空き家_hikdaigaku86-Fotolia

写真© hikdaigaku86-Fotolia

空き家が、全国におよそ820万戸、住宅全体の13.5%を占めたことは、以前のコラムでも紹介した。

建物が放置されると、害虫も発生するうえ耐震性能も失われ、倒壊の危険性が高まる。そのため、空き家問題が深刻だとニュースでも報道されるようになった。

しかし、果たして本当に820戸もの空き家が存在するのだろうか。今回は、「本当にこんなに多いのか」という点に着目し、空き家の定義や調査方法などを聞いてみた。

お答えいただいたのは、空き家の数を公表している総務省統計局統計調査部国勢統計課の住宅・土地調査担当の方だ。

空き家の数はどうやって分かる?

ーーまず、住宅・土地統計調査の概要を教えてください。

「空き家の数は、総務省で実施している『住宅・土地統計調査』で知ることができます。この調査は、人が居住する建物に関する実態、並びにこれらに居住している世帯の傾向を把握するために実施しています。

この調査結果から、日本の総住宅数、住宅の種類や設備など、私たちの住生活に関するさまざまなことがわかります。空き家の数は、住宅・土地統計調査の結果の一つとして公表している数字です」

ーー日本の住宅事情を示す数値の一つが空き家率というわけですね。空き家の調査対象はどんな基準で決まるのでしょうか。

「調査対象は住民票などで事前に特定はせず、統計理論に基づいて無作為抽出で全国から約350万住戸を選定しています。

なお、空き家の形態は、大きく5つに分類されます。いずれも『人が生活を営むことができる住宅』が対象ですので、壁や屋根が崩れ落ちていたりするような廃屋や空き地は調査の対象外です」

【空き家の種類】

○二次的住宅(別荘)・・・・・週末や休暇時に避暑・避寒・保養などの目的で使用される住宅で、ふだんは人が住んでいない住宅

○二次的住宅(その他)・・・ふだん住んでいる住宅とは別に、残業で遅くなったときに寝泊まりするなど、たまに寝泊まりしている人がいる住宅

○空き家(賃貸用)・・・・・・・新築・中古を問わず、賃貸のために空き家になっている住宅

○空き家(売却用)・・・・・・・新築・中古を問わず、売却のために空き家になっている住宅

○空き家(その他)・・・・・・・上記以外の人が住んでいない住宅で、例えば、転勤・入院などのため居住世帯が長期にわたって不在の住宅や建て替えなどのために取り壊すことになっている住宅など(空き家の区分の判断が困難な住宅を含む)


実際に空き家を調査する方法とは?

ーー日常的に住んでいない住宅を空き家としているわけですね。次に、調査実施の回数や期間、空き家の特定方法を教えてください。

「調査は昭和23年から5年ごとに実施しており、直近では平成25年の9月23日から10月24日までの期間に実施しました。

空き家の特定方法は、空き家などの所有者に調査するのではなく、まずは訪問時間を変えるなどして、調査員が面接するように努めます。それでも会えない世帯は、調査員が建物の外観を確認したり、近隣の人や建物の管理者などに確認したりしています。

こうして得られた住宅・土地統計調査の調査単位区別の調査結果から、平成25年10月1日現在の市区町村別総人口に合致するよう、統計理論に基づき推定して算出しています」

ーーアパートやマンションなどの集合住宅はどのように調査しているのでしょうか。

「集合住宅については、オートロックマンションの増加により、調査員が各住戸まで辿り着けない等で調査が困難になってきております。

しかし、その点は事前に管理人などに協力依頼を行うなどしており、空き室があった場合も、管理人に確認するなどして調査しています。

これは戸建ての空き家も同様で、近隣の人に確認するなどして調査しており、戸建てと集合住宅で調査方法の大きな違いはありません。

また、シェアハウスや社会福祉施設なども調査の対象としておりますが、これらも一戸建てや集合住宅と調査方法に違いはありません」

なるほど、調査対象の物件に実際に足を運び、これだけ丁寧に調査しているとなると、820万戸という数字の信ぴょう性は高そうだ。

ただ、一括りに「空き家」と言っても、二次的住宅など、調査期間にたまたま空き家となっている場合も含んでいたわけだ。もしかすると、空き家率が高い地域イコール過疎地域とは言えないのかもしれない。

不動産投資を行う地域や物件を選定する際は、あくまで空き家率については参考程度に受け止め、実際の物件や住環境を現地で調べるのが一番だろう。

◯取材協力:

総務省統計局統計調査部国勢統計課 住宅・土地調査担当の方