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こんにちは。銀座第一法律事務所弁護士、鷲尾です。今回は、物件をサブリース業者に賃貸していたところ、そのサブリース業者が倒産してしまったが、その場合にどうしたらいいのか、というご相談です。

サブリースの会社が倒産してしまいました。その後の賃料は諦めるしかないのでしょうか?

サブリースの倒産は深刻

私も実際に、オーナーからの相談で、(1)サブリース業者が倒産したケース(2)連絡が取れなくなったケースを経験しています。(1)は倒産前に保証賃料の滞納が続き、預金口座を仮差押したところ、ある程度弁済がなされ、その後に破産申立てとなり、保証賃料の一部が回収不能となりました。

(2)はマンション3件をサブリース約束で融資により購入、すぐに賃料の切り下げがはじまり、サブリース会社も事業譲渡がされるなどしてローン返済に行き詰まり、オーナーが破産しました。

もしこのような事態が起きてしまったら、オーナーにとって深刻な問題です。


サブリースとはどういうものか

まずサブリース契約とは、賃貸事業者が建物所有者から建物を転貸するために借り受けて、これを第三者に転貸する契約のことをいいます。その関係は、次のようになります。

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サブリース契約と一口に言っても、その内容はさまざまです。マンション1棟を対象とするものもあれば1室のみを対象とするものもあります。

賃料の定め方も、借上賃料の額を一定の額に定めるものや(これを保証賃料と呼ぶこともあります)、転貸賃料合計の何%と割合によって定めるものもあります。

「安心の一括借り上げ」「空室保証」「一括管理で手間要らず」などのうたい文句で典型的なサブリース契約は、一棟貸しで定額のサブリース賃料が定められているタイプです。

サブリース業者もビジネスですから、オーナーがサブリース業者から受け取る賃料は、オーナーが直接第三者に賃貸した場合よりも低額となります(この差額がサブリース業者の利益になります)。

それでも、契約した保証賃料の額が適正で当初の契約どおりにその支払いが行われれば、サブリース契約は、オーナーにとっても、空室等のリスクを負担することなく定額の賃料収入を得ることができ、管理の煩わしさからも解消されるなどのメリットがあるでしょう。

ですが、契約後にサブリース賃料が減額されてしまったりサブリース業者が倒産してしまったりして、ことが計画どおりに進まない場合、オーナーによっては建物建築や購入のために多額の借入れをしていることもあり、深刻なトラブルとなります。

サブリース契約は賃貸借契約と捉えられている

ご相談はサブリース業者が倒産してしまった場合ですが、この問題を考えるにあたっては、サブリース契約は法的にどのような契約なのかを考えることが必要です。

サブリースのオーナーは、投資目的物である建物を提供してサブリース業者から賃料を受け取るだけで、入居者募集や賃貸管理といった運用はサブリース業者に任せています。

こうした性格からみると、サブリース契約は投資家であるオーナーと実業担当者であるサブリース業者の共同収益事業という面が強いようにもみえます。

しかし判例は、サブリース契約も、建物を使用させて賃料を受け取るのだから賃貸借契約であり、したがって借地借家法の適用を受けるとしています(最高裁判所平成15年10月21日判決)。

つまり、オーナーとサブリース業者との契約は建物賃貸借契約、サブリース業者と借主との契約は転貸借契約ということになります。


サブリース業者が撤退した場合、賃貸人が入居者に明渡しを求めることは簡単ではない

転貸借契約の転貸人(ここではサブリース業者)が倒産してオーナーに対して賃料を支払えなくなった場合、オーナーはサブリース業者とサブリース契約(賃貸借契約)を続ける意味はないので、契約を解除することになります。

転貸人はオーナーとの賃貸借契約に基づいて建物を入居者に転貸しているのですから、オーナーとの賃貸借契約がなくなれば建物を貸す権限を失います。その結果、転貸借契約も効力を失い、転借人は建物から退去しなければならないのでしょうか。

こうした場合、判例は、賃貸借契約が合意解除された場合と、債務不履行により解除された場合とで分けて考えています。

まず、オーナーと賃借人(転貸人)との間で賃貸借契約を合意解除しても、原則として転借人に解除の効果を対抗できないとされています(最高裁判所昭和62年3月24日判決)。合意解除では、賃貸人と転貸人がしめし合わせて賃貸借契約を解除したことにして転借人を追い出すことが可能となってしまうからです。

この場合、オーナーは、合意解除しても転貸人の地位を引き継がなければならず、入居者を退去させることはできないのです。

これに対し、賃借人(転貸人)が賃料を支払わないなどの債務不履行を理由に契約が解除された場合は、原則としてその解除を転借人に対抗できるとされています(最高裁判所昭和36年12月21日判決)。

サブリース契約も賃貸借契約だというのですから、こうした判例からすれば、サブリース業者が倒産した場合、オーナーが賃貸借契約を債務不履行により解除すれば、転貸借も終了し、入居者は建物から出ていかなければならないようにも思えます。

しかし、サブリース業者がサブリース契約の契約期間満了による更新を拒否したケースで、サブリース契約の特殊性から、賃貸人は信義則上契約の終了を転借人に対抗できないとした判例があります(最高裁判所平成14年3月28日判決)。

したがって、サブリース契約の場合、サブリース業者が倒産したとしても、オーナーは入居者に対し建物からの退去を求めることはできないとされる場合が多いと思われます。

オーナーは、転借人に直接賃料の支払いを請求することも可能

サブリースの場合、オーナーとしても建物の自己使用は考えておらず、入居者の使用継続を希望することが多いでしょう。

そうすると、サブリース業者が倒産したときも、通常は、オーナーはサブリース業者を別の業者に替えたり、自分が転貸人の地位を引き継いで入居者と直接契約することを希望すると思われます。

早期にサブリース業者との契約を解除して入居者と直接契約をすれば、入居者から賃料を直接受け取ることで被害を抑えることができます。


もしすぐにサブリース業者と契約を解除したり入居者と直接契約を結ぶことができなくても、オーナーは、直接、入居者に対して賃料を請求することが可能です(民法613条1項)。

ただし、入居者が賃料を二重に支払わなければならない理由はありませんから、すでに入居者がサブリース業者に賃料を支払っていた場合には、原則として、オーナーは入居者に賃料を請求することはできません。

この場合には、賃料はサブリース業者に対して請求するしかありませんが、倒産してしまっているサブリース業者から全額回収できる可能性は少ないでしょう。

サブリース業者が倒産してしまった後では、裁判を起こしても費用倒れになる可能性が高いです。サブリース業者が賃料を滞納しているだけであれば、裁判をやる意味もあるでしょう。

結論

○サブリース業者から賃料を回収できる確率:10%

入居者がサブリース業者に対して賃料を支払っていなければ、オーナーは、その分の賃料は直接自分に支払うよう求めることができます。

入居者がサブリース業者に賃料を支払済みのときは、原則として、賃料はサブリース業者から回収するしかありませんが、この場合に全額回収できる可能性は低く、せいぜい10%程度でしょう。

サブリースは契約内容が複雑なことが多く、オーナーによっては、宣伝文句から想定していたものと実際の契約内容が食い違っている場合も少なくないようです。とくに、保証賃料が将来変動する場合の条件など、契約内容を十分に吟味して契約を締結することが大切です。

なお、国土交通省は、平成23年に賃貸住宅管理事業者登録制度を設立し、登録業者が守るべき賃貸住宅管理業務処理準則を定めました。この制度は、サブリース業者が管理業務を行う場合も対象としています。

登録は義務ではありませんが、登録業者は業務処理準則を守る義務があり、これに違反すると国土交通省の指導などの対象となるため、サブリース業者が登録業者であるかどうかも、業者の信用性などを判断する一つの目安となるでしょう。