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こんにちは! 不動産鑑定士、不動産投資コンサルタントの浅井佐知子です。2017年初めての執筆となります。今年もどうぞよろしくお願いします。

昨年は絶好調の不動産投資市場でしたが、今年はどうでしょうか? 銀行の融資姿勢も含め、少し曲がり角に来ているような感じもします。

ただし、「市場が良くても悪くても上手くいく!」それが真の成功している不動産投資家だと思います。そういう投資家になるためには、不動産の成功例だけではなく失敗例もしっかりと頭に叩き込んでおく必要があります。

そこで、今回も前回のコラムに引き続き、不動産投資で失敗してしまった残念な例をお話ししたいと思います。

金利4.5%、オーバーローンで1億3000万円の物件を購入したら……

今回の失敗例は、それほど利回りの高くない物件を高金利、オーバーローンで買ってしまったBさんのお話です。

Bさんは安定した企業のサラリーマンでした。

・40代
・独身
・不動産投資はほぼ初心者

今の仕事は自分には合っておらず、できれば早期リタイアしたいとのこと。不動産投資なら自分にもできる気がしたことから物件探しを始めました。

Bさんは実は何年か前に300万円程度のワンルームを現金で購入しています。何もしなくても毎月振り込まれてくる収入があることに魅力を感じていました。

そこで、以前賃貸の部屋探しでお世話になった不動産会社の担当者に相談してみました。

「ぜひ買いましょう!」と紹介されたのが、東京近郊の一棟マンションでした。

物件価格

1億3000万円

表面利回り

8.5%

築年数

28年

構造

RC造

これを金利4.5%、30年、契約時の諸費用も含めたオーバーローンで提案されました。自己資金は10万円程度です。

この条件を見て、皆様はどう思われますか? シミュレーションしてみると分かるのですが、1億3000万円の投資に対して、年間たったの30万円の利益しかありません。空室が続いたり、想定外のリフォーム費用が発生すると、すぐにマイナスになってしまいます。

また、ここが大切なのですが、築28年の建物は、今後メンテナンスに多額の費用が掛かってきます。

・設備の交換
・屋根の防水加工
・外壁のクリーニング及び塗装
・階段周辺の塗装

などなど。年間30万円の利益ではとても修繕にお金が回るとは思えません。適切なシミュレーションをすればすぐに分かることです。

少しでも不動産投資について勉強したことがある人なら、購入しないであろう条件の物件です。多くの不動産業者のシミュレーションは甘く、利益が出るようになっています。

この方には残念ながら的確なアドバイスをしてくれる人が近くにいませんでした。私のもとに来たときは、すでに契約、決済が終わった後でした。


物件を勧めた不動産業者によると、「とりあえず購入して、その後、低金利の金融機関で借り換えしましょう」とBさんにアドバイスをしていたようです。

この物件が、そもそも利益が出ない理由は、

・金利が4.5%と高すぎること
・頭金を一切入れなかったこと

が原因です。オーバーローンで融資を受け、金利が4.5%で成り立つには、12%以上の(表面)利回りが必要です。あるいは、この利回りでも成り立つためには、2割~3割程度の頭金を入れる必要があったのです。

物件を購入してから1年が経ちますが、案の定Bさんは、かつかつの状況で賃貸運営をしているということです。空室が続くと本業の収入からローンを返しているとのこと。もちろん大規模修繕をするお金はまったくありません。

台風が来て水漏れが起きたり、大地震が発生して建物に大きな損傷が起きたり、滞納者が出たり、事故物件になったりしないことだけを祈って日々過ごしているようです。

豊かな人生を送るために購入した投資物件のせいで、逆に精神的に追い詰められることになってしまったのです。できれば、今のうちに売却するのが良いと思いますが、抵当権を抹消するには新たな借り入れを起こさないと売却もできません。売却できても、結局借金だけが残ることになります。

銀行から高金利で融資を受けるなら、この条件は満たすべし

金利の高い銀行から融資を受けるのなら、

・高利回り(表面利回り12%以上)物件であること
・頭金を2割~3割入れること

のいずれかでなければいけません。

ではなぜこの低金利の時代、わざわざ金利の高い銀行から借りる理由があるのでしょうか?

金利の高い銀行のメリットは、

・融資の判断が早い
・融資期間が長い

この2つです。

例えば、すごく良い物件が出たとします。その物件は実は契約は終わっていたのですが、ローンが付かず流れてしまった物件でした。売主の事情によりどうしても今月中に決済したい、今月はあと1週間しかない。「2割引くので現金購入者か必ず融資が付く人で契約したい」という条件でした。

このような物件を買うには現金がなければ、高金利の銀行から借りるしかありません。

物件が本当に良いもので、その後確実に借り換えができるのなら、期間限定で高金利の銀行融資を受けるのは良いと思います。

ただし、

・地方
・築古

の物件は借り換えられる銀行がないという事態もあり得ます。初心者は誠実な相談者が付いている場合を除き、手を出さないほうが良いでしょう。

このような失敗をしないためにも、日々勉強、そしてシミュレーション能力を高める必要があるのです。