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「金持ち喧嘩せず」ということわざがある。辞書には「金持ちは利にさとく、けんかをすれば損をするので、人と争うことはしない。または、有利な立場にある者は、その立場を失わないために、人とは争わないようにする」(小学館『大辞泉』より)という解説が載せられている。

それ以外にも「金持ちは気持ちに余裕があり、少しのことでは怒らない」、「喧嘩する時間があったら金儲けの方法を考える」といった解釈もできそうだ。

果たして、金持ちは本当に喧嘩をしないのだろうか? 今回、知人・友人に金持ち(年収1000万円以上)がいる人たち10人にアンケートを取り、ことわざと現実の間にギャップはないかを検証してみることにした。

あなたの周りにもいるかも? 「喧嘩しない金持ち」たち

まずは「金持ち喧嘩せず」のことわざが当てはまる人を知っている、という人たちの意見。最も多かったのは「もともと喧嘩をしないタイプだからこそ、仕事でうまく立ち回って金持ちになれたのでは」という納得の理由だ。

「高校の先輩の井口さん(女性)は金融会社に勤めていて、年収は数千万円あると思います。昔からもの静かで優しい人でしたが、お金やビジネスに対しては割り切った性格に見えました。

むやみに人に同情するようなことはなく、自分に関係のない争いごとには関わらないようにしているようです」(制作会社勤務 30代 女性)

「会社の上司の児島さん(男性)は、仕事はできるし、面倒見が良くて部下からの信頼も厚い。でも家では奥さんの尻に敷かれているらしいです(笑)

お金持ちだから信頼されているというより、もともと穏やかで頼りがいのある性格だったから、社内やクライアントと良い関係を築いて今のポストに就くことができたのでは、と思います」(ITベンチャー勤務 30代 男性)

「会社の先輩の山岸さん(男性)は、ポストとしては中間管理職ですが、共働きかつ不動産投資での収入もあり、お金にはだいぶ余裕があるようです。飄々とした性格で、いつもニコニコ。場の空気を明るくしてくれる人ですね。怒っているところや喧嘩しているところを見たことがありません」(ITコンサル 20代 女性)

「年収5億円の会社を経営する米田さん(男性)は、温厚で紳士的。非常に知能が高い人で、そのせいか、『なぜこうなったのか、どう対処すべきか』と分析・判断する行為が、怒りの感情に先行してしまうため、怒るという状態になりにくいのかもしれません」(プランナー 50代 女性)

生まれつきお金持ちの人は、喧嘩の仕方すら知らない!?

次に多かった「喧嘩せず」派の意見は、「もともとお金持ちで生活に困ることがなかったから、喧嘩をするような性格に育たなかったのでは」というもの。小さい頃に「お坊ちゃん」「お嬢様」と呼ばれるような生活をしていると、どんな人物に育つのだろうか。

「いま住んでいるアパートの大家の森さん。この付近一帯の地主さんのようで、森さんの名前がついたアパートが近所に5~6軒並んでいます。

会えばいつも明るく挨拶してくれるし、契約をした不動産屋の人も『あそこの大家さんはうるさいことを言ってこないので、借主さんから評判がいいんですよ』と太鼓判を押していました」(企画会社勤務 20代 女性)

「以前、年商50億円を超える某企業の社長、相田さん(女性)の書籍編集を担当したことがありました。もともと社長令嬢として生まれ、お父さまが亡くなって後を継いだ形なので、やり手の女社長というよりは、育ちの良いお嬢様という感じ。

物腰も柔らかく、ご本人も『ここ最近、怒ったり喧嘩をしたりした記憶がない』とおっしゃっていたぐらい。喧嘩の仕方をそもそも知らないのかもしれません」(出版社勤務 30代 女性)


あの頃と比べて丸くなった! 収入の増減で人柄が変わる場合も

「喧嘩せず」の意見の中には、「以前は収入が低くて喧嘩も多かった人が、お金持ちになったことで穏やかになった」というパターンや、その逆のパターンも。収入額が人柄にまで影響するということを裏づけるようなエピソードを聞くことができた。

「人材派遣会社の社長の黄瀬さん(女性)は、若いころは営業マンとしてバリバリ働いていて、もともと気が強い性格もあって、男性の同僚や上司と衝突することも多かったみたいです。

でも働きすぎたせいで体を壊してしまい、『自分のペースで働きたい』と思って自ら会社を立ち上げました。彼女の努力によって会社は軌道に乗り、金銭的にも余裕ができた様子。話していても、以前より穏やかになったなと感じます」(広告代理店勤務 40代 女性)

「以前勤めていた外資系企業に同期入社した高山さん(男性)。当時会社の業績はよく、彼は株もやっていたので羽振りはかなり良さそうだったし、気のいいヤツ、という感じでした。

でも2008年のリーマンショックで状況は一変。仕事が減り、株も大損したようで、当時の彼の荒みっぷりはすごかったです。ちょっとしたことでイライラしていて、同僚と口論になっているところも見ました。彼が明るかったのは、お金の心配がなかったからだったんだな、と気づきましたね」(IT企業勤務 30代 男性)

金持ちでも喧嘩する・どちらともいえない派も

一方、少数派ではあるが「私の周りの金持ちは喧嘩している」そして「どちらともいえない」という人たちの意見もあったので紹介しよう。

「従業員10名ほどの小さな会社に勤めていますが、うちの社長のIさん(男性)は50代後半ぐらいの男性で、他にもいくつか会社を経営しているので年収3000万円ぐらいはあると思います。

とにかくお金にうるさい人で、売上の低い営業担当には大声で叱責しているところを何度も見ています。気の強い社員とはよく怒鳴り合いの喧嘩に発展し、社長とそりが合わずに辞めていった人も多いです」(WEB制作会社勤務 30代 女性)

「高級クルーズ専門の旅行代理店に勤めています。お客さまは穏やかな方も多いですが、気性の荒い方も少なからずいらっしゃって、無茶なクレームをつけてきたり、罵声を浴びせられたりすることもしばしば……。

とはいえ、初めて来店されたときからご契約時までずっとにこやかで、旅行から帰って来てからわざわざお礼のお電話をくださる方もいらっしゃいます。お金持ちの方が喧嘩しないか否かは、どちらともいえないですね」(旅行代理店勤務 30代 男性)

10人の意見を聞くと、一部当てはまらない人もいるが、やはり「金持ち喧嘩せず」という実例は多いようだ。

もともと裕福な家庭に生まれた人もいれば、自ら努力して金持ちの座に上り詰めていった人もいる。今は生活に余裕がなくても、彼らのように気持ちにゆとりを持った振る舞いをしていれば、物事もうまく循環して、いつかは本物の金持ちに近づけるのではないだろうか。

※本エピソードに登場する人物名は仮名です。