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みなさん、こんにちは! 不動産投資専門税理士の叶です。お金を残す不動産投資コラム。今回は、今年も2月16日から始まる確定申告について、物件を売却した時の注意点と節税方法について解説します。
個人で物件を売却した時の所得は別物!
近年、不動産の価格が高騰してきているので、平成28年は物件を売却した方も多いと思います。ただ、個人で物件を売却した時には、税金の計算で気を付けないといけないことがあります。
個人で不動産を運営している時の所得は「不動産所得」ですよね。でも、不動産を売却した時の所得は「譲渡所得」という所得になります。
そして、不動産所得と譲渡所得は、計算方法も税率も違うので、別々で処理しなければいけません。
まず、不動産所得の計算方法を確認しておきましょう。
収入(主に賃貸収入)-経費(固定資産税、管理費、修繕費、借入利息、減価償却費等)=不動産所得×税率
不動産所得に掛かる税金は、総合課税といって、給与所得などの他の所得と合わせて課税され、所得税、住民税合わせて15%~55%と所得の段階によって税率が上がる累進課税になります。
一方、譲渡所得の計算方法は次の通りです。
収入(主に物件売価)-経費(仲介手数料、印紙、司法書士報酬、簿価等)=譲渡所得×税率
譲渡所得に掛かる税金は、分離課税といって、他の所得とは別で計算し、所有期間が短期か長期かで税率が変わります。
短期譲渡所得は、物件を譲渡した年の1月1日現在の所有期間が5年以下の場合で、税率は所得税、住民税合わせて39%。
長期譲渡所得は、物件を譲渡した年の1月1日現在の所有期間が5年を超える場合で、税率は所得税、住民税合わせて20%になります。
また、もう一つの注意点としては、不動産所得は損失が発生した場合、損益通算といって他の所得と合算することができ、その分税金を減少させる効果がありますが、譲渡所得は損失が発生しても、他の所得と損益通算することができません。
ただし、同じ年に売却した物件で利益が出ている場合のみ、その利益と合算することができます。
要するに、同じ年の譲渡所得内でのみ損益通算ができるんですね。
平成21年、22年以購入した物件の超節税方法
では次に、物件を売却した際の減価償却を使った節税方法について解説しましょう。これは、平成21年、22年に購入している物件に適用ができます。
まず1つ目が「特定の土地等の長期譲渡所得の特別控除」。
この特例は、平成21年もしくは平成22年に購入している物件を1月1日時点で、5年超保有して売却した場合に、土地の売却益を1000万円、特別控除ができるというものです。
平成21年もしくは平成22年に購入している物件で、平成28年中に売ってるなら、もう5年を超えてますので、適用が可能です。
例えば、平成21年もしくは平成22年に購入した物件を売却して、土地の部分の売却益が3000万円発生しているとします。
○通常
売却益3000万円×長期譲渡所得税率20%=譲渡税600万円
○特例
(売却益3000万円-特別控除1000万円)×長期譲渡所得税率20%=譲渡税400万円
特例を適用したことによって、200万円も節税ができました!
この特別控除を適用できれば、かなり譲渡所得を圧縮でき、税金を少なくすることができますね。この特別控除は個人だけでなく、法人も適用することができますので、しっかりと覚えておいて下さい。
そして2つ目が、平成21年から平成22年中に土地等を取得している場合に適用できる「土地等の先行取得をした場合の課税の特例」という特例。
1つ目の1000万円特別控除と合わせて適用することができませんが、次の条件を満たせば、適用ができます。
○条件
・平成21年から平成22年中に土地等の取得していること。
・購入した年分の確定申告で「先行取得の届出書」というものを提出していること。
・取得の次の事業年度から10年以内に他の土地等の譲渡していること。
これらの条件を満たしていれば、その先行して取得をした土地等について、他の土地等の譲渡益の80%相当額(先行取得期間が22年中は、60%相当額)の圧縮記帳が可能になるという特例です。
「圧縮記帳」という言葉が難しいですが、わかりやすく言うと、「売却益が発生していても、税金の支払いを遅らせることができる」という意味です。
こちらの特例は、過去に「先行取得の届出書」を出していないと適用できませんが、届出を出している人は、物件売却の際に思い出すようにしてくださいね。
○あわせてチェック!
確定申告直前!! 知ってる人だけが得をする「3つの節税法」を税理士が指南
https://www.rakumachi.jp/news/column/129136
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