こんにちは。デザイナーのみなやまくみこです。今回は部屋のブランディングがテーマです。とくに空室対策に苦戦する地域では、いかに不動産業者に部屋を覚えてもらうかが重要! そこで、「決め物件」になるためのノウハウを提案します。
いくら魅力的な部屋であっても、不動産業者に案内してもらえなければ、お客さんに選んでもらえません。いかに不動産業者に印象付ける部屋にするのか、その辺についてお話したいと思います。
オンリーワンの部屋、オリジナル性で印象付ける
第1回目の特集コラムで「塗るだけ簡単! 狭い部屋もオシャレにDIYできる“黒板塗装”」という記事を書かせていただきましたが、こちらの物件で3度目のリノベーション依頼をいただきました。
このあたりの地域は、どちらかというとファミリー向けの賃貸住宅のニーズが多く、単身者向けのワンルームタイプは、正直いって厳しい地域です。
ただし、駅徒歩3分と交通の便は良いので、ターゲットを間違えずにブランディングができれば、「何とか客付けと家賃維持ができるであろう」と考えました。
この物件で、これまでデザインリノベを行ったのは2回、1回目は2部屋。はじめてのデザインリノベを行った黒板塗装の部屋は、工事完了後約1カ月で客付けができました。どうやらこちらの物件、地元の不動産業者には、「黒板塗装のアパート」という呼び名で言われているそうです。
そして、もう1つの部屋もその後申し込みが入ったのですが、審査で落ちてしまい、その後は少し時間がかかったと聞いています。
都内の人気地域と違い、申し込みまでの時間が多少かかっていますが、地域の不動産業者に認知されており、ブランディングは成功と言えるでしょう。この辺では使われていなかった「黒板塗装」によって、オリジナル性の高いインテリアの部屋として印象付けることができました。
人気の塩系インテリア×黒板塗装

水回り部分の壁:サンゲツ FE-4151
今回は前回と同様の黒板塗装の依頼です。前回は鮮やかなブルーでインパクトがありましたが、今回は少しトーンを控え目にしたクロス選びをしています。これは人気の塩系インテリアです。
塩系というのは「さっぱり系」という意味で、白やグレーをベースにして、色彩をあまり入れないのが特徴です。色鮮やかの対極にあり、落ち着いていて、色味がうるさくない部屋でありながら、素材感などでオシャレなイメージに演出していきます。
色がはっきりしている部屋は、目立ちますし写真映えもしますが、住む人を選ぶのがデメリットです。その点、塩系インテリアは男女を問いませんし、好む年齢層も幅広いため万人受けしやすいのがメリットです。
ただ、どうしても色味がない分、印象がボンヤリしがちです。そこで、黒板塗装をくわえることで、インパクトをつくっています。
この物件は「黒板塗装のアパート」ということで、ブランディングしていますので、これまでと違った系統の部屋で、新たな魅力を出す工夫として、こうしたプランが生まれました。

サンゲツ FE-4163
メインのアクセントクロスはこちらの木目柄。水回り部分の壁はサンゲツFE-4151、残りの壁・天井は量産型の白です。メインの柄が大柄で強いため、控えめな色・柄で組み合わせ、黒板塗装の黒、ペンダントライトの赤をポイントに使っています。床CFは既存の状態が良かったのでそのまま使っています。

壁紙:リリカラ LV-6334
こちらの部屋は、リリカラLV-6334という、全体的に控えめな色の柄物クロスを使っています。奥の壁1面のみ、柄物の1色であるグレーの無地を使用、巾木や廻縁、天井を白、それらを引き締める意味で、床は少し濃いめのCFを選びました。
今回の照明器具は、このようなシーリングライトを使用しています。

シーリングライト
実は前回の工事の後、ペンダントライトが落ちるという事故がありました。調べた結果、天井のクロスを張り替える際に、角型の引掛シーリングのボディを取り外すのですが、工事後付け直すときにしっかりと下地が効いていなかったことが原因でした。
本来であれば、照明器具を取り付ける人間がきちんと確認するはずが、残念ながらできていなかったということです。そして、現場のわたしの責任です。
床までの落下ではなかったため、幸いなことに入居者に怪我はなく、大事に至りませんでしたが、早急に対応、お詫びに伺いました。対応方法として、ペンダントライトではなく、元々設置していた今回のような軽量の丸形のシーリングライトに交換しました。
直接の原因は上記の通りですが、わたしが選んだペンダントライトのほうが多少重いということ、そしてコード付きだったため、引っ張りの頻度によっても負荷がかかりやすいということで、なるべく接する面の大きいもの、今回のシーリングライトに戻しました。
それよりもオーナー様からも信用を失いましたので、元通りに戻すという方法が一番だと考えたからです。プロでもこのようなことが起こりえますので、DIYでされる方は特に気を付けてくださいね。
クローゼットの一部を洗濯機置き場にして機能性をアップ
1回目の工事では洗濯機置き場を移動せずに、黒板塗装のクローゼットとオープン棚を造作しました。部屋の印象は良くなりましたが、まだ客付けで大きなネックになる部分がありました。
外置きの洗濯機置き場です。古いタイプのアパートではよく見かけますが、最近の賃貸物件では洗面所の一部などに、室内洗濯機置き場があるのが一般的です。

洗濯機置き場
そして2回目以降、今回のような洗濯機置き場をクローゼット内に設置する工事に変更しています。
工事前後のクローゼットの内部はこのような感じ。

クローゼット
実際外置きの洗濯機は砂ぼこりが被り、汚れがひどく、また洗濯機本体の傷みも激しいものです。それに外で洗濯機を回すためには音の問題があり、日中など時間が限られたりと入居者のストレスも大きくなる要因です。
室内でも時間に関しては常識の範囲ではありますが、いつでも使用でき、女性などは人目を気にせずに洗濯ができるのが、最低限の入居条件になるでしょう。
今回のようなクローゼット内と限られたスペースを、洗濯機置き場と収納という、2つの目的で有効に使っています。なおクローゼット内の工事代金は給排水工事、電気工事、そして造作・内装工事で1室あたり約8万円です。
まとめ
地方や郊外での物件は空室率が高く、単なる原状回復工事では、競合物件と差別化ができません。そのため客付けに時間がかかり、家賃維持も難しいでしょう。
そこで、デザインリノベーションで物件のブランディングを行います。その際には、「黒板塗装」のようにテーマを設けると、より印象づけしやすいと思います。最初は少し時間がかかるかもしれませんが、不動産業者に周知されるようになれば、入居は決まりやすくなるでしょう。
また、デザインはもちろん重要ですが、DIYでされる場合、取り付け物に対して細心の注意を払ってください。こちらがきちんと取り付けていても、入居者の使い方、頻度によっては負荷がかかり取れやすく、壊れやすくなります。特に落下するものは要注意です。
くわえて、リノベーションの際には、部屋の機能性もアップさせることで、より強みとなります。
今回は室外洗濯機置き場を室内、それもクローゼット内に設置しました。黒板塗装の扉があるので、機能性は増したうえで、デザイン性も維持しています。このように狭い部屋でも様々な工夫ができるので、ぜひ参考にしてくださいね!
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