媒介契約解除_BachoFoto-Fotolia

写真© BachoFoto-Fotolia

こんにちは。銀座第一法律事務所、弁護士の鷲尾です。今回のご相談は、専属専任媒介契約を結んだのに積極的な販売活動をしてくれないので、契約期間中に契約を解消したいというものです。

物件を売却しようと、ある会社と専属専任媒介契約を結びました。しかし、なかなか積極的に販売活動をしてくれません。

契約期間まで残り2カ月以上ありますが、途中で解約することはできるのでしょうか? できるとしても、違約金や広告費など、請求されるのでしょうか?

専任媒介契約と一般媒介契約の違い

不動産はそれぞれ特徴が異なるうえ、いつでもその商品を手に取って見るというわけにもいきません。さらに値段は高額で売買手続なども複雑なため、自分で買い手を見つけて契約をすることは大変です。そのため、不動産を売却する場合には、不動産会社に媒介(仲介)を依頼することが一般的です。

媒介契約は、一般媒介契約と専任媒介契約に分かれます。一般媒介契約では複数の不動産会社と媒介契約を結んでもよいのに対して、専任媒介契約では媒介契約を結ぶことができるのは1社のみ(専任)です。

専任媒介契約は、さらに狭い意味での専任媒介契約と専属専任媒介契約とに分かれます。専任媒介契約は依頼者が自分で見つけてきた相手方と取引すること(自己発見取引)ができるのに対し、専属専任媒介契約ではそれが禁じられています。

他にも違いがあり、主な違いは次のようになります。

契約形態 一般媒介 専任媒介 専属選任媒介
他の業者への依頼     〇     ×     ×
自己発見取引     〇     〇     ×
指定流通機構の登録 登録義務なし 7日以内に登録 5日以内に登録
報告義務 法的義務はなし 2週間に1回以上 1週間に1回以上

どの契約を選ぶかは委託者の自由です。


不動産会社に契約上の義務違反があればノー・ペナルティで媒介契約を解除できる

媒介契約を結ぶ際には、宅地建物取引業者(宅建業者)は、宅地建物取引業法(宅建業法)により、媒介契約を書面で取り交わすことが義務付けられています。

これを受けて、国土交通省は、専任媒介契約、専属専任媒介契約、一般媒介契約のそれぞれについて標準媒介契約約款(標準約款)を公表しています。そして、通常の取引の場合は、これを活用するのが適当であるとされています(宅地建物取引業法の解釈・運用の考え方)。

媒介契約の有効期間は、宅建業法上、専任媒介契約、専属専任媒介契約では最長3カ月とされ、契約書でこれより長い期間が記載されていても、その期間は3カ月に制限されます。

一般媒介契約には、法律上、有効期間の制限はありませんが、一般媒介契約約款(一般約款)では、一般媒介契約の有効期間も3カ月と定められています(7条)。

また、標準約款は解除できる場合についても2つの場合を規定しています。

まず、当事者双方が相手方に対して催告したうえ解除できるとする規定です。ここでは専任約款の規定を紹介しますが、専属約款や一般約款にも同様の規定があります。「甲」は依頼者、「乙」は依頼を受ける宅建業者です。

(契約の解除)

第15条 甲又は乙が専任媒介契約に定める義務の履行に関してその本旨に従った履行をしない場合には、その相手方は、相当の期間を定めて履行を催告し、その期間内に履行がないときは、専任媒介契約を解除することができます。

さらに、媒介契約が当事者間の信頼関係によって成立するものであることから、標準約款は、委託者が催告を要することなく契約を解除できる場合の規定も置いています。これも専任約款、専属約款、一般約款のすべてに同様の規定があります。

(契約の解除)

第16条 次のいずれかに該当する場合においては、甲は、専任媒介契約を解除することができます。

一 乙が専任媒介契約に係る業務について信義を旨とし誠実に履行する義務に違反したとき。

二 乙が専任媒介契約に係る重要な事項について故意若しくは重過失により事実を告げず、又は不実のことを告げる行為をしたとき。

三 乙が宅地建物取引業に関して不正又は著しく不当な行為をしたとき。


不動産会社が標準約款や契約書に定められた解除事由に該当する場合には、委託者はその条項に従って媒介契約を解除することができます。

上にあげた専任約款16条の1号は宅建業者に宅建業法31条1項に該当する義務違反がある場合、16条2号は宅建業法47条1号に該当する義務違反がある場合に媒介契約の解除を認める規定です。

しかし、仲介業者の義務はこれだけにとどまるものではありません。

仲介業者は、仲介契約を結ぶことにより、通常、(1)物件調査、(2)取引物件や契約の相手方の探索、(3)取引条件の調整、(4)重要事項の説明、(5)売買契約の締結と書面の交付、(6)決済・引渡しに係る事務の補助などの業務を行います。

媒介契約は、法的には民法上の準委任契約であるとされていますから、不動産会社は、こうした業務を行うにあたって、委託の趣旨に沿って適正に事務を処理すべき義務(善管注意義務)を負います。

つまり、仲介業者は、依頼を受けた以上、誠実にその業務を遂行しなければならないのです。

とくに、専任媒介契約と専属専任媒介契約では、仲介業者は、積極的に契約の成立に向けて努力し、指定流通機構への登録を行い、業務の処理状況を報告することなど、一般媒介契約に比べ重い義務が課せられています。

不動産会社に、取引において、善管注意義務や仲介業者として配慮すべき業務上の注意義務に違反するなど媒介契約の趣旨に違反する義務違反行為が認められるときは、委託者は債務不履行を理由として媒介契約を解除することができます。


不動産会社に特段の落ち度がなくても媒介契約の解除は可能。ただし費用の支払いを求められることも

さらに、仲介業者に特段の落ち度がなくても、委託者は原則としていつでも媒介契約を解除することができ、違約金の支払義務も負いません。

これは、仲介契約は当事者の信頼関係を基礎とする準委任契約とされているため、民法の委任契約の解除規定の適用が認められるためです。

この場合、仲介業者との契約が一般媒介契約のときは、通常の広告費、物件の調査費用などの費用の償還義務もありません(ただし、委託者の特別の依頼による広告や遠隔地の現地調査費用などの特別の依頼による費用は支払義務を負います)。

民法には、受任者が委任事務を処理するのに必要な費用を支出したときは委任者に対して費用の償還を請求できるという規定があります。

しかし、仲介は、仲介業者の仲介により契約が成立した場合にのみ報酬を請求でき、事務処理に通常必要な費用は経費として不動産会社の負担とすべきであり、費用償還請求の規定の適用はないとされているためです。

ただし、専任約款、専属約款には、不動産会社の責めに帰すことができない事由によって媒介契約が解除された場合は、それまでに媒介契約の履行のために要した費用(広告費、交通費、通信費など)の償還を請求することができるという規定があります。

したがって、費用の償還を請求された場合には、約定報酬の額を上限としてこれに応じなければなりません(専任約款13条、専属約款12条)。

結論

○媒介契約を解除できる確率:90%

ご相談のケースでは、「仲介業者がなかなか積極的な販売活動をしてくれない」ということです。それが仲介業者の義務違反とまでいえるかどうかは判断できませんが、仮に仲介業者に義務違反があるとまではいえなくても、仲介契約は原則としていつでも違約金の支払義務を負うことなく解除できます。

ただし、仲介業者の義務違反が認められず、専任媒介契約、専属専任媒介契約を結んでいた場合は、それまでに仲介業者の要した費用を請求されることもあり、その場合にはこれに応じなければなりません。

○参考:

・国土交通省 – 宅地建物取引業法施行規則の規定による標準媒介契約約款
http://www.mlit.go.jp/common/000006576.pdf