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みなさん、こんにちは! 不動産投資専門税理士の叶です。お金を残す不動産投資コラム。今回は、法人化した後、家族にお給料を支払う時に気を付けることについて解説します。

個人の場合、家族にお給料は支給できるのか?

法人のお話をする前に、まずは個人で不動産運営をしている場合で、家族にお給料を支給する要件やメリット・デメリットを解説しましょう。

個人で不動産運営をしている場合、原則として家族にお給料を払っても経費にすることができません。ただし一定の要件を満たせば、お給料を払った金額を経費にすることができます。

その際にまず問題になるのは、運営している不動産の規模が事業的規模になっているかという点があります。

不動産賃貸業の事業的規模を判定する基準に、5棟10室基準という基準があります。戸建てなど独立した家屋が5棟以上、もしくはマンションやアパートの部屋などが10室以上あるかどうか、という基準です。

この5棟10室基準を満たすと、事業的規模と認められ、税金上の様々な特典を受けられるようになります。そしてその1つが、家族にお給料を支払うことができるという特典です。逆に事業的規模になっていなければ、家族にお給料を払っても経費にすることはできません。


この事業的規模を判定する5棟10室基準は、

・区分所有マンションを合わせて10室
・戸建て3棟+4室あるアパート1棟
・9室あるマンション1棟+区分所有マンション1室

などの組み合わせでもOKです。

○事業的規模になる組合せ

家族に給料を支払いすぎると危険 所得を分散して起こる「想定外の事態」 ページ 2楽待不動産投資新聞

そして、事業的規模を超えていて青色申告をし、事前に届出書を出している人であれば、家族に「青色事業専従者給与」としてお給料を支払うことができます。

金額はお給料を支払う家族にしてもらう仕事内容やスキルによっても変わりますが、相応の金額であれば上限はありません

また白色申告であれば、払ったお給料を経費にすることはできませんが、「事業専従者控除」として、配偶者であれば86万円、配偶者でなければ専従者1人につき50万円を上限に、確定申告の際に控除することができます。(ただし利益の金額によって上限は少なくなることがあります)

そして注意しなければならないのは、青色申告であれ、白色申告であれ、家族にお給料を払った年は、その家族を配偶者控除や扶養控除の対象とすることはできません。でも、法人であれば、家族にお給料を払っても、要件に該当すれば、配偶者控除や扶養控除の対象とすることができます

法人化の最大のメリットは?

個人が家族にお給料を支払う要件の一つが、他で仕事をしていないことです。

青色の「専従者給与」も白色の「専従者控除」も、どちらにも「専従者」という文字が入っていますよね。専従者とは「専ら従う者」なので、個人の不動産事業に専念している状態でなければダメで、パートであっても他で仕事をしていると、お給料を支払うことはできません。

これが、法人の役員や従業員であれば、他で仕事をしていても、支払ったお給料を損金(=経費)にすることができます。これが法人化の最大のメリットですね!

例えば年間300万円の利益が出る不動産を、法人が持っているとします。このまま何の節税対策もせず、法人税等を支払うと、その金額は約70万円になります。

法人:利益300万円×法人実効税率21%+均等割り7万円=法人税等70万円

これを、例えば夫、妻、子供2人の家族の中で、収入のない妻と子供2人に法人の役員になって仕事をしてもらい、それぞれに年間100万円ずつ役員報酬を支払うと、所得税、法人税合わせて7万円の税金で済みます。

法人:利益0円×法人実効税率21%+均等割り7万円=法人税等7万円
家族:年収100万円-給与所得控除65万円-基礎控除38万円=所得0円

⇒所得税0円

節税額は70万円-7万円=63万円になりますね。

このように法人化をして、家族に役員報酬やお給料を払うことができれば、大幅に節税をすることができます。法人だと、他で仕事をしていても、法人に対する仕事の対価として支払ったお給料は損金となるので、個人よりもかなり使い勝手がいいのです。