マンション特徴

日本に集合住宅が増え始めたのは、1924年頃だというのをご存じだろうか。前年に起こった関東大震災を受け、復興支援団体である「同潤会」が発足。甚大な被害を受けた東京や横浜の街に、RC造の集合住宅が続々と建てられた。

それから90年以上が経つ現在に至るまで、日本を取り巻く環境は大きく変わった。それに伴いマンションをはじめとする集合住宅も、刻々と変化していったはず。

そこで今回は、恵比寿で売買物件を取り扱う株式会社ハイアーグラウンドの知見理沙さんに協力いただき、1960年代から2010年代までの各年代に建てられたマンションにはどんな特徴があるのかをまとめてみた。

間取りはDKで吹き付け塗装の壁がトレンドに【1960~1970年代】

秀和恵比寿

カラーテレビの本放送開始(1960年)、東京オリンピック開催(1964年)、大阪万博開催(1970年)……など、日本の高度成長期真っただ中だった1960~1970年代。人口も右肩上がりに増え続け、集合住宅のニーズがますます高まっていた時代だ。

また、「マンション」という言葉が日本で生まれたのもこの頃と言われている。

○特徴

・全体的に間取りが小さく、天井が低い。

・LDKという概念がなく、基本的にDK。バルコニーがない物件も多い。

・当時はエレベーターが設置されている居住用物件は少なかったため、低階層の建物がほとんど。

・1960年代後半~1970年頃にかけて、吹き付け塗装の壁が増える。

・1974年に鹿島建設が椎名町アパート(RC造、18階建て)を建設。これがマンションの高層化を初めて実現した建物。以降、高層マンションが増え始める。

「今よりも一家庭の人数が多い世代なので、狭い物件に多人数でひしめき合っているような状態だったと思います。

1960年代後半から吹き付けの壁が増えましたが、有名なのが「秀和レジデンス」シリーズ。漆喰の塗り壁でエントランスが広く、青い屋根瓦を使ったヨーロピアンテイストの建物です。高級感があり、都会の一等地に建つものがほとんどだったので、当時は富裕層の象徴的なマンションだったと言えますね。

秀和エントランス

また、1970年代に作られたマンションは、建物に入ると中が吹き抜けになっているものが多かったです。最近のマンションは、エントランスから入ると廊下が続いているものが多いですが、この頃は部屋に入るまでは屋外にいるような、開放的な造りが主流でした」(知見さん)


レンガ風外壁、カーペット床……欧米色が濃くなる【1980~1990年代】

ドムス

男女雇用機会均等法成立(1985年)、バブル期の到来、昭和から平成へ……戦後の日本経済は成長の一途をたどり、バブル経済期にそのピークを迎えることに。マンションも、それまでの単なる住居としての役割から、ステータスを表すものへと変化していく。

○特徴

・1981年に建築基準法施行令改正、新耐震基準へ。これにより、1階部分を柱のみで支える「ピロティ」と呼ばれる立体構造の集合住宅の建設が禁止に。

・バブル到来により、1戸が1億円以上する「億ション」が売買されるように。

・株式会社大京の「ライオンズマンション」をはじめ、褐色のレンガ風の外壁が流行。ヨーロッパのレンガ造りをイメージしている。

・欧米のエッセンスを取り入れたカーペット床が流行。「ドムス」シリーズが有名。

・換気用の小窓(窓ガラスの一部がスライドする造り)が減り、吸気口が主流に。

・この頃、牛乳瓶を配達するための「ミルクボックス」が減少。それ以前は高級なマンションであればあるほど、ミルクボックスが各部屋に備えつけられていた。

「大都市の再開発の動きが活発になり、数十~百戸程度の大規模マンションが続々と建っていったのがバブル期。この頃からマンションに特徴が出始め、エントランスなどの外観も華やかな雰囲気に変化していきました。

レンガ風の外壁が流行ったのは、お洒落な見た目はもちろん、これまでのペンキ塗装より雨風に強いものが求められるようになったためです。コンクリートなど、建物の素材も質の良いものが使われるようになったのもこの頃ですね」(知見さん)


バリアフリー、セキュリティ……かゆいところに手が届く設備続々【2000~2010年代】

小泉内閣発足(2001年)、六本木ヒルズ(2003年)や東京ミッドタウン(2007年)など大型複合施設が建設され、景気は上向くかと思われた。しかし、2008年のリーマンショックの影響や2011年の東日本大震災など、予期せぬ惨事に見舞われてきた2000年代以降。

マンションは華美なものより利便性や安全性が重視されるようになり、居住者のニーズに合わせて「かゆいところに手が届く」物件が今も増え続けている。

○特徴

・要所に手すりをつける、段差を減らすなど、バリアフリーを意識した物件が増える。

・ペットブームを受け、犬や猫など小動物であれば自由に飼える新築マンションが増加。

・セキュリティ面の強化。高級タワーマンションなどは、訪問者が部屋に入るまでに複数回チェックを受ける物件も珍しくない。

・一部の高級マンションでは、コンシェルジュが宅配便を預かり部屋に届けるサービスや、電話をすれば駐車場から車を出してくれるバレーサービスを行っているところも。

「2001年に品確法(住宅の品質確保の促進等に関する法律)性能表示制度が始まり、エコやバリアフリーといった特徴を、新築マンション売買の際に表示することができるようになりました。

その表示があると、一部の住宅ローンや火災保険などが安くなるといったメリットがあるため、買い手がつきやすくなる。その頃からバリアフリーのマンションが増えましたね。

住人の多いタワーマンションでは、ペット可の物件でも他の住居者が動物を苦手としている場合もあります。そのため最近では、業者用・運搬用のエレベーターをペット専用にして、ペットを飼っている人にも苦手な人にも配慮した物件も見られるようになりました」(知見さん)

築古物件でも管理体制とリノベを重視すれば空室リスクは防げる

ここまで読まれた投資家の中には、自分が所有している・投資している物件と似た特徴を見つけられた人もいるのではないだろうか。

新築や築浅物件の方が見た目の清潔感や設備の充実度も高いため、人気が偏りがちなのは仕方がないが、自分の持っている築何十年のマンションにも、空室期間を減らすため、何か工夫はできないだろうか。そう尋ねると、知見さんからこんなアドバイスをもらうことができた。

一番は管理体制の改善です。部屋や建物自体はもちろん、ゴミ捨て場がきれいになっているか、自転車置き場が整然としているか、目に見えるところからまず印象を良くしていく必要があります。目に見えないところでは、マンションの修繕積立金をきちんと貯められているか。

過去にそのマンションでどんな修繕をやってきて、その結果いくら積立金が残っているかは、購入者から重要視されるポイントです。

多少出費をしてでも空室をなくしたいのであれば、やはりリノベーションがおすすめ。1平米10万円ほどでリノベーションすれば、新築同様の室内を作ることは可能です。建物自体が古くても、玄関ドアを開けた先が綺麗な部屋なら、立地さえ良ければ入居希望者はいくらでも出てくると思いますよ」(知見さん)

他にも、特に女性が重視する水回りのみリノベーションしたり、敷金・礼金を下げて初期費用を安く抑えたりと、常時満室をキープするための工夫はさまざま。古い物件でなかなか入居者が見つからない……と悩んでいるなら、上記のアイデアを参考にしてみてほしい。

○取材協力:株式会社ハイアーグラウンド
http://www.higherground.co.jp/