面積が異なる_naka-Fotolia

写真© naka-Fotolia

こんにちは。銀座第一法律事務所弁護士、鷲尾です。

今回は、購入した土地を実測したところ、その面積が契約上の面積よりも小さかった場合に代金を返金してもらえるか、というご相談です。

アパートを建てるための土地を購入しました。

200平米あるはずなのですが、購入後に土地家屋調査士に計測してもらったところ、190平米しかありませんでした。この場合、諦めるしかないのでしょうか?
10平米分の売買金額を返金してもらえないのでしょうか?

土地の売買契約書に記載された面積には、二通りの意味がある

土地を売買するにあたっては、売買の対象となる土地を他の土地から区別して特定しなければなりません。そのために、売買契約書には一般的に、土地の所在地や面積などが記載されます。

この場合、その土地が何平米あるとか何坪あるなどの記載は、土地の所在地などの記載とあわせて、売買の対象となる土地を特定する手段として記載されているわけです。

そうした特定の手段というにとどまらず、坪当たりいくらとか平米当たりいくらというように単価を定め、これに記載された面積を乗じて代金額を決定するという場合もあります。

後者の場合には、契約書に表示された土地の面積は、単にその土地を特定する手段というだけでなく、代金を決定するための基準としての意味も有していることになります。


公簿売買と実測売買

土地の売買の方法には、公簿売買というやり方と実測売買というやり方の二つがあります。

実は、測量を行ってみると、公簿つまり登記簿に記載された面積(「地積」として表示されます)と実際の面積が異なることがしばしばあります。

そこで、何平米あると記載された土地を売買するにあたって、公簿面積と実測面積が食い違うことが判明した場合にその清算をするかどうかということが問題となるのです。

公簿売買というのは、土地を公簿つまり登記簿上の地積を基準として代金を確定し、後に実測した結果、公簿面積と実測面積が相違しても代金の清算を行わないというやり方です。

契約書には、次のように記載されます。

第●条
本土地の面積は、この契約を締結した日において、登記簿に記載されている面積とする。この面積が実測による面積と相違することがあっても、売主買主双方は、売買代金の増減その他の請求をすることができず、この契約を解除することもできない。

これに対し、実測売買というのは、測量した結果、契約書上の面積(通常は登記簿上の面積)が実際の面積と異なることが後に判明した場合には、これを清算するという方法です。

契約書では、次のように記載されます。

第●条
本土地の実測による面積と登記簿上の面積とが相違したときは、1㎡当たり●●円の単価を乗じた額をもって清算するものとする。

契約書で、上記のように、明確に公簿面積と実測面積が相違した場合に代金額の清算を行うかどうかが記載されていれば、実際に面積が契約書に表示されたものと異なっていても、契約に従って処理することになり、トラブルとなることは少ないと思われます。

しかし、そのあたりが明確にされておらず、ただ公簿面積と代金額が記載されているだけで、その代金額が何を基準として定められているのか、面積が実際のものと異なることが分かった場合に清算を行うかどうかが不明確な契約だと、往々にしてトラブルになります。

数量指示売買という考え方

民法には、「数量を指示して売買」をした場合(数量指示売買といいます)に、買主が契約時に不足があることを知らなかったときは、買主は売主に対し、代金の減額などを請求できるとする規定があります(民法565条)。

土地の売買にあたっては契約面積が記載されていることが通常ですが、そのことによりただちに土地の売買契約が数量指示売買に当たるとは解されていません。

それは、先に述べたとおり、土地の面積の表示は、単にその土地を特定するための手段として使われているにすぎないこともあるからです。

実際にどのような場合に数量指示売買にあたるかはケースバイケースです。

たとえば、坪単価に面積を乗じる方法で代金額を算定することを前提として坪単価について折衝した結果、代金額について合意に至ったとか、買主が売主に実測図面を要求するなど実測面積に関心を有していたなどの事情がある場合には、数量指示売買にあたるとみられる余地があります。


数量指示売買にあたる場合には、代金の減額などを請求できる

土地の売買が数量指示売買にあたる場合には、買主は、売主に対して、(1)代金減額の請求、(2)売買契約の解除、(3)損害賠償の請求をする権利が認められています。

それぞれについてもう少し詳しく説明しましょう。

まず、(1)の代金減額の請求は、たとえば平米当たり10万円とし、土地が100平米あるから代金を1000万円と定めたが実際には土地が90平米しかなかったという場合、10平米分の100万円の減額を請求できるというものです。もしすでに代金1000万円全額を支払済みであれば100万円の返還を求めることになります。

(2)の契約解除は、その土地の面積が実際の面積に不足することが分かっていればその土地を買わなかったであろうという事情がある場合にのみ可能です。契約解除が認められれば、支払済みの代金は返してもらえます。

(3)の損害賠償請求は、代金の減額を請求する場合、契約の解除をする場合のいずれであっても、買主に損害が認められれば請求可能です。

たとえば、契約の解除が認められたとしても、それだけでは契約の締結のために支払った費用が返ってくるわけではないので、こうした損害の賠償請求が認められるのです。

ただし、これらの権利を行使できるのは、買主が数量不足を知らずに契約した場合であって、買主が初めから数量不足を知りながら契約していた場合には認められません。

この権利を行使できる期間は、買主が数量不足の事実を知った時から1年間です。

また、数量不足の事実を知らないままであっても、土地の引渡を受けてから10年(商事時効の場合5年)で時効にかかり、権利行使ができなくなりますので注意が必要です。

 結論

○代金を返してもらえる率:70%

ご質問のケースでは、契約書からだけでは面積相違の場合に清算を行うかどうかはっきりしないのだと思われます。

たとえ仲介業者から「この売買は公簿売買です」と説明を受けていたとしても、不動産取引に不慣れな一般の人の場合、「公簿売買」ということばの意味を契約書に登記簿上の面積が記載されているという程度に理解して、実測面積との相違による清算は行わないことまで想定していないことも多いはずです。

そもそも、公簿面積と実測面積が異なるということも知らないこともあるでしょう。

したがって、売主や仲介会社から契約上の面積と実測面積に相違が生じても後日清算は行わないということまで説明を受けておらず、他方、ご相談者の方では契約書に記載の面積があることを前提として、これを基準にして代金額に合意したという事情がある場合には、数量指示売買にあたるとして代金の減額を請求することができる可能性があります。

その可能性は70%程度と思われます。

ご相談のようなトラブルを避けるためには、できるだけ契約前に実測を行い、その実測面積により売買することが望ましいのですが、やむを得ず契約後に実測となる場合もあります。

そういう場合には、後日、実測により面積が契約書上の面積より少ない場合にはそれに応じて代金を減額(返金)してもらうことを契約書に記載してもらうなどして明確に合意しておくことが大切です。