相続したときには、すでに築30年を超えていたそうだ。

「私はずっと千葉に住んでいますし、両親とも別に不仲ではありませんでした。でも、このアパートのことは、まったく知らされてなくて、『こんなのを持っていたんだ!』と驚きました」

相続した時点ですでに古びており、入居があったのは4世帯中1世帯だけだったという。

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建物全体に蔦が絡まり、
どこにドアがあるのかわからない

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室内は蔦のせいもあって、まったく日が差さない状態

「手入れもあまりされてないようで、入居者も1人だけ。幸いローンはないので、最後の1人が退去したら、新しいアパートに建替えればいいかと適当に考えていました。ところが、その最後の1人がなかなか退去しないんですね。最初はそのうち出るかな、と思っていたのですが、動く気配がないのです」

ほとんどメンテナンスをしていないとはいえ、入居者がいればそれなりに修繕をしなければならず、固定資産税もかかり、経営は傾いていくばかり。

「そうはいっても大きな損をしているわけでもないので、何年かそのまま放っておいたのです。2012年のアベノミクス以降、株価も上がり、不動産が盛り上がっていることを知りました。

その時に、土地として高く売れる最後のチャンスではないかと考えて、『もう早く出て行って欲しい』という気持ちが高まりました。そこで老朽化を理由に、立ち退き交渉するのですが、ぜんぜんダメです」

まったく引っ越す気のない入居者に新しいアパートを手配しようと思うが、高齢で収入もないため、なかなか変わりの部屋が見つからない。

「もう、根競べのようになっていましたね。すでに他の部屋の入居募集は何年も前から止めていましたし、私もきちんと管理する気をなくしているので、物件はどんどんボロボロになっていきました。その頃から蔦を切らないでいたら、あっと今に蔦だらけになっていきました」

そして、昨年末にようやく最後の入居者が退去したそうだ。

「体調を崩したので親戚の家に身を寄せるということでした。お礼の意味もこめて敷金精算にくわえて、お見舞い金も出しましたよ」

こうして、ようやくアパートは全空になり、これから査定に出して、土地として売却する予定だとか。

「春の期末までは、私の仕事が忙しくて手がつかなかったのですが、これから売却に向けて動きます。なんとか不動産市況の良いときに売り出すことができそうです。まさか、まったく儲からないアパートを10年も持つとは思いませんでした」

S・Tさんのケースでは投げ売りすることはないだろうが、ほったらかし物件の多くは相続で継いだ賃貸物件。自ら欲しいと思って購入した投資家とは違い、入居がつきにくく修繕費用のかさむ築古物件は「お荷物」になりやすいのだろう。

今回、紹介した2物件は、かなり年季の入ったほったらかし物件だが、こういった難のある物件こそ、安く買えるチャンスがあるのかもしれない。