岡田12回_dzono-Fotolia

写真© dzono-Fotolia

皆さん、こんにちは。岡田のぶゆきです。第12回目の相談者は、三重県にお住いの深沢大樹さんです。

30歳という若さで飲食店を経営されている深沢さんが不動産投資に目覚めたきっかけは、「雇用の必要がない新規事業をしたかったから」とのこと。不動産投資をはじめるにあたり、「できれば高利回りの築古アパートを購入したい」と希望されており、年間家賃収入は最低でも1億円を目指しているそうです。

名前

深沢大樹さん(仮名)

年齢

30歳

性別

男性

職業

飲食店経営

居住地

三重県

年収

約420万円
(世帯年収:約660万円)

自己資金

300万円

Q1.債務超過の状態で融資が受けられるか

私は飲食店を経営しています。住宅ローンの残債が3300万円あり、また妻は正社員ですが現在育休中で年収が下がっています。

金融機関に打診したところ「保証協会は、使用不可能」「プロパー以外不可」「日本政策金融公庫は担保により融資可能」という返答をもらいました。この状態で融資を引くことは可能でしょうか?

なお、会社の決算は下記のような状況です。

・今期・来期ともに、太陽光売電事業のため債務超過
・償却前の今期の利益1700万円
・過去3年以上は黒字経営(償却前利益300万円~1000万円)

A1.属性の強い奥様の名義で金融機関に打診してみるのも手

ご質問ありがとうございます。融資について可能か不可能かと問われたら「可能」だと思います。しかし、債務超過の現状で融資を受けるのは、なかなか厳しいのも事実です。まずは銀行の返答についてみていきましょう。

○保証協会が不可

ご存じない方のために信用保証協会について解説します。保証協会とは中小企業・小規模事業者が金融機関から設備資金・運転資金といった事業資金を調達する際に、保証人となって融資を受けやすくなるようサポートする公的機関です。

保証協会と制度融資(地方自治体が中小個人企業や開業予定者へのサポートを目的とした融資制度)を組み合わせることで、有利に借入れができる可能性があります。なぜ不可なのかその理由、どうすれば保証協会の融資を使うことができるのかを確認しましょう。

○プロパー以外不可

不動産投資の融資は、サラリーマンといった個人属性を使った個人への融資と、主に法人を対象とした事業融資があります。この事業融資のことをプロパー融資といいます。銀行が「プロパー以外不可」ということであれば、むしろプロパー融資は可能ということです。


○日本政策金融公庫では担保により融資可能

現在、深沢さんには担保がないとのことですが、正社員の奥様の名義で公庫を使うのはいかがでしょうか。奥様の名義であれば、有利な女性向けの融資を受けられる可能性があります。

また、育休が明けて年収が上がれば、より融資が受けやすくなるでしょう。属性のよい奥様が公庫だけでなく、信金などをあたってみるのも良いと思います。

会社の決算が債務超過ということですが、内容を見ると償却前が1700万円と悪くありません。太陽光発電事業は現状で節税になっていても、土地や建物の価値がないため資産価値の点でいえば不利です。

また、ご自宅の住宅ローン3300万円という金額は、年収に対して残債が多いように思えます。これも融資のハンデになっているのかもしれません。

資本金を割り込んでいく債務超過ですが、銀行としては債務超過の金額と個人保証(=連帯保証人)の預貯金といった財産でプラスマイナスを見ます。社長の保証だけでなく、ご夫婦2人の個人保証を求められることもあります。

そこで銀行が問題ないと判断すれば融資を受けられるでしょう。また、購入希望の不動産の銀行評価が高ければ、融資が受けられることもあります。

Q2.投資の進め方について。戸建て・区分・一棟どれがいいのか?

1戸あたり400万円~500万円で古家、もしくは中古区分ワンルームを現金で買い進めるのがよいか? それともキャッシュを貯めてから、融資を受けて1棟物件にチャレンジするのか? いかに不動産投資を進めるかで悩んでいます。

A2.まずは法人で高利回り戸建てをキャッシュ購入

法人で戸建てを現金購入するのがいいでしょう。高利回りの築古戸建てを買えば償却も早いですし、これを転売して売却益を得ながら、キャッシュを貯めることをおすすめします。

深沢さんは1戸あたり400万円~500万円の戸建てを希望されていますが、自己資金は300万円ということなので、自己資金内で購入します。

地方の戸建てなら古いもので100万円~200万円でも買えますから、しっかり探せば見つけることができるでしょう。なるべく安く購入して、リフォームや諸費用込で予算内に納めます。

また、築古戸建ての売却方法として以下があります。

・入居者がいる状態で収益物件として売却
・空室をリフォームして実需を売却
・解体して更地で売却

どのパターンがもっとも高く売れるのか、調査をして買い進めることがポイントです。

また、地方の区分マンション投資であればワンルームではなく、小ぶりなファミリータイプがよいでしょう。40平米前後でカップルから3人家族が住める物件は、賃貸として需要が見込めます。区分マンションの場合は賃貸として運営し、出口では実需(マイホーム)で売るのがコツです。

また、キャッシュを貯めて1棟投資にチャレンジするのは良いと思いますが、深沢さんの現状で可能な貯金額は年間50万円ということです。

この金額では、資金づくりに時間がかかり過ぎてしまいますので、やはり手持ちの資金内で現金購入する方が現実的です。

これらの投資をあくまで地元にこだわって行うのが良いでしょう。そうやって投資を進めることで、実績をつくれば信用金庫などが使えるようになります。自営業向けの金融機関といえば公庫か信金ですが、信金は営業エリアが地元に限られているため、地域を絞った方が借りやすいということです。

最後に融資を使った1棟物件への投資ですが、たとえオーバーローン融資を受けられたとしても、いきなり1棟では失敗する可能性があります。というのも賃貸事業では想定外の修繕といった急な出費も多いものです。

今の貯蓄ペースではキャッシュフローがよほど出る物件でないと、キャッシュアウトを起こすかもしれません。大きな融資を受けるのであれば、ある程度まとまった資金をつくってからの方が安全です。


Q3.返済率60%の新築アパートの購入はどう判断する?

現在、法定耐用年数を重視する銀行から、名古屋限定で新築アパートなら相談可能とのお返事を頂いております。しかし、シミュレーションしてみると、返済比率 60% になってしまうことが気になっています。購入してよいものでしょうか?

A3. 長期に渡って入居が見込めるようなら脈あり

返済比率も気になるところですが、その分、安定して稼働する物件なら多少は高くても問題ないと思います。

返済比率が60%でも長期的に安定している物件は多くあります。周辺の業者にリサーチをして家賃が適正なのか、長期に渡って入居が見込めるようなら「脈あり」です。

新築アパートについていえば、物件の評価によってはその後の投資が進めにくくなる場合もあります。そもそも建売の新築は、業者の利益が乗っているため、総じて価格は高いものです。

それを承知した上で、長期安定型の物件を探してみましょう。業者さんから言われたことだけを鵜呑みにするのではなく、ご自身でしっかりとリサーチすることが大切です。

全体的なアドバイスとしては、深沢さんのケースでは個人のお金も会社に貸し付けて、会社で買っていくのがよいと思われます。新築投資、中古投資、どちらも視野に入れているようですが、収益率を重視するなら中古でスタートした方がいいでしょう。

そして、決算については節税をし過ぎないことが大事です。銀行の担当者レベルで問題にされなくても、稟議を上層部に上げていくと最後に断わられる可能性もあります。

ですから債務超過は解消すべきですし、融資を受けるためには、ある程度の税金を払うことも大切です。

銀行から見ると、どうしても飲食事業は不安定に思われがちで、融資に際して不利なイメージがあります。飲食事業をやっていく中で、不動産賃貸経営の実績を積みあげていけば相乗効果が見込めます。最初は厳しいかもしれませんが、ゆくゆくは融資もスムーズになっていくでしょう。どうか頑張ってください!